『フランケンシュタイン』のあらすじ

 『フランケンシュタイン』はイギリスの女流作家メアリ・シェリーの怪奇小説。1818年に公刊された。その後に映画化されるなどして、世界的に有名な作品である。原題は『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』である。
 プロメテウスは古代ギリシャの神である。人間を土からつくりだしたとか、人間にあらゆる技芸をもたらしたとかという伝承が残っている。この点がフランケンシュタインの背景といえる。ちなみに、メアリの夫は詩人であり、プロメテウスについて有名な作品を公刊している。

『フランケンシュタイン』(Frankenstein, or the Modern Prometheus)のあらすじ

 物語は北極船の船長ロバート・ウォルトンから始まる。彼は航行中に、ヴィクター・フランケンシュタインが海上で漂流しているのを発見する。彼を救出し、その話を聞く。そこで聞いた話について、ウォルトンは妹に手紙で書き送る。

 この物語の大半はヴィクターの過去にかんするものだ。
 ヴィクターはスイスで幸福な少年時代を送った。エリザベスやヘンリーというすばらしい友人をつくった。ヴィクターはインゴルシュタット大学で自然科学を学ぶ。生命の神秘を発見したいと思うようになり、その勉強に熱中していく。学才を開花させ、それにのめりこむ。
 数年後、ヴィクターはついに生命の神秘を発見したと思う。新たな生命体を生み出したいと重い、それに着手する。アパートで、新しい生命体の創造に成功する。
 だが、その見た目があまりに恐ろしかったため、ヴィクターはこの怪物をつくったことを後悔する。ヴィクターはアパートを飛び出し、ヘンリーと出会う。二人で再びアパートに戻った時、怪物は姿を消していた。

 ヴィクターは怪物を創造してしまったことで精神的に疲弊する。スイスの実家で静養しようと考える。その時、父親から手紙を受け取る。弟ウィリアムが殺されたことを知る。
 ヴィクターはジュネーヴの実家への帰り道に、その殺害現場を通過する。そこで怪物をみかける。怪物が弟ウィリアムを殺したのではないかと考えるようになる。
 実家につく。すると、養子ジャスティンがウィリアム殺害の容疑で告発されていることを知る。ジャスティンは無実を訴えたが、有罪判決となり、処刑される。二人の命が実質的に怪物のせいで失われた。ヴィクターはそう思い、苦しむ。

 ヴィクターは気分転換のために、ハイキングに出かける。ある日、怪物がヴィクターの前に現れる。
 怪物は自分を生み出したヴィクターにたいし、なぜウィリアムを殺したかを説明し、理解を求める。怪物は自身の特別な苦しみを次のようにヴィクターに訴える。
 怪物は外見があまりに恐ろしいので、人間たちはその見かけ上の恐ろしさにとらわれてしまう。よって、彼自身の内面の善良さをまったく見ようとしない。だから誰も彼に近づこうとしない。怪物は常に孤独である。だが、通常の人間と同様に、愛を欲する。
 そのため、怪物は女性の怪物をつくるよう、ヴィクターに懇願する。そうすることで、孤独を癒やし、愛をえるのだ、と。だが、ヴィクターは新たな怪物をつくるのに躊躇する。怪物はさらに説得を続ける。ヴィクターはその願いを聞き入れることにする。

 ヴィクターはジュネーヴに戻る。父親はヴィクターがエリザベスと結婚するよう勧める。
 ヴィクターは女性の怪物をつくるべく、イギリスに向かう。ヘンリーと途中まで同行するが、彼をスコットランドに残す。ヴィクターは単身で人里離れた島へ移動し、女性の怪物を生み出す作業を始める。
 次第に、ヴィクターは本当に女性の怪物を生み出してよいものかと考え始める。事態はさらに悪化するのではないか、と。ふと外を見ると、例の怪物が彼の作業を見守っている。その様子が恐ろしくみえたため、ヴィクターは女性の怪物をつくるのをやめる。つくりかけの「それ」を破壊する。
 怪物はそれをみて、裏切られたと思い、激怒する。復讐のために、ヴィクターの結婚式の夜に一緒にいるだろうと告げる。

 夜に、ヴィクターは女性の怪物の残骸を海に捨てる。岸に戻ると、殺人の容疑をかけられ、逮捕される。ヴィクターは無実を訴える。被害者が親友のヘンリーであると知る。そこに怪物によって殺された痕跡を見出す。ヴィクターは精神がおかしくなり、錯乱状態になる。
 2ヶ月ほど、刑務所に入れられる。父親が訪れ、精神状態が回復する。無罪が認められ、釈放される。
 ヴィクターは父親とともにジュネーヴに戻る。父の望み通り、幼馴染のエリザベスと結婚する。だが、ヴィクターは怪物の警告を思い出し、恐れる。すなわち、結婚式の夜に、彼とともにいる、と。ヴィクターはこのタイミングで殺されるのではないかと警戒する。
 だが、怪物はヴィクターではなくエリザベスを襲い、殺す。ヴィクターの父親はエリザベスの死にショックを受けて、まもなく没する。いまや、ヴィクター自身は怪物と同様に、孤独の身となる。怪物への復讐を誓う。
 ヴィクターは怪物を追って、北極へ向かう。だが、その道中で遭難し、衰弱する。物語の冒頭の船長ウォルトンに助けられる。
 だが、ヴィクターはまもなく没する。ウォルトンは物語の顛末を妹に手紙でこう伝える。
 ヴィクターの死の数日後、怪物が彼の遺体の前で嘆き悲しんでいた。ウォルトンはそれを発見し、なぜ嘆くのかと問いただした。
 怪物は答える。怪物自身がヴィクターによって作り出されたことで、どれだけの苦しみを味わい、どれだけ深い孤独を味わい、どれだけの憎しみを彼に抱いたかを。同時に、彼への復讐の行為によって、どれだけの後悔を感じたかを。
 だが、いまやヴィクターは死んだ。よって、これらの苦しみから解放される時が来た、と。怪物は自ら命を絶つために、北極の最北へ旅立つ。

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メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』小林 章夫訳書, 光文社, 2010

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