『モンテ・クリスト伯』はフランスの作家アレクサンドル=デュマの代表的な小説。1846年に公刊された。陰謀で人生を狂わされた主人公が莫大な財産をえて復讐を遂げる。日本では、黒岩涙香が翻案で『巖窟王』として紹介し、有名になった。この記事では、あらすじを紹介する(結末までのネタバレあり)。
『モンテ・クリスト伯』(Le Comte de Monte-Cristo)のあらすじ
この物語の主人公は19歳の船乗りエドモン・ダンテスである。ダンテスはハンサムで人望もある。美しいメルセデスと婚約している。
彼はファラオ号の船員であり、ファラオ号はマルセイユに向かっていた。航海中に船長が没し、ダンテスが航海を引き継いだ。マルセイユに到着した時、ダンテスは、近いうちに船長への出世を約束される。彼の人生は順風満帆にみえた。
だが、この仕事と私生活での成功が彼の周囲の人物の嫉妬心を掻き立てる。具体的には、3人いる。まず、彼と同じ船の船員の段クラールはダンテスの出世を妬んでいる。次に、モンテゴはダンテスの婚約者メルセデスの愛をえようとしており、ダンテスを恋のライバルとみなしている。最後に、隣人のカデルースはダンテスの幸福を妬んでいる。
三人はダンテスを罠にはめようと共謀する。ダンテスは上述の船長の依頼で、ナポレオンの手紙をパリのボナパルティストのグループに運んだ。三人はダンテスが反逆罪にあたると告発する手紙を作成した。
ダンテスはメルセデスとの結婚式を迎える。ところが、その幸せの絶頂の瞬間に、告発によって逮捕される。
ダンテスの事件は検事のヴィルフォールが担当する。ヴィルフォールはこの事件が三人の共謀したものだと見抜く。そのため、ダンテスを当初は釈放しようとする。だが、ダンテスが手紙の受取人の名前をヴィルフォールに教えると、彼の考えは変わってしまう。
というのも、その受取人はヴィルフォールの父親だったからだ。父が受取人だと露見すると、父が反逆罪で逮捕されかねない。さらに、自分自身のキャリアにも大きな悪影響が生じるだろう。
ヴィルフォールはそう思い、ダンテスを終身刑にして投獄することにする。ダンテスの上司モレルはダンテスを助けようとして弁護する。だが、ヴィルフォールは終身刑によって、この秘密を永久に消し去ろうとする。
結局、ダンテスは有罪で終身刑となる。政治犯が収容されている悪名高いイフ城に投獄される。
ダンテスはイフ城の独房で苦しい日々を送る。ある日、他の囚人が独房で穴を掘っている。ダンテスはそれに気づき、同じように穴を掘り始める。ダンテスはついにその囚人と出会う。彼は神父のファリアである。
ファリアはダンテスに歴史や哲学、語学などを教え込む。さらに重要なことに、ファリアはある財宝の在処を彼に教える。それはかつてはイタリアの非常に裕福な一族の財宝であり、現在はモンテ・クリスト島に隠されている。
数年後、ファリアは獄中で死ぬ。ファリアの遺骸は袋に収容されて海に放り投げられる。そのときに、ダンテスは袋に潜み、一緒に海に投げられる。かくして、ダンテスはようやく脱獄に成功する。
ダンテスは当初、密輸組織に拾われ、行動をともにする。そこからモンテ・クリスト島に向かい、財宝を発見する。
ここから、ダンテスの物語は本格的に始まる。自分を陥れた人々への復讐を誓う。
ダンテスはまず、神父に変装してマルセイユに向かう。かつての隣人のカデルースのもとに向かう。カデルースは宿屋を経営している。ダンテスは自身に対する陰謀の詳細を彼から聞く。
さらに、ダンテスはカデルースから、ダンテスの投獄中に生じたことを聞いた。婚約者だったメルセデスは、ダンテスと彼女の結婚を妬んでいたモンテゴと結婚していた。ダングラールはパリの社交界で成功していた。また、ダンテスの父はすでに没していた。
カデルースはダンテスへの陰謀を後悔しているようだった。ダンテスは彼にダイヤを与える。また、かつて自身のために弁護してくれたモレルにも、財政支援した。
それから10年間をかけて、ダンテスは復讐の準備をする。パリにいるモンテゴ夫妻、ダングラールの情報収集などを行う。10年後、ダンテスは莫大な財産をもつモンテ・クリスト伯として社交界に登場する。
ダンテスはローマで、モンテゴ夫妻の息子を盗賊から救って、恩を売る。その見返りとして、ダンテスはパリの社交界に紹介される。ダンテスはモンテ・クリスト伯としてふるまう。ダングラールやモンテゴは彼がダンテスだと気づかない。
ダンテスはまずモンテゴから名誉と家族を失わせる。モンテゴは伯爵になっており、社会的に成功していた。ダンテスはモンテゴの過去の問題を暴露することにした。モンテゴはかつてギリシャ人のパトロンのもとで働いていた。だが、そのパトロンを裏切って、その妻と娘を奴隷として売った。
ダンテスはその奴隷の娘を購入した。ダンテスはこの問題をマスコミに流し、モンテゴのスキャンダルを暴露する。さらに、この一件を議会で取り上げさせ、モンテゴの名誉を失墜させる。モンテゴの妻メルセデスと上述の息子はモンテゴのもとを去る。名誉と顔↑兎を失ったモンテゴは自殺する。
ダンテスはダングラールへの復讐も遂げる。ダングラールは金に執着しており、ダングラールの出世を妬んでいた人物だった。そこで、ダンテスは彼を経済面で復讐する。
ダンテスは様々な偽の取引で、ダングラールから莫大な金を巻き上げる。さらに、ダングラールの妻の浪費癖を刺激し、金を使わせる。ダングラールの財政は逼迫し、借金を重ねる。ついに、ダングラールは借金を返済せずに逃げようとする。ダンテスは盗賊に彼を誘拐させ、無一文にさせる。だが、その命までは奪わなかった。
ダンテスはヴィルフォールへの復讐も遂げる。ヴィルフォールはかつてダングラール夫人と恋愛関係にあった。その際に、隠し子が生まれた。ヴィルフォールはこの息子を生き埋めにして殺害しようとした。ヴィルフォールはそれに成功したと考えていた。だが、実際には、この息子は救出された。彼は成長し、現在はダングラールの娘と婚約している。
ダンテスはこのヴィルフォールの嬰児殺し未遂の秘密と、ヴィルフォールの現在の妻を利用する。
ヴィルフォールの現在の妻は息子に財産を相続させたかった。ダンテスは彼女に、毒殺の方法をほのめかす。彼女はヴィルフォールの最初の妻の両親を毒殺し、夫の最初の結婚で生まれた娘を毒殺しようとする。その両親が死ぬ。ヴィルフォールは妻の犯行に気づいて、妻と対峙する。妻は息子を毒殺し、自殺する。
そのかたわら、ダンテスはヴィルフォールの嬰児殺し未遂の過去を露見させる。かつては検事としてダンテスを訴追していたヴィルフォールは、被告人として法廷でこの罪を追求される。ヴィルフォールは家族を失い、重罰をくだされそうになり、発狂する。
ダンテスはこの復讐を実行する一方で、若い男女の恋を成就させる。ヴィルフォールと最初の妻の娘ヴァランティーヌが上述のように現在の妻によって毒殺されそうになった。ヴァランティーヌは素晴らしい青年マクシミリアン・モレルと婚約している。ダンテスはこの二人の恋を手伝う。
ダンテスはヴァランティーヌを仮死状態にする薬を飲ませ、モンテ・クリスト島に連れ去る。マクシミリアンはヴァレンティーヌが死んだと思い込み、悲嘆に暮れる。1ヶ月後、ダンテスはヴァレンティーヌが生きていることをマクシミリアンに明かす。マクシミリアンは生き返った心地になり、ヴァレンティーヌと結ばれる。
ダンテス自身も美しいヘイデと結ばれ、その地を去る。
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