『吸血鬼ドラキュラ』はアイルランドの作家ブラム・ストーカーの世界的に有名な怪奇小説である。1897年に公刊された。これはルーマニアのトランシルヴァニア地方の伝承を題材としている。
『吸血鬼ドラキュラ』(Dracula)のあらすじ
物語は19世紀後半、東欧のトランシルヴァニアで始まる。イギリス人の若い弁護士ジョナサン・ハーカーが不動産取引のために、この土地のドラキュラ伯爵の城を訪れる。
ハーカーが地元の農民に城への道を尋ねると、農民はきまって怯えた表情を浮かべた。ハーカーは不安をつのらせながら、城に向かう。薄暗い道を通り、荒廃したドラキュラ城にたどりつく。
ハーカーは城でドラキュラ伯爵に応対される。城の中は快適であり、伯爵は親切だった。だが、伯爵は青白くやせこけていて、奇妙な人物えもあった。
ハーカーは数日をそこで過ごすうちに、自分がここに監禁されていることに気づく。なぜ監禁されたのかを調べるうちに、伯爵の秘密を知る。ドラキュラ伯爵は悪魔的な力を用い、人間の血を吸って生きているのだ。
さらに、ハーカーは城の中で三人の美しい女吸血鬼に襲われそうになる。ドラキュラ伯爵がそれを制止したため、助かる。だが、ハーカーは命の危険を感じ、城からの脱出を試みる。
物語はイギリスに移る。ハーカーには、ミナという婚約者がイギリスにいた。ミナはハーカーから長らく連絡が途絶えているので、彼を心配している。
ミナには、ルーシーという友人がいる。ルーシーはスワード博士とホルムウッドそしてモリスの三人から求婚されていた。ルーシーはホルムウッドとの結婚を決める。
ミナはルーシーを訪ねる。二人は夜に海岸沿いを歩いていると、難破船の漂着に気づく。船員は全滅している。大きな犬だけが生き残っていたが、姿を消す。船には、ドラキュラ城から運ばれた土の箱が 50箱積まれていた。ドラキュラ伯爵が発送したものだ。
ある日、ルーシーは夢遊病を発症する。夜、ミナは町の墓地でルーシーを見つける。ルーシーの近くには不吉な黒い影が浮かんだが、消えた。ルーシーは体調を崩していく。その喉には2つの小さな赤い斑点があった。
その後もルーシーは体調が悪化していく。気がつけば、その知覚にはコウモリが佇むようになる。スワード博士はルーシーの悪化の原因を調べるが、わからない。そこで、師のヴァン・ヘルシング教授に助けを求める。
この頃、ハーカーからの連絡がミナに届く。ブダペストで病気になっているとのことだ。ミナはハーカーのもとへ旅立つ。
ヴァン・ヘルシングがルーシーのもとに到着し、診察する。喉の赤い斑点などにより、ドラキュラの仕業だと考える。彼女に輸血を繰り返す。彼女の部屋をニンニクの臭いで覆うよう命じる。これにより、ルーシーの体調は改善していく。
だが、ルーシーの母は事情を知らず、にんにくを部屋から取り去ってしまう。その隙に、狼がルーシーの家に入り込む。彼女の母はそれを見て、ショック死する。ルーシーは無防備となり、襲われる。
ルーシーが死に瀕している。ヴァン・ヘルシングは彼女の婚約者のホルムウッドを呼び寄せる。ホルムウッドがルーシーに別れのキスをしようと身をかがめる。ルーシーは彼の血を吸おうとして、襲いかかる。ヴァン・ヘルシングがこれを阻止すると、ルーシーは死ぬ。
ルーシーの死後、子供たちが謎の女に襲われ始める。ヴァン・ヘルシングはそれを知り、ルーシーの仕業だと考える。スワードとともに、ルーシーの棺を調べ、その考えを確証する。
ヴァン・ヘルシングはホルムウッド、スワード、モリスを集め、ルーシーが吸血鬼になったことを説明する。子どもを襲っているのはルーシーである、と。
彼らはルーシーを永遠に眠らせようと決意する。そのための儀式を行う。彼らは彼女の心臓に木の杭を打ち込み、頭を切り落として口にニンニクを詰める。その後、彼らはドラキュラ伯爵を滅ぼすことを誓う。
他方で、ミナとジョナサンは結婚し、イギリスに戻ってきた。ミナとジョナサンもドラキュラ退治に加わる。
ミナはジョナサンのトランシルバニア滞在での日記をヴァン・ヘルシングに読ませる。彼らはドラキュラの秘密を解き明かそうとする。ついに、ドラキュラの城からイギリスへと50の箱が発送されていたことを知る。この箱がドラキュラ伯爵の聖域として機能している。
彼らはその行方を追跡する。だが、その間に、ミナがドラキュラの餌食となり、体調を崩し始める。ヴァン・ヘルシングはミナの異変に気づき、ミナの部屋を訪れる。ミナがドラキュラにすでに襲われていたことに気づく。
彼らは50個の箱を発見していき、それらを壊していく。だが、1個だけは船でドラキュラの城に送り返されていた。ドラキュラがその中に入って、トランシルヴァニアに逃亡したことを彼らは知る。
そこで、彼らはドラキュラ城に向かう。ヴァン・ヘルシングはミナを連れて、城に入る。3人の女吸血鬼を倒す。様々な手段で、ドラキュラ城を浄化する。
他方、ドラキュラの入った箱(棺)はドラキュラの城へと運ばれている最中だった。ハーカーやモリスなどがそれに追いつく。箱を奪い、中で眠っているドラキュラを退治する。ルーシーにたいして行ったのと同様にし、ドラキュラは滅ぶ。
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おすすめ参考文献
ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』平井 呈一訳, 東京創元社, 1971