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ジョン・ウェブスターの『モルフィ公爵夫人』:事実を題材とした一族の悲劇

 『モルフィ侯爵夫人』はイギリスの劇作家ジョン・ウェブスターの悲劇作品。1613年頃に初演された。シェイクスピアと同時期の悲劇の傑作である。

『モルフィ公爵夫人』(The Duchess of Malfi)のあらすじ

 舞台は16 世紀のイタリアのモルフィである。モルフィの公爵夫人の邸宅に、夫人の兄弟のフェルディナンド公爵と枢機卿がやってくる。この頃、夫人の執事のアントニオがフランスから帰国してマもなかった。
 マルティ侯爵夫人は若くてきれいである。夫が没したので、未亡人である。フェルディナントは夫人にたいし、再婚せず、純潔さを保つよう命じる。実際には、再婚相手をつくらないことで、夫人が自分たちの言いなりになるようにしたいのだ。
 フェルディナントはホソラを雇い、夫人の邸宅にスパイとして住まわせる。ホソラは当初乗り気でなかったが、同意する。ホソラはかつてフェルディナントのために暗殺をも実行した人物でうある。フェルディナントは自分の欲望のために様々な手段を用いる人物である。
 夫人は兄弟たちにたいし、再婚するつもりはないと言い張る。兄弟たちはローマに戻る。夫人はすぐに執事アントニオにアプローチし、ひそかに再婚する。
 9ヶ月後、夫人はアントニオの子を妊娠している。これをホソラには秘密にしている。だが、ホソラは夫人の妊娠に気づき始めている。妊娠しているかを確かめるために、夫人にアプリコットを渡す。
 夫人は気分が悪くなり、寝室に戻る。ホソラはこれを妊娠のしるしと判断する。さらに、アントニオがその子供のために作成したホロスコープを発見する。
 ホソラは夫人の妊娠を確信し、フェルディナントらに手紙で伝える。フェルディナント兄弟は激怒する。夫人が再婚したことを知らないので、子供を私生児だと思い込む。フェルディナントは父親が誰か分かるまで慎重さを保とうとする。
 数年が経過する。夫人はアントニオとの間にさらに二人の子どもをもうけていた。フェルディナントはホソラからその知らせをうける。そこで、フェルディナントはモルフィの邸宅にやってくる。
 フェルディナントは夫人と対面し、問い詰める。夫人は再婚していたことを認める。フェルディナントは自分たちの高貴な血筋が汚されたと激怒する。そのうえ、夫人に自害するよう勧める。夫人は拒否する。
 フェルディナントは夫人にたいして、二度と眼の前に現れないよう命じる。夫人はフェルディナントから危害を受けるのを恐れ、逃亡を計画する。
 まず、夫のアントニオと子供を逃がすことにする。アントニオが自分から金を盗んだので、あんこなへの追放に処する、と。ホソラはアントニオがそのような人間でないと、アントニオを弁護する。夫人はホソラにたいし、これはアントニオを逃がす手段だと打ち明ける。
 ホソラはそれをフェルディナントらに報告する。フェルディナントらはアントニオと夫人および子どもたちを追放刑に処す。フェルディナントはアントニオに和解をほのめかす手紙を送る。
 だが、アントニオはフェルディナントの性格を知っているので、これを罠だと考える。アントニオと夫人は別れを告げる。アントニオは長男をつれてミラノへ逃げる。
 ホソラは夫人と残った二人の子供を探し出し捕まえる。モルフィの邸宅に連行し、幽閉する。
 夫人は監禁生活を耐え忍ぶ。フェルディナントはそれを知って怒り、夫人をさらに追い詰めようとする。夫や子供が死んだと思わせ、夫人を悲しませる。さらに、精神のおかしくなった人たちをつれてきて、夫人をその中に投入する。
 ホソラはこのような拷問に反対したが、効果はなかった。仕方なく、そのまま続ける。
 夫人はそれでも耐えている。フェルディナントはついに夫人を殺すよう命じる。夫人と二人の子どもたちは絞め殺される。フェルディナントが入ってきて、その遺体をみて、罪悪感に苦しみ始める。気がおかしくなっていく。殺害の命令を実行したホソラを責め、立ち去る。
 夫人はかすかに息を吹き返す。その間に、ホソラは夫人に、アントニオがまだ生存していると教え、彼女を安堵させる。夫人はそのまま没する。ホソラは悲しむ。

 他方、ミラノに長男とともにいるアントニオは、まだ妻子の死を知らない。現状に終止符を打とうとして、枢機卿と交渉することを決める。
 その頃、フェルディナントは完全に気がおかしくなる。枢機卿は夫人殺害を秘密にしようと考え、自身の関与も認めない方針をとる。あとはアントニオの口封じをしようと考える。
 ホソラが枢機卿に呼ばれ、アントニオ暗殺を依頼される。ホソラは夫人殺害のことを枢機卿に知らせるが、枢機卿はその一件を知らなかったと言い張り、関与を否定する。ホソラは暗殺の依頼を受ける。
 枢機卿はジュリアという女性を愛人にしていた。ジュリアはホソラに惹かれ、アプローチする。ホソラはジュリアを利用して、枢機卿が夫人殺害に関与したことをたしかめさせる。ジュリアを通して、ホソラはやはり枢機卿が関与していたと知る。枢機卿は秘密がばれたので、ジュリアを殺す。
 ホソラは枢機卿を訪ねる。夫人暗殺の報酬をまだ受け取っておらず、枢機卿がそれに関与したのを知っているといい、枢機卿に報酬を求める。枢機卿は、アントニオを殺し、ジュリアの死体を処分するのを手伝った後に報酬を与えると約束する。
 ホソラは同意する。だが、ホソラの真の目的は、アントニオに味方して、フェルディナントと枢機卿に復讐を果たすことにある。
 枢機卿の邸宅で、枢機卿は召使たちに告げる。どんな音がしても、部屋の中に入るな、と。フェルディナントの狂気を理由にしたが、実際にはジュリアの死体処理などのためである。
 夜、ホソラは復讐のために邸宅に入り込む。そのとき、アントニオもまた枢機卿との交渉を試みるために、邸宅に入り込む。
 ホソラは暗闇の中で、枢機卿と思しき人物を刺す。それはアントニオだった。ホソラはそれと気づき、当惑する。アントニオが死にゆく中で、夫人と二人の子供が殺されたことを教える。
 ホソラは枢機卿を探し出し、刺す。そこにフェルディナントが入ってきて、ホソラを襲う。ホソラとフェルディナントが互いに刺しあう。大混乱の中で、ホソラは何が起きているのかを枢機卿に告げる。枢機卿はそれを聞きながら死ぬ。
 フェルディナントは死ぬ間際に正気を取り戻し、自業自得と思いながら死ぬ。ホソラも話し終わると息を引き取る。
 その後、アントニオと夫人の最後の息子(長男)が連れてこられる。彼が一族の後継者となる。

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