『人と超人』は近代イギリスの作家バーナード=ショーの戯曲作品。1903年に制作され、1905年に初演された。若い女性アンと理想に燃える男性タナーの恋をめぐる物語。この記事では、あらすじを紹介する(結末までのネタバレあり)。
『人と超人』(Man and Superman)のあらすじ
物語の舞台は20世紀初頭のロンドンである。若い詩人のオクタヴィアス・ロビンソンがローバック・ラムズデンという裕福な老人の家を訪ねてくる。彼らは、友人のホワイトフィールドが最近没したことについての悲しみを語り合う。
ホワイトフィールドには、アンという娘がいる。ラムズデンはホワイトフィールドが自分を彼女の後見人に指名するに違いないと思っている。そうしたならば、ラムズデンはアンをオクタヴィアスと結婚させるつもりだ、とオクタヴィアスに述べる。
オクタヴィアスはアンに恋をしているので、それを聞いて喜ぶ。ラムズデンは、ジョン・タナーという社会主義者に気をつけよ、とオクタヴィアスに付け加える。ラムズデンは里bラリズムの信奉者を辞任しており、タナーと因縁の関係にある。
タナーがそこに興奮しながらやってくる。タナーはラムズデンに言う。ホワイトフィールドの遺言により、ラムズデンとタナーの二人がアンの後見人に指名された、と。ラムズデンは当惑する。
タナーは自分が後見人に指名されるとは思っていなかった。アンを貞淑で忠実な女性とみなしておらず、強情で軽率だとみなしている。ラムズデンはタナーが後見人になることに反対する。
オクタヴィアスはアンを無垢で一種の理想的な女性とみなしている。そのため、アンへのタナーの非難にショックを受ける。
そこに、アンと彼女の母がやってくる。アンは魅惑的な女性であり、生命力に溢れている。ラムズデンはアンに、彼自身とタナーが後見人に指名されたと告げる。アンは物わかりのよい淑女を演じており、遺言を受け入れる。かくして、二人が後見人となる。
そこに、オクタヴィアスの妹ヴァイオレットがやってくる。ヴァイオレットは妊娠していると告げる。ヴァイオレットが未婚で出産すると思われたたため、タナー以外の全員がショックを受ける。
タナーは子を生むということで彼女を称賛する。ラムズデンは彼女が放蕩者の犠牲者になったと言う。同時に、タナーを道徳心の乏しい人間だと非難する。タナーは言い返す。
アンとタナー以外がその場を去る。二人は幼少期からの友人である。タナーはかつてアンに恋をしていた。二人は過去について語り合う。タナーは恋愛そのものから距離を取るようになった。
ラムズデン夫妻とオクタヴィアスが戻って来る。ヴァイオレットも戻って来る。彼らがヴァイオレットについて話し合っているとき、ヴァイオレットは実は密かに結婚していたと述べる。未婚のまま出産することは当時のイギリスでは社会的に受け入れがたいことだった。そのため、ヴァイオレットは自己弁護したのだった。
その後、タナーはロンドンを離れる。彼は恋愛が自身のエネルギーと自立を奪うと思っている。そのため、アンと距離を取ろうとする。アンはタナーに接近したいと思っているが、うまくいかない。
タナーはスペインに行く。そこで、メンドーサの率いる組織に誘拐される。彼らは社会主義の革命を求めていたので、タナーはむしろ彼らと仲良くなる。だが、タナーはメンドーサの社会主義は表面的なものに過ぎないと見抜く。
ある夜、タナーは夢を見る。この夢はこの物語のタイトルにも関わっている。この夢は有名な『ドン・フアン』の物語の影響を受けている。
夢の中で、タナーはドン・フアンになっており、地獄にいる。アンはアナというカトリックの敬虔な女性になっており、地獄にいることに戦慄する。ラムズデンは彫像として立っており、いかめしい顔をしている。メンドーサは悪魔として登場し、タナーを地獄に留まるよう促す。
タナーは天国に行きたいと欲し、常人を超えた存在になろうと欲する。この超人になるには、常人が好むような快適な生を捨て去って、超人の世界へと飛躍しなければならない。メンドーサとラムズデンはそのようなことができるとは思わず、その考えを馬鹿にしている。
タナーは目を覚ます。そこに、ラムズデン、アン、オクタビウス、ヴァイオレットらがやってくる。彼らはタナーが組織に誘拐されたままだと考えていたので、タナーを救出しにきたのだ。だが、タナーは組織の人間と仲良くなっていたので、彼らが逮捕されないようにする。
それからしばらくして、ヴァイオレットのもとに、ヘクター・マローンというアイルランド人がやってくる。彼はヴァイオレットの夫の父である。彼はヴァイオレットと息子の恋愛を知り、それに反対しに来た。
父は二人がすでに結婚していることを知らない。そのため、息子をイギリス貴族の女性を結婚させようとしている。だが、ヴァイオレットは自分が息子の結婚相手にふさわしいことを熱弁する。そこに、彼女の夫がやってきる。彼はすでにヴァイオレットと結婚していると父に告げる。
息子は父に、父の結婚承認を求めていないという。これから自活するつもりである、という。それを聞いていたタナーらは、新たな夫婦に財政の支援を申し出る。息子はこれを断る。
彼らが立ち去った後、父は息子の妻となったヴァイオレットに満足する。だが、息子の新生活に器具し、ヴァイオレットに小切手を渡す。
問題はアンとタナーそしてオクタヴィアスの関係である。オクタヴィアスはついにアンにアンに愛を告白する。だが、アンは彼に興味がなく、言い訳をこしらえて、断る。だが、詩人であるオクタヴィアスはアンを理想化しており、諦めない。だが、言い訳が嘘だと知り、当惑する。
タナーはアンと結婚するつもりがない。オクタヴィアスはアンに、全く結婚するつもりのない男と結婚するのかと尋ねる。アンは自分からすれば、彼がよい相手なのだと答える。
アンはタナーに愛を告白し、求婚する。タナーは拒む。だが、アンはタナーの考えを利用する。この考えによれば、女性は自身の生命力に突き動かされて、自分の欲求のために男性を追いかけるものだ。この生命力はアンをタナーへの恋へと突き動かした。同様に、生命力はタナーをもこれへと突き動かす。よって、生命力が二人を惹きつけたのだ、と。
この説得が成功し、タナーはアンに愛を告白する。二人は結婚を決める。ただし、タナーは一般的な結婚式に不満をもっている。そこで、結婚式は簡素なものにするという。アンはそれを気に入る。物語は幕を閉じる。
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