ゾラの『ジェルミナル』

 『ジェルミナル』はフランスの代表的な小説家ゾラの小説である。1885年に公刊された。「ルーゴン・マカール」シリーズの13作目にあたる。フランス近代小説の古典的名著として知られる。
 物語の舞台はフランスのナポレオン3世による第二帝政の時期のフランス北部の鉱山都市モンスーである。なお、小説の名前の「ジェルミナル」はフランス共和暦の春の月に由来する。 この記事では、あらすじを紹介する(結末までのネタバレあり)。

 『ジェルミナル』(Germinal)のあらすじ

 主人公はエティエンヌ・ランティエという若い男である。エティエンヌはゾラの代表作『居酒屋』ジェルヴェーズとオーギュスト・ランティエの息子である。エティエンヌが鉱山都市モンスーに到着するところから物語が始まる。

ジェルミナル

 エティエンヌは鉄道会社で働いていたが、問題を起こして解雇された。仕事を探してモンスーまでやってきた。
 モンスーは工場が閉鎖されるなど、寂れた地域だった。炭鉱のル・ヴォルーでは、多くの労働者が働いていた。
 エティエンヌはこの炭鉱で働くマウー家と出会う。マウ家は大家族である。子供は21歳から生まれたばかりの赤ん坊まで、7人いる。主に、マウ夫妻と娘のカトリーヌが重要な登場人物である。
 マウ家はその炭鉱で長らく働く労働者の家庭である。給料は少なく、厳しい生活を強いられている。労働時間が長く、十分な栄養もとれていないため、労働条件は劣悪である。
 エティエンヌはこの鉱山町で仕事を探す。鉱山を訪れる。この鉱山はリフトが労働者を坑道へと送り込む。大量の労働者がリフトに乗り込み、地下に降りていく。その姿は、あたかも鉱山という怪物が無数の人間を飲み込んでいくようなものにみえる。
 エティエンヌは鉱山で働くことになる。だが、その労働条件には愕然とする。エティエンヌはマフーのチームに配属される。カトリーヌもまた同じ場所で働いていたため、エティエンヌを助けてやる。一緒に食事をとるなど、交流を始める。

 同じチームには、シャバルという青年もいる。シャバルはエティエンヌに反感を抱く。カトリーヌにキスをし、カトリーヌを奪う。エティエンヌとシャバルは険悪になる。

 仕事終わりに、技士のネグレルがやってくる。マフーを叱りつけ、罰金を罰金を科すという。マフーは憤るが、反論しない。エティエンヌはこのような労働条件の悪さに腹を立てる。

 その後、エティエンヌはマウーとともに、地元の居酒屋「ラヴァンタージュ」に行く。それはラッスヌールが経営する居酒屋である。ラッスヌールもかつては鉱山の労働者だった。優秀な労働者だった。

 だが、ストライキを先導したため、3年前に解雇された。ラッスヌールは労働運動の政治指導者プルシャールと交流を保っている。エティエンヌはストライキなどに関心を抱く。

 モンスーの鉱山の株主グレゴワール家にマフー家の妻がやってくる。グレゴワール家は労働者に優しく、その娘は慈善活動に熱心である。マフー家の妻は家計が苦しいため、物乞いにやってきた。グレゴワール氏は彼女に食料と衣服を与える。

 夜、エティエンヌは古い廃坑の近くを散歩していた。何組ものカップルが戯れているのを見る。その中には、シュヴァルとカトリーヌもいることに気づく。

 エティエンヌは鉱山の仕事に慣れてきた。 優秀な鉱夫として、同僚からも尊敬されるようになる。その頃、マウー家では長男が結婚した。一家としては生活がより厳しくなった。

 エティエンヌは居酒屋ラヴァンタージュに通っていた。そこには、ロシアから亡命してきたアナキストのスヴァリーヌがいた。彼は現在の労働者たちの悲惨な状況を変革するに暴力革命を訴えた。
 エティエンヌはズヴァリーヌの訴えに惹かれた。だが、よく理解できなかった。そこで、自ら勉強を始め、様々な本を読むようになった。ラッスヌールやスヴァリーヌと政治について議論した。エティエンヌは世の中の仕組みに関心を抱き、理解するようになった。社会の不公正に憤りを抱くようになる。ここから、物語はいよいよ進んでいく。

 エティエンヌは同僚たちに、積立金を設立するよう話した。これはきたるべきストライキが起こって給料がストップしたときの備えである。

 この頃、鉱山会社は鉱夫たちの給料を様々な仕方で減額した。鉱夫たちは減額された給料に嘆く。マウの一家も同様である。これほど減額されたのでは、とてもやっていけない。彼らは悲嘆にくれた。
 エティエンヌはマウ家に同居するようになっていた。カトリーヌと同じ部屋で寝るようになる。エティエンヌはマウ夫妻に、きたるべき革命について語るようになる。マウ夫妻はこれに感化される。

 ある日、ル・ヴォル鉱山で落盤事故が起こる。、労働者が死亡し、マウ一家の子供が重度の身体障害を負う。ネグレルはこの事故を鉱夫たちの責任として叱責する。

 エティエンヌは今こそストライキの時がきたと考える。夜、ラヴァンタージュでストライキの決行が決められる。

 翌日、鉱夫たちはストライキを始める。マウとエティエンヌらがその代表として、鉱山のマネージャーのエヌボーの邸宅を訪れる。マウは給料について交渉を始める。エヌボーは上層部に伝えるというだけで、それ以上の対応はしない。

 エティエンヌはストライキのリーダーとして活動を本格化させる。この時代、憲兵隊がこのような労働運動を武力で鎮圧した。エティエンヌはそれを回避すべく、鉱山労働者たちは森の中に移動させた。
エティエンヌは彼らに演説を行い、ストライキのために彼らを鼓舞する。

 彼らは近隣のジャン・バール鉱山に行き、その鉱夫たちにもストライキに加わるよう説得した。そこでもストライキが始まる。
 ジャン・バール鉱山では、上述のシャバルが鉱夫のリーダーだった。シャバルはジャン・バール鉱山の鉱夫たちがストライキに加わらないよう説得する。そうすれば、昇進することが会社によって約束されていたからだ。
 ジャン・バールの鉱夫は仕事を再開する。ル・ヴォルの鉱夫はこれを知り、激怒する。そこで、鉱山に行き、リフトのケーブルを切断するなどして、仕事を妨害する。エティエンヌにとって、この行動は予想外だった。エティエンヌは彼らの暴徒化をどうにか防ごうとする。

 鉱夫たちはストライキを実効的に行おうとする。彼らはフランス国歌のマルセイエーズを歌いながら、エネボー氏の家に向かう。暴徒化し、その家を襲う。食料品店も襲う。憲兵隊が到着するという知らせで、彼らは逃げ去る。

 ストライキは続く。鉱夫たちの給料は支払われない。積立金は底をついた。だが、会社は屈しない。 鉱夫にとって、状況は危機的である。ラッスヌールはエティエンヌをストライキの原因として責めるようになった。

 シャヴァルはストライキの打ち切りを画策する。エティエンヌはシャヴァルを撃退する。エティエンヌはカトリーヌに言い寄る。だが、カトリーヌはシャヴァルと付き合っているとして、これを拒む。

 翌日、鉱山会社はルヴォル鉱山にベルギー人などの鉱夫を送り込んだ。同時に、鉱山周辺を守るために、兵士が雇われた。ストライキ中の鉱夫たちが彼らを取り囲み、一触即発の状態になる。
 彼らはついに兵士に投石を始まる。兵士は発泡して応戦する。これは鉱夫たちの予想外だった。パニックとなり、逃げ去った。その混乱の中で、マウらが死んだ。マウの妻はエティエンヌがすべての元凶だと非難する。この感情は多くの鉱夫も抱いていた。

 鉱山会社は鉱夫たちの懐柔に乗り出す。労働条件の改善とともに、仕事を再開するよう求める。結局、ストライキは終わる。坑夫たちはますますエティエンヌを敵視するようになる。

 ある晩、エティエンヌは散歩をしていて、アナーキストのスヴァリーヌに出会う。ズヴァリーヌはロシアで妻が処刑されたので、ここを去るという。図ヴァリーヌはエティエンヌと別れる。その後、ル・ヴォルー鉱山にいく。その内部に入っていき、さまざまな設備を破壊していく。この鉱山という怪物を殺さなければならない、と。

 カトリーヌとエティエンヌは鉱夫としての仕事を再開することになる。鉱山での作業中、設備が崩壊し、坑道に泥水が大量に流れ込む。大混乱となる。鉱夫たちは必死に逃げ惑う。エティエンヌとカトリーヌも逃げようとしたが、坑道内の一角に閉じ込められる。
 技士ネグレルが騒ぎを聞いて駆けつける。(ズヴァリーヌの)工作が原因だとわかる。ネグレルは全員に退避を命じる。ネグレルは救助活動を開始する。マウ家の長男はその作業中に死ぬ。

 その頃、エティエンヌとカトリーヌはどうにか打出する方法を探す。同じく逃げそびれたシャヴァルに出会う。シャヴァルはカトリーヌの隣に座り、最後の食べ物を分け合う。エティエンヌと口論になる。エティエンヌはシャヴァルを殺してしまう。

 その後、なかなか助けは来ない。エティエンヌとカトリーヌは衰弱していく。空腹の絶頂のなかで、思考も朦朧としていく。カトリーヌはエティエンヌにキスをする。二人は愛し合う。カトリーヌは力尽き、エティエンヌに抱かれながら息絶える。

 ついに救助隊がエティエンヌを救う。数週間後、エティエンヌは回復する。鉱山を解雇された。父の助言で、パリに移り、社会主義の政治活動に加わることを志す。いざ、旅立ちである。季節はちょうど春だった。そう、ジェルミナルの月である。

 おすすめ参考文献

ゾラ『ジェルミナール』安士正夫訳, 岩波書店, 1954

※ゾラの生涯や作品については、「エミール・ゾラ」の記事を参照

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