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ボストン虐殺事件(1770)

 ボストン虐殺事件は1770年にアメリカのボストンで生じた事件。1767年にイギリスがアメリカ植民地で導入した新たな関税などが火種となり、入植者とイギリス兵の乱闘が起こって、イギリス兵が入植者を射殺した(虐殺事件)。当時の絵や再現映像とともに説明する。

ボストン虐殺事件の背景

 18世紀に入ってから、イギリスは北米の植民地獲得競争でフランスと対立するようになっていた。18世紀なかばには、英仏はヨーロッパで7年戦争を開始した。
 同時に北米では、両者はその一部としてフレンチ・インディアン戦争を行った。イギリスはこれに勝利した。だが、その戦費がイギリス政府の財政に重くのしかかった。

 また、イギリス政府は長らく北米植民地にたいして深く関与せず、植民者に自律的な活動を認めていた。だが、フランスとの植民地競争が一因となり、イギリス政府は北米植民地への関与や規制を強めるようになった。そのため、植民地では反発が生じていた。

 タウンゼント法

 1767年、イギリス政府は北米植民地にたいして、タウンゼント法を制定した。これにより、ガラスや訛、茶などに輸入税を課すことになった。
 さらに、植民地での税逃れを防ぐために、アメリカ税関管理局が設置された。税関職員は禁制品を探す際に便宜を図られた。また、イギリス軍隊を北米植民地に駐屯させるための条件が整備された。

 その結果、北米植民地の人々は強く反発した。茶やガラスなどの不買運動や当局への暴力行為がみられた。
 植民地ではタウンゼント法を不当な法律として非難し、その撤回を求める運動が生じた。この不穏な状況にたいして、1768年、イギリス政府は陸軍をボストンに派遣した。

 ボストン虐殺事件へ

 1770年の2月頃から、次第に緊張が高まっていった。3月2日には、ボストンでイギリス兵士と植民者の乱闘が生じた。イギリス兵士が反対者への攻撃を準備しているという噂が流れた。

 1770年3月5日、ボストン虐殺事件は起こった。まず、イギリス軍への敵対行為を煽るビラがまかれるなどした。入植者の一部がイギリス軍の兵舎を襲い始めた。これは失敗した。だが、暴徒化した群衆の数が増えていった。

 税関の見張りが群衆の敵意の的になり、取り囲まれた。見張りを救出すべく、7人のイギリス兵が派遣された。だが、法律上、彼らはすぐには発砲できないことになっていた。群衆はこれを利用し、兵士たちを罵倒し、嘲笑し、氷などを投げつけた。

 兵士の一人が群衆に取り囲まれ、ついに発砲した。他の兵士も同様に発砲した。その結果、黒人の水夫だったクリスパス・アタックスが即死した。のちに、負傷者の二人がのちに死亡した。

 事件の悪化を防ぐために、中尉が現場に到来した。上述の兵士たちを兵舎に戻した。群衆には、それらの兵士を裁判にかけると約束した。かくして、事態は収まった。
 その後、7人の兵士などは逮捕された。事態の状況を見て、裁判は半年後に開かれた。二人は軽い罪で罰されたが、ほかは無罪となった。

 ボストン虐殺事件の重要性

 事件からまもなく、 植民地の急進派がこの出来事を「ボストンの虐殺事件」と名付けた。 よって、この名称が急進派によるものだということは認識しておいたほうがよいだろう。
 すなわち、急進派がイギリス政府との対決姿勢を強める中で、宣伝の一環でつけた名前だからである。

 この一件はイギリス政府への植民者の不満を一層高めた。かれらはこの一件を「虐殺」として喧伝した。さらには、本国イギリスの恣意的な権力の行使だと喧伝した。

 北米植民地はタウンゼント法による課税が茶を除いて撤回されたことで、平穏を取り戻した。軍隊もボストンから撤退した。
 だが、ボストン茶会事件などで再び緊張を高め、アメリカ独立戦争へと至る。ボストン虐殺事件はその流れで重要とみなされることになる。 

ボストン虐殺事件と関連のある出来事

●アメリカ独立革命の大枠を説明した記事はこちら

●ボストン茶会事件:同じボストンで、虐殺事件の3年後に起こった事件。独立革命の直接的なきっかけとなっていく重要な事件。虐殺事件の3年後、ボストンで何が起こったのか。

ボストン茶会事件の記事をよむ

ボストン虐殺事件の再現の映像(画像をクリックすると始まります)

ボストン虐殺事件を描いた絵

ボストン虐殺事件 利用条件はウェブサイトで確認

おすすめ参考文献

ゴードン・S.ウッド『アメリカ独立革命』中野勝郎訳, 岩波書店, 2016

Edward G. Gray(ed.), The Oxford handbook of the American Revolution, Oxford University Press, 2015

Serena Zabin, The Boston Massacre : a family history, Houghton Mifflin Harcourt, 2020

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