『蛙』は古代ギリシャの喜劇作家アリストファネスの喜劇作品。紀元前405年に初演された。傑作として称賛され、当時としては異例にも、すぐに再演された。ディオニュソスが著名な悲劇作家エウリピデスを地獄まで迎えに行こうとする物語である。この記事では、あらすじを紹介する（結末までのネタバレあり）。
『蛙』の要約
この物語の中心人物は演劇や酒の神ディオニュソスとその奴隷クサンティアスである。ディオニュソスらは弟のヘラクレスのもとに向かう。ヘラクレスはかつて、ケルベロスを奪いに、地獄に行ったことがあった。そこで、ディオニュソスはヘラクレスに、地獄の道順を教えてもらうつもりである。
なぜディオニュソスは地獄に行こうとしているのか。最近、古代ギリシャの著名な悲劇作家のエウリピデスが死んだとされる。また、アテネの都市は衰退してきている。ディオニュソスはエウリピデスらの偉大な悲劇作家の死がその衰退に関わっていると考える。そのため、エウリピデスを地獄からアテネに連れ帰るつもりである。
ディオニュソスらはヘラクレスの家に着く。ヘラクレスに地獄の道順を教わる。いざ、地獄へ向けて出発する。なお、ディオニュソスはヘラクレスの変装をしている。
ディオニュソスらは湖に到着する。そこを船で渡るために、渡し守のカロンに話しかける。カロンはディオニュソスに乗船を許可する。だが、クサンティアスには乗船を拒否し、徒歩で回り道をするよう求める。クサンティアスはしぶしぶ一人で陸路を行く。
カロンは船を漕がず、ディオニュソスに漕がせる。だが、ディオニュソスはこれがなかなかうまくできない。ようやく、音頭を取りながら、うまく漕げるようになる。そこに、カエルの合唱団が登場する。
カエルが歌声でディオニュソスを邪魔する。ディオニュソスは船の運行の邪魔になるとして、苛立ち、カエルと言い争う。どちらの歌声が上手かで揉め、競い合う。そうこうするうちに、船は対岸にたどり着く。 ディオニュソスはクサンティアスと再開する。
ディオニュソスたちは僧侶たちの一行を見つける。ヘラクレスは彼らがプルートスの宮殿への道を教えてくれると述べていた。そこで、ディオニュソスらはとりあえず身を潜めて、様子を見てみる。彼らは儀式を行い始める。ディオニュソスらは姿を現し、彼らに道を尋ねる。
ディオニュソスらはプルートスの宮殿にやってくる。ディオニュソスはヘラクレスの変装をしていたので、門番アイアコスはディオニュソスをヘラクレスと勘違いする。
ヘラクレスがかつてケルベロスを盗んだので、アイアコスはヘラクレスに激怒していた。そこで、ヘラクレスを罰として拷問すると言う。アイアコスは宮殿に入り、そのための準備を始める。
ディオニュソスは拷問の恐怖に怯える。そこで、クサンティアスに、ヘラクレスの服を 自分の代わりに着てくれるよう求める。クサンティアスは勇気があったので、これを受け入れる。二人は服を取り替える。
宮殿から、アイアコスではなく、ペルセポネの女中が出てくる。女中はペルセポネがヘラクレスを歓待するために宴の準備をしていると告げ、準備のために宮殿に戻っていく。これを聞いて、ディオニュソスはザンティアスに再び服を替えるよう求める。
そうこうしているうちに、次に宮殿から出てきたのは、女中ではなくアイアコスである。クサンティアスがヘラクレスに扮しているため、アイアコスがクサンティアスを拷問しようとする。だが、クサンティアスは自分の奴隷に扮しているディオニュソスを身代わりにしようとする。
ディオニュソスはクサンティアスのこの裏切りに驚き、混乱する。ついに自分の正体をアイアコスに教える。だが、アイアコスは二人のどちらの言い分が正しいのかがわからない。そこで、プルートスに判断してもらおうと考え、二人を宮殿の中に連れて行く。
プルートスは二人と宴会する。ディオニュソスが誰なのかを認識する。
このとき、プルートスの宮殿では一大事が起こっていた。ディオニュソスのお目当ての悲劇作家エウリピデスが、すでに亡くなっていた著名なヒゲk作家アイスキュロスと、どちらが優れた悲劇作家であるかをめぐって、競い合っていたのだ。プルートスはより優れた方に、悲劇作家の座を与えると告げる。
そのために、プルートスは両者の技量を競う大会を開催する。ディオニュソスがその判定者に選ばれる。プルートスは判定の手段として、天秤などをディオニュソスに提供する。
アイスキュロスとエウリピデスの討論が始まる。それぞれが自分の作品を自賛し、相手の作品を批判し合う。エウリピデスは自身が英雄のような高貴な理想を一般市民でも理解できる仕方でわかりやすく伝えていると論じる。
アイスキュロスはエウリピデスの作品が容易に予測可能なものだと批判する。これにたいし、エウリピデスはアイスキュロスの作品を退屈だと言い返す。
このような応酬の後に、プルートスは判定の手段として天秤を利用する。エウリピデスとアイスキュロスは自身の詩を詠唱する。天秤はアイスキュロスの作品をより重みのあるものだと示す。
ディオニュソスは判定を決めかねている。そこで、アテネを現状の衰退から救い出す方法を付帯に尋ねる。エウリピデスは、アテネがすべてを疑うべきだと論じる。アイスキュロスは、アテネが優れた統治者を選び、海軍を強化すべきと言う。
ディオニュソスは最終的に、アイスキュロスを勝者に選ぶ。エウリピデスは落胆する。プルートスは両者を労う。ディオニュソスらはアテネに戻ることになる。
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