『ナナ』は近代フランスの代表的な作家エミール・ゾラの代表作である。近代フランスの自然主義文学の古典的名作として知られる。1880年、『ナナ』はゾラの『ルーゴン・マッカール双書』の第九巻として公刊され、すぐにベストセラーとなった。この記事では、そのあらすじを紹介する(結末までのネタバレあり)。
『ナナ』(Nana)のあらすじ
舞台は19世紀半ばのフランス。フランスはナポレオン3世のもとで、第二帝政の時代だった。主人公のナナは、ゾラの代表作『居酒屋』の主人公ジェルベーズの娘である。ナナの本名はアンナ・クーポーであり、ナナは愛称である。アルコール中毒の遺伝をもつとされる。
ナナは18歳になり、パリのヴァリエテ劇場で新たに女優としてデビューする。女優としては特別な才能はないが、その美しさが観客を魅了する。
そこには、ミュファ伯爵や銀行家のスタイナー、文芸記者のフォシュリー、若者のユゴンなどが見に来ていた。彼らがこの物語でナナの餌食となっていく。
翌日、ナナは舞台が大成功を収めていたことを実感する。観客たちが次々とナナを訪問したのだ。その中には、ミュファ伯爵やその義父シュアールがいた。銀行家のシュタイナーもやってきたが、ナナは会おうとしなかった。
次の週、ミュファが晩餐会を開いた。そこでは、ナナの晩餐会が開催されるという話題がでた。ナナは記者フォシュリーにたいし、ミュファをこれに招待するよう頼んだ。
ナナのパーティーが開かれた。多くの客が出席した。だが、ミュファは参加しなかった。シュタイナーがナナに言い寄る。シュタイナーは女優に大金をつぎ込むことで知られていた。ナナはシュタイナーを金づるとして受け入れた。
ナナは女優として評判を高めていた。外国からも、ナナを見ようとして要人たちがヴァリエテ劇場を訪れるようになった。その中に、イギリスの王家の人々も含まれた。ミュファはこれに同行した。
ナナはミュファを誘惑する。ミュファは自分の欲求を抑えられなくなってくる。ナナはミュファを近くの邸宅へと誘う。
ナナは邸宅を訪れる。とはいえ、ナナ自身がその所有者ではない。上述の若者ユゴンの母親の所有物である。ユゴンはナナに会い、ナナに言い寄る。ナナはユゴンを恋人の一人に加える。だが、ユゴンの母は二人の関係に反対し、ユゴンを別れさせようとする。その間に、ミュファがナナの寝室に忍び込み、一夜を過ごす。二人は深い関係になっていく。
時が経つ。ナナは贅沢な暮らしがしたかった。だが、ミュファが思っていたよりお金をくれず、不満をつのらせる。その頃、ナナはミュファの妻がフォシュリーと不倫関係にあると知る。ナナはこれをミュファに教える。だが、ミュファ夫妻は離婚しなかった。
その頃、ナナは俳優のフォンタンを好きになり、一夜をともにする。そこに、ミュファとスタイナーがやってくる。ナナはフォンタンを選び、彼らを追い出す。だが、ほどなくして、フォンタンはナナに飽きる。
暴力をふるうようになり、ナナから金を盗むようになる。フォンタンはアパートからナナを追い出す。ナナはかつての娼婦の仕事を再会する。だが、それで逮捕されそうになり、この生活から抜け出すことを決める。
ミュファの心はナナの虜になっていた。ナナはミュファとの関係修復を提案する。だが、以前とは異なり、贅沢な暮らしができることを条件とする。ミュファはこれを受け入れる。ナナに高価な家具と邸宅を買い与え、相当な金額の生活費を毎月に支給する、と。
ナナは贅沢三昧を始める。情事も相変わらず盛んである。再び女優として劇場にたつ。
ある日、パリでは、パリ賞という競馬のメインレースが開催される。出走馬の中に、ナナという名前の牝馬がいる。厩舎のオーナーのヴァンドゥーブルは牝馬ナナに全財産をかける。牝馬ナナは優勝した。
ナナは同じ名前の牝馬の優勝を祝福される。ヴァンドゥーブルは不正な賭けをしたとして、苦境に立たされる。ついに、厩舎の中から火をつけ、自殺する。
ナナは社交界で大いに成功する。多くの男達が言い寄ってくる。同時に、新聞では、ナナに批判的な記事が載る。ナナは相変わらずの贅沢三昧である。多くの男性と情事に至り、財産を使い切っては、男たちを捨てる。ナナに使い捨てられた男たちは破滅していく。
だが、ナナ自身も相当の金をすぐに使い込み、使用人に金を盗まれる。常に金が足りておらず、自身の生活をコントロールできていない。ミュファはナナをどうすることもできず、ただ翻弄されている。
ナナはミュファの義父と一夜をすごす。ミュファはこれを発見したときに、ついに耐えられなくなり、ナナとの関係を終わらせる。だが、すでに財産は残っていなかった。
ある日、ナナは突如としてパリから姿を消す。誰もナナの行方を知らない。噂だけが広まる。カネと男の噂である。
1870年、フランスはプロイセンとの戦争を始める。普仏戦争である。その当日、ナナはパリのホテルにいた。天然痘にかかった息子を見舞った。ナナも天然痘にかかる。パリで戦争の準備が進められるのをみながら、死ぬ。男たちを魅了したその美しい身体は天然痘で蝕まれていた。
おすすめ参考文献
ゾラ『ナナ』川口篤訳, 新潮社, 2006
※ゾラの人生と作品ついてには、「エミール・ゾラ」の記事を参照