ソフォクレスの『エレクトラ』

『エレクトラ』は古代ギリシャの三大悲劇作家ソフォクレスの優れた悲劇作品。ギリシャの英雄アガメムノンの殺害者にたいして、娘エレクトラらが遂げる復讐の物語。この記事では、あらすじを紹介する(結末までのネタバレあり)。

『エレクトラ』(Electra)のあらすじ

 この物語は古代ギリシャの英雄アガメムノンがトロイア戦争で勝利し、帰国して、妻クリュタイムネストラに殺害された後のことである。主人公といえるのはアガメムノンとクリュタイムネストラの息子オレステスと娘エレクトラである。
 

 オレステスはクリュタイムネストラにたいしてアガメムノンの復讐を計画する。ピュラデスと老いた奴隷とともに、クリュタイムネストラのいるミケーネの宮殿に向かう。エレクトラもその宮殿にいる。
 その途中、オレステスはデルフォイに立ち寄り、アポロンの神託を受ける。神託は、オレステスが一つの嘘と秘密裏の行動で勝利をえなければならないと告げる。
 オレステスは老奴隷に、オレステスが競技大会で事故死したと喧伝させる。さらに、火葬された遺骨が入った青銅の壷を彼にもたせ、その遺骨をオレステスのものだと周知させる。宮殿の中からエレクトラのすすり泣きが聞こえてくる。オレステスはエレクトラに会いたいと思うが、まずはアガメムノンの墓へと供物を捧げにいく。

 エレクトラが宮殿から出てくる。エレクトラは悲嘆に暮れている。母クリュタイムネストラはアイギストスを夫にし、エレクトラを日々、虐待している。エレクトラは父アガメムノンの死を今でも嘆いている。父の復讐を果たし、行方不明のオレステスが戻ってくるよう神々に祈る。
 そこに、ミケーネの女性たちがやってくる。彼女たちは、アガメムノンの死を嘆き続けてもアガメムノンは戻ってこないのだから、嘆くのはもうやめよ、とエレクトラを慰めようとする。だが、エレクトラは嘆き悲しむ。しかも、アガメムノンを殺害したクリュタイムネストラらのもとで、奴隷のように暮らさなければならない現状をも悲しむ。

 そこに、エレクトラの姉のクリソテミスがやってくる。クリソテミスはエレクトラに、そのように嘆くのをやめるよう促す。嘆きを公に示すことは無駄であるどころか、アイギストスらを怒らせてしまう。

 アイギストスはエレクトラがこのまま泣き叫ぶようなら、エレクトラを離れた場所に閉じ込めるつもりである。クリソテミスはそのようにエレクトラに告げる。だが、エレクトラはそれでもアガメムノンを追憶し続けるという。

 クリソテミスはエレクトラに、供物を捧げに行こうとしているという。その理由として、クリュタイムネストラが見た夢について述べる。アガメムノンがクリュタイムネストラの夢にでてきて、王錫で床を炊くと、大きな木が生えてきてミケーネの地を覆ったという。クリュタイムネストラはこれを不吉な夢とみなした。そこで、クリソテミスに、アガメムノンの墓に供物を捧げにいかせるところである。
 これを聞いて、エレクトラはクリソテミスはそのような忌々しい供物をやめるよう促す。そのかわりに、自分たち自身の供物をを父に捧げるよう勧める。クリソテミスは同意し、立ち去る。

 そこに、クリュタイムネストラがやってくる。彼女はエレクトラが外でアガメムノンの死を傷んでいるのをみて、叱責する。エレクトラはアガメムノンの殺害について、彼女と言い合いになる。
 クリュタイムネストラは、アガメムノンがトロイア戦争の際に娘を生贄にしたので、アガメムノンの殺害が正しい行為だったと正当化する。エレクトラは生贄が必要だったと反論する。

 さらに、エレクトラはアイギストスへのクリュタイムネストラの欲望がアガメムノン殺しの理由だったと断じる。さらに、アガメムノンを排除することによって、ミケーネを自分だけで支配しようと目論んだのだとして、クリュタイムネストラを糾弾する。
 クリュタイムネストラはエレクトラを忌々しく感じながら、敵に災いが降りかかるようアポロンに祈りを捧げる。特に、息子のオレステスが死ぬことで、クリュタイムネストラが平穏に生きていけるよう祈る。

 そこに、上述のオレステスの老奴隷が使者としてやってくる。オレステスが競技大会で悲惨な死を迎えたと彼女たちに告げる。クリュタイムネストラは祈りが通じたとして喜ぶ。だが、エレクトラは悲しみに打ちのめされる。クリュタイムネストラは老奴隷を宮殿の中に招き入れる。

 エレクトラが泣き叫んでいるところに、クリソテミスが喜んで戻ってくる。彼女はアガメムノンの墓に、新しい供え物を発見したからである。クリソテミスはエレクトラに、オレステスがそれを捧げたに違いないという。だが、エレクトラは老奴隷の方向を聞いていたので、オレステスがもう死んでしまったという。
 さらに、エレクトラはもうオレステスが死んだので、自分たちでアイギストスに復讐しなければならないという。クリソテミスはそれが無謀であり不可能だという。だが、エレクトラは諦められないという。クリソテミスはその場を立ち去る。

 そこに、オレステスが変装してやってくる。オレステスの遺骨が入ったとされるツボを持参している。エレクトラはそれを抱きかかえ、悲嘆に暮れる。涙が止まらない。オレステスはエレクトラの悲しみを見て、真実を告げる。

 これはオレステスの骨ではない、と。驚くエレクトラにたいし、アガメムノンの刻印が刻まれた指輪を見せる。エレクトラは彼がオレステスだと気づき、大いに喜ぶ。相変わらず、涙が止まらない。

 エレクトラはオレステスに、喜びの涙が止まらないのだという。オレステスは自分にとんでもないことをしてくれたものだ、と笑って言う。クリュタイムネストラがこの光景を遠くからみても、悲しくて泣いていると勘違いするだろうが。
 老奴隷が宮殿から出てきて、クリュタイムネストラが今なら一人きりだと告げる。彼らはいざ、宮殿に入る。
 エレクトラは宮殿の外で、アイギストスがやってこないか見張りをする。中では、クリュタイムネストラがオレステスに命乞いをする。だが、オレステスは復讐を遂げる。オレステスは外にでてきて、成し遂げたと報告する。すると、遠くからアイギストスがやってこようとしている。オレステスらは宮殿に中に入る。
 
 アイギストスがやってくると、宮殿の外でエレクトラが応対する。アイギストスは、オレステスの死を告げる使者はどこかと尋ねる。エレクトラは、彼らが宮殿の中にいるという。
 アイギストスは、ミケーネのすべての人々がオレステスの遺体を見ることができるよう、宮殿の扉を開けるよう命じる。宮殿の扉が開く。オレステスは布で覆われたクリュタイムネストラの遺体を抱えて出てくる。
 アイギストスはその遺体を調べ始める。アイギストスはエレクトラに、クリュタイムネストラを呼びに行くよう命じる。エレクトラはクリュタイムネストラが目の前にいるので、その必要がないと答える。
 アイギストスは驚く。そして、自分が仲間もおらずに閉じ込められていることに気づく。オレステスは彼に、自分の正体を明かす。アイギストスは彼に命乞いをする。

オレステスとアイギストス

エレクトラはすぐにアイギストスを殺すよう、オレステスにいう。オレステスはアイギストスを、かつてアガメムノンが殺された場所へと連れて行く。そこで復讐を遂げる。

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おすすめ参考文献

ソフォクレス『ギリシア悲劇 2 ソポクレス』松平 千秋訳, 筑摩書房, 1986

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