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シェイクスピアの『シンベリン』

 『シンベリン』はイギリスの代表的な劇作家シェークスピアのロマンス劇。 1609年頃に制作された。

シェイクスピアの『シンベリン』(Cymbeline)のあらすじ

 物語の舞台はイギリスである。イギリス王シンベリンはローマのもとで、イギリスを統治していた。シンベリンはローマの後ろ盾のおかげで王になっていたので、ローマに貢納金を支払うよう義務付けられていた。だが、それを拒否した。このことが、物語の後半から響いてくる。

 シンベリンにはイモージェンという一人娘がいる。シンベリンはイモージェンの結婚相手を決めていた。シンベリンの新しい妻の息子クローデンである。だが、イモージェンはクローデンではなく、卑しい身分のポステュマスとひそかに結婚する。
 シンベリンはこれを知り、激怒する。ポスチュマスを国外追放に処す。ポスチュマスはイタリアに追放される。
 その際に、ポスチュマスとイモージェンは二人の愛が変わらないことを誓い合う。そのしるしとして、ポスチュマスのブレスレットとイモージェンの指輪を交換する。

 イタリアで、ポスチュマスはジャコモというイタリア人男性と出会う。ジャコモは女性がみな生まれつき尻軽だと断言する。ポスチュマスはイモージェンが貞操を守るという。ジャコモがイモージェンを口説けるかどうか、二人は賭けをする。
 ジャコモはイギリスの宮廷に向かい、イモージェンを訪れる。イモージェンに一夜をともにしようと誘うが、断られる。
 その頃、シンベリンの妻は息子のクローデンをイモージェンの夫にしようと画策する。だが、イモージェンは彼を遠ざけるために、従者のピサニオを用いる。
 ジャコモは賭けに勝つために、一計を案じる。イモージェンに、旅行用の箱を一晩だけ預かるよう頼み、同意してもらった。ジャコモはひそかに箱に入り、イモージェンの部屋に運ばれる。
 夜になる。イモージェンが眠った後、ジャコモは箱から出る。部屋の詳細を記録する。イモージェンの腕から、イモージェンがポスチュマスと交換していたブレスレットを外して、持ち去る。
 ジャコモはイタリアに戻る。ポスチュマスに、ブレスレットをみせ、部屋の詳細を説明する。あたかもイモージェンを口説くのに成功したかのように。ポスチュマスはイモージェンが貞操を守れなかったと思い込む。賭けに負けたと考え、指輪をジャコモに与える。
 ポスチュマスは激怒し、ピサニオに手紙を送る。イモージェンが不貞を働いたので、彼女を殺すよう、ピサニオに指示する。
 だが、ピサニオはイモージェンの不貞を信じなかった。そこで、イモージェンには男装させて、ウェールズに逃げるよう説得する。イモージェンは同意して、ウェールズに到来する。


 ピサニオはポスチュマスには、殺害の指令を実行したと返信した。ポスチュマスはその知らせを受けて、取り返しのつかないことをしてしまったと思う。罪悪感に打ちのめされる。
 クローデンはイモージェンを口説こうとするが、イモージェンがウェールズに逃げたことを知る。そこで、ポスチュマスの残されていた服をきて、ウェールズに向かう。
 イモージェンはウェールズでベラリウス親子と出会う。ベラリウスはかつてイギリス貴族だったが、追放された。いまは洞穴で、グイデリウスとアルヴィラガスという二人の息子と暮らしている。彼らは男装したイモージェンを歓迎する。
 少し後、クローデンがそこにやってくる。クローデンはベラリウス親子と諍いを起こし、決闘し、斬首される。
 その頃、イモージェンは別の場所で体調を崩し、「薬」を飲む。これはシンベリンの妻がイモージェンに渡したものだった。シンベリンの妻は「薬」だといって渡したが、実はイモージェンを殺そうとして毒をわたした。
 だが、医者がその成分をひそかに調整していた。そのため、イモージェンはこれを飲んで、深い眠りについただけだった。だが、周りからは死んだようにみえた。
 ベラリウス親子はイモージェンを見つけ、死んでいると思った。悲しみながら、イモージェンの身体をクローデンの首のない死体の横においた。
 その後、イモージェンは目を覚ます。隣に、ポスチュマスの服を着た首のない死体(クローデンの死体)を見つける。ポスチュマスが殺されたと思い、悲嘆に暮れる。

 その頃、ローマ軍がイギリスに攻め込んでくる。冒頭で述べたように、シンベリンはローマへの貢納金の支払いを拒否していた。そのため、ローマ軍が彼を罰するためにやってきたのだ。
 変装したポスチュマスとジャコモはローマ軍に加わり、イギリスに到来している。イモージェンは変装したままローマ軍に同行する。
 両軍の戦いが始まる。ポスチュマスは祖国イギリスのために、ローマ軍と戦うことにする。ベラリウス親子はイギリス側で参加する。ローマ軍が敗北して撤退する。
 ポスチュマスは敗北したローマ兵に変装する。ポスチュマスは自身の指示で愛するイモージェンを殺してしまったと後悔しており、死ぬ場所を探し求めていたのだ。彼は捕虜として投獄される。獄中で夢を見て、イモージェンが生きているかもしれないと告げられる。

 物語は大団円に向かっていく。宮廷では、シンベリンの妻は悪事を認めて、没していた。イモージェンやジャコモ、ポスチュマスが捕虜として、シンベリンの前に連行される。イモージェンに恩赦が与えられる。
 上述のように、ジャコモはかつて、ポスチュマスの指輪(もともとはイモージェンとポスチュマスが交換した指輪)を賭けの賞品としてもらっていた。いまも、それを指にはめていた。
 ジャコモはなぜその指輪をつけているのか、尋ねられる。ジャコモはその経緯を説明する。その流れで、ポスチュマスがついに正体を明かした。イモージェンを殺してしまったと白状する。
 そこで、イモージェンがようやく正体を明かす。イモージェンのこれまでの経緯として、ピサニオがイモージェンをウェールズに送ったことを話す。その後にクローデンがウェールズに旅立ったことが分かる。
 ベラリウス親子はウェールズでクローデンを殺したと認める。シンベリンは激怒する。ベラリウスはここで正体を明かす。自分はかつてシンベリンに追放された貴族だ、と。
 ベラリウスは追放される際に、シンベリンの二人の息子を誘拐していた。彼らを自分の子と偽り、育ててきた。ベラリウスの二人の子供は、実はシンベリンの行方不明の子供であり、イモージェンの兄弟だった。クローデンを殺したのは、この子供たちだった。
 シンベリンはベラリウス親子に恩赦を与える。ローマとの和平を結び、物語は幕を閉じる。

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シェイクスピア『シンベリン』小田島 雄志訳、白水社、1983年

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