『間違いの喜劇』はイギリスの代表的な劇作家シェイクスピアの喜劇作品。16世紀末に制作された。船の難破事故で生き別れになった二組の双子たち。彼らがたまたま同じ町で入れ違いになり、周囲の人たちを混乱させる。商品を渡したはずなのに、受け取っていないとか。ついには警察沙汰になり、最後には・・・。
『間違いの喜劇』(The Comedy of Errors)のあらすじ
舞台はギリシャの都市エフェソスである。エフェソスと都市シラクサは敵対関係にある。そのため、エフェソス公爵はシラクサからエフェソスへの移動を禁止した。これに違反した者は、1000マルクの罰金を課される。支払えなければ、処刑される。
シラクサの商人エゲオンがこのエフェソスにやってくる。だが、禁令に反したとして、捕まる。1000マルクを支払えないので、処刑されそうになる。
公爵は彼に、なぜエフェソスにきたのか尋ねる。エゲオンは、生き別れた妻と息子を探しに来たという。その事情をこう説明する。
かつて、エゲオンには妻と、一卵性双生児の双子がいた。さらに、別の一卵性双生児の双子の奴隷を所有していた。
だが、彼らは船で嵐にあった。エゲオンは一人の息子と一人の奴隷とともに救助され、シラクサに帰還できた。だが、妻ともう一人の息子ともう一人の奴隷は別の船に救助され、どこかにいってしまった。そのため、エゲオンは妻たちを探しに、エフェソスにやってきた、と。
公爵はこの話に感じ入り、エゲオンに一日だけ処刑の猶予を与えるという。1日の間に1000マルクを得られれば、解放する、と。
とても紛らわしいことに、エゲオンの二人の息子はどちらもアンティフォラスという名前である。エゲオンがシラクサに連れ帰った息子はシラクサのアンティフォラスと呼ばれる。彼はエゲオンとは別行動で、同じくエフェソスにやってきた。
もう一人のアンティフォラスはエゲオンの妻とともにエフェソスに運ばれ、住むようになっていた。このアンティフォラスはそれゆえエフェソスのアンティフォラスという。エフェソスのアンティフォラスは裕福に暮らしている。
なお、双子の奴隷は同様に同じ名前であり、ドロミオという。エゲオンが連れ帰ったのはシラクサのドロミオである。妻とともにエフェソスに運ばれたのは、エフェソスのドロミオである。
これらの二組の双子はそれぞれが一覧清楚政治なので、顔がそっくりである。名前もそれぞれ同じである。彼らがこの物語の鍵を握ることになる。
シラクサのアンティフォラスはシラクサのドロミオとともに行動している。アンティフォラスは商売のためにエフェソスにやってきた。ドロミオに用事を済ませてくるよう言い、出発させる。
シラクサのドロミオがシラクサのアンティフォラスを探している。たまたま、エフェソスのアンティフォラスを見つけ、シラクサのアンティフォラスと勘違いする。シラクサのアンティフォラスに、夕飯の時間なので、帰宅するよう求める。
シラクサのアンティフォラスはエフェソスのドロミオをシラクサのドロミオだと勘違いする。用事を済ませたか聞く。エフェソスのドロミオは用事を任さrていないと答える。
アンティフォラスは激怒する。アンティフォラスは、エフェソスには魔女が住むので、ドロミオに魔法をかけておかしくさせていると考える。
エフェソスのドロミオは追い返され、自宅に戻って来る。自宅には、シラクサのアンティフォラスの妻アドリアナが妹ルシアナとともに、彼らの帰りを待っていた。
エフェソスのドロミオはアドリアナに、さきほど起こったことを説明する。アンティフォラスは家に帰ってこようとせず、金や商売の話ばかりしていた、と。アドリアナは夫が浮気していると疑い始める。
シラクサのアンティフォラスはシラクサのドロミオを見つける。そこに、アドリアナがやってくる。アドリアナはシラクサのアンティフォラスを、自身の夫のエフェソスのアンティフォラスと勘違いする。彼に、自宅に帰ってこないなどの点で怒りをぶつける。
シラクサのアンティフォラスはアドリアナを知らないので、困惑する。だが、アドリアナが自宅に連れ帰って夕飯だというので、それに従う。シラクサのドロミオもついていく。
彼らは自宅につく。アドリアナはシラクサのドロミオをエフェソスのドロミオだと勘違いし、彼に門番をするよう命じる。食事中、誰も自宅に入れないように、と。
その頃、本当の夫のエフェソスのアンティフォラスはエフェソスのドロミオとともに、金細工師のアンジェロや商人のバルタザールと話している。アンティフォラスはアンジェロに、金の首飾りを注文する。それを後で自宅に届けるよう頼む。
エフェソスのアンティフォラスはバルタザールを自宅での夕食に誘う。彼らは自宅に向かう。自宅では、シラクサのドロミオが門番をしている。エフェソスのアンティフォラスが入ろうとしても、入れてくれない。
エフェソスのアンティフォラスは彼に何者だと尋ねる。ドロミオだと返答される。エフェソスのドロミオは誰かが自分になりすましていると思う。
エフェソスのアンティフォラスはドアを壊すと脅すが、世間体もあるので、やめる。別のところで夕飯をすませることにし、立ち去る。
他方で、食事中のアドリアナとシラクサのアンティフォラスは口論になっている。シラクサのアンティフォラスは当然ながら、アドリアナを妻だと思っていない。その妹のルシアナに恋をし、アプローチし始める。
ルシアナは義理の夫だと思っている人物からのアプローチに動揺する。シラクサのアンティフォラスはそもそもアドリアナが自分の妻ではないという。
その家の女中はエフェソスのドロミオの婚約者である。シラクサのドロミオをエフェソスのドロミオと勘違いし、いつも通りに接する。シラクサのドロミオは彼女を知らないので、困惑する。シラクサのアンティフォラスのところにやってきて、このことを説明する。
シラクサのアンティフォラスは上述の金細工師アンジェロから、エフェソスのアンティフォラスが注文していた金の首飾りを渡される。困惑したが、そのままこれを受け取る。
シラクサのアンティフォラスは自分たちがエフェソスの魔女たちにたぶらかされていると思う。シラクサに早く帰りたいと思う。ドロメオに、シラクサ行きの次の船を調べにいかせる。
その日の夜、エフェソスのアンティフォラスはエフェソスのドロミオに、ロープを買いに行かせる。そこに、アンジェロがやってきて、金の首飾りの代金を払うよう求める。
エフェソスのアンティフォラスはこれを受け取っていなかったので、受け取っていないという。アンジェロは彼にこれを渡したと思っているので、激怒する。彼を逮捕させる。
そこに、シラクサのドロミオがやってくる。エフェソスのアンティフォラスを自分の主人だと思い込み、船がそろそろエフェソスを出発すると告げる。アンティフォラスはなんの話かわからないという。シラクサのドロミオに、アドリアナから保釈金をもってくるよう言う。
他方、アドリアナはルシアナと、夫がおかしくなったと話し合っている。シラクサのドロミオがそこにやってきて、アンティフォラスが逮捕されたので保釈金をくれという。保釈金が渡される。
エフェソスのアンティフォラスはまだ逮捕されている。エフェソスのドロミオがそこにやってくる。アンティフォラスはエフェソスのドロミオに保釈金を渡すよう求める。だが、エフェソスのドロミオが頼まれたのはロープだったので、ロープならもっていると答える。アンティフォラスは激怒する。
そこに、アドリアナ、ルシアナ、悪魔祓い師がやってくる。彼女たちは夫が悪魔にとりつかれたと考えたのだ。悪魔祓い師はエフェソスのアンティフォラスらを隔離して閉じ込めるべく、連行していく。
その後、アドリアナたちが話し合っているところに、シラクサのアンティフォラスとドロメオがやってくる。彼女たちを魔女だと思って退治しようとする。彼女たちは去る。
シラクサのアンティフォラスたちはエフェソスを脱出しようと考える。移動中に、金細工のアンジェロと会う。シラクサのアンティフォラスは彼の金の首飾りを身につけていた。アンジェロは代金を求める。
二人が口論になっているところに、アドリアナらがやってくる。アドリアナはアンティフォラスがおかしくなったといい、捕まえようとする。アンジェロに協力を求める。シラクサのアンティフォラスとドロミオは修道院に逃げこむ。
女の修道院長が騒ぎを聞いて、やってくる。彼らに事情を聞く。アドリアナは夫の浮気の疑いがあるなど、事情を説明する。修道院長はむしろアドリアナを責める。
そこに、エフェソス公爵が冒頭のエゲオンを連れてやってくる。エゲオンの処刑の準備を進める。アドリアナは公爵に、事情を説明し、女の修道院長についても裁くよう求める。
そのとき、アンティフォラスらが上述の悪魔祓い師を襲ったという知らせが入ってくる。だが、アドリアナは彼らが修道院に逃げ込んでいると思っているので、それは間違いだという。
エフェソスのアンティフォラスとドロミオが公爵のもとにやってきて、それまでの事情を話す。金の首飾りを注文したが受け取れず、それにもかかわらず不当に逮捕され、監禁された。どうにか脱出して、ここまできたのだ、と。
だが、アンジェロは金の首飾りを彼に渡したという(本当はシラクサのアンティフォラスに渡した)。
修道院長がシラクサのアンティフォラスとドロミオを連れて、そこにやってくる。これで、すべての誤解がとけていく。
シラクサのアンティフォラスとドロミオはエゲオンがそこにいると気づく。さらに、女の修道院長が実は生き別れた妻だと判明する。彼らはその日にお互いになにが起こったのかを説明し、それぞれが納得する。
エフェソスのアンティフォラスはエゲオンの罰金を払うと申し出る。公爵はエゲオンを無償で赦免すると決める。彼らはそれまでの人生を互いに語りあうことにする。