『黄金のロバ』は、2世紀頃の古代ローマで執筆された。完全なかたちで現存する古代ローマの小説としては唯一のものである。ルネサンスの時期に公刊され、シェイクスピアなどにも影響を与えた。
アプレイウスの『黄金のロバ』(Asinus aureus)のあらすじ
物語の舞台は古代ローマである。主人公の青年ルキウスはローマ帝国のギリシャ地方の出身者であり、テッサリアに向かっている。道中、アリストメネスと旅をともにする。
アリストメネスはある魔女の話をする。人を殺し、アリストメネスにもひどいことをした魔女がいるという話だ。ルキウスはこの話を信じ、そのうち魔女と出会うかも知れないと思う。
ルキウスはヒュパタに到着する。そこで、知り合いのミロの家に泊まる。ルキウスは叔母に挨拶に行く。叔母から、ミロの妻パンフィレは若い男を好む危険な魔女なので、近づかないよう警告される。ルキウスは同意する。
ルキウスはミロの召使フォティスに気をひかれ、関係を持つ。ある日、ルキウスとフォティスは、パンフィレが魔法の秘薬によって鳥に変身するのを目撃する。ルキウスは興味津々だった魔女を目の当たりにしたのだ。
ルキウスは自分自身も鳥になってみたいと思う。おそこで、フォティスに頼んで、その魔法の秘薬を盗み出してもらう。だが、フォティスは別の魔法の秘薬をもってきてしまう。
ルキウスはその事に気づかず、その秘薬を使う。その結果、鳥ではなくロバに変わる。二人は慌てる。ロバから人間に戻るには、薔薇を食べる必要があると知る。フォティスは薔薇を翌日もってくるという。
だが、その日、盗賊団がミロの家を襲う。ミロの財産をロバ(ルキウス)の背中に積んで、逃げる。かくして、ルキウスは人間に戻るための長い旅を始めることになる。
盗賊団のアジトでは、盗賊団がいろんな話をする。彼らはロバがもともと人間だと知らないので、油断してこれまでの犯罪の話などをする。キューピッドの物語などもする。
カリテという女性がアジトに誘拐されていた。ルキウスは彼女を救ってアジトを脱出しようとする。だが、失敗する。
そこに、ある青年がやってくる。彼はそれまでの武勇伝を語り、盗賊たちの頭領になる。宴会を開き、彼らを酔わせる。そこで彼らをしばりあげ、倒す。カリテとロバ(ルキウス)を連れて、逃げる。
彼はシャリテの最愛の婚約者トレポレムスであることが判明する。二人は結ばれる。
ルキウスは様々な「飼い主」の間を渡り歩くことになる。少年からは去勢すると脅され、ルキウスは逃げる。その頃には、トレポレムスが殺され、カリテが復讐として自殺したことを知る。
ルキウスが司祭に飼われたときには、ルキウスの鳴き声がきっかけで、司祭がほかの男性と男色にふけっていることが発覚する。司祭たちはもはや街にはいられなくなる。
ルキウスはパン職人に飼われる。そこで人間と同じ食べ物を食べて、有名になる。しかし、ある罪人の女性と公衆の面前で性交するという見世物を強要されそうになり、逃げる。
ルキウスは女神イシスの助けを得る。薔薇のありかを教えてもらい、それを見つけ、食べる。そのようにして、ようやく人間に戻る。イシスはルキウスにたいし、自身を崇拝するよう求める。ルキウスはそれに同意し、イシスへの信仰を始める。
イシスの夫の神オシリスがルキウスを訪ねる。オシリスもまたルキウスにたいし、自身への崇拝を求める。ルキウスは同意する。オシリスとイシスの熱心な信者になる。