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エディス・ウォートンの『歓楽の家』:アメリカの社交界で堕ちていく女性の物語

 『歓楽の家』はアメリカの作家イーディス・ウォートンの小説。 1905年に公刊された。

エディス・ウォートンの『歓楽の家』(The House of Mirth)のあらすじ

 舞台はアメリカである。美しく魅力的な女性リリー・バートは29歳になった。リリーは両親をなくし、裕福な叔母のペニストン夫人のもとで暮らしている。リリーは裕福な男性と結婚したいと思ってきた。だが、これまでなかなか相手が決まらなかった。29歳という年齢になり、その望みが次第に薄くなりつつある。
 弁護士のセルデンはリリーに惹かれている。リリーをアパートに招待し、そこでひとときを過ごす。二人はベロモントという郊外でトレナーによって開催される社交の場によく参加している。そこでは、ニューヨークなどの上流社会の面々がしばしば顔を出している。だが、リリーらはこれに退屈している。
 リリーはセルデンのアパートから帰るときに、裕福な男性サイモン・ローズデールと出会う。だが、その傲慢な態度を嫌う。
 リリーはベロモントの社交会に参加する。セルデンが気になっていたが、セルデンにはバーサ・ドーセットという他の女性も惹かれていた。そのため、恋敵がいることに気づく。リリーはセルデンと話をするうちに、彼が十分に金持ちではないことを知る。セルデンを結婚候補から外す。
 他方で、この社交会では参加者が金銭を賭けてトランプをしている。リリーはこれにハマっており、ギャンブル依存症ともいえる状態にあった。リリーは他の男性との婚約を狙おうとする。だが、バーサがリリーのギャンブル依存をその弾性に漏らし、婚約は失敗する。

 リリーはこの社交会で株式市場のことを知り、投資に携わりたいと思うようになる。トレナーに資金提供を頼む。トレナーはリリーに惹かれていたので、承諾する。
 リリーはセルデンへのパーサの手紙をひょんなことから入手する。他方で、いとこを社交会リストから外す。これがいとこに知られて、怒らせる。いとこはリリーがトレナーから金を受け取り、彼の不倫相手になっているとペニストン夫人に讒訴する。
 その間に、リリーの投資は成功する。リリーは大金を得たと喜び、生活ぶりが派手になり、浪費が増える。だが、実はトレナーはリリーのお金ではなく自分のお金で投資していた。それで設けたお金をリリーに渡していた。リリーの投資で得たお金だと偽りながら。よって、リリーはトレナーのお金を浪費していたことを知らされる。
 トレナーはリリーに不貞関係を求め始める。トレナーの妻はリリーと夫の金銭問題に気づき、リリーをベロモントの社交会から締め出す。
 リリーは他の夫妻の開催する社交会に参加する。そこにはセルデンも参加する。セルデンはリリーに愛を告白するが、リリーは断る。
 翌日、リリーはトレナーと会う。トレナーはリリーに、肉体関係によって上述の金を返済してもらってもよいと迫る。リリーはこれを拒絶し、その場を去る。リリーはなんらかの方法でこの金を返済しようと考える。
 リリーは上述のローズデールからプロポーズを受けるが、断る。セルデンに会おうとするが、セルデンがヨーロッパに旅立っていたことを知る。ジョージとバーサ・ドーセットに地中海クルーズに誘われたので、承諾する。
 地中海クルーズでは、バーサが若い男のネッドと不倫している。ジョージに気づかれないようにするために、リリーはジョージの気を逸らすために連れてこられたと気づく。リリーはクルーズに参加していたヨーロッパの上流階級に気に入られ、バーサの嫉妬をうむ。
 バーサはリリーがジョージと不倫関係にあるという噂を流し始める。リリーはアメリカに戻る。リリーの評判は悪化し、多くの友人知人から関係を絶たれる。
 裕福な叔母のペニストン夫人がなくなる。それまでの噂を耳にしたため、叔母はリリーに1万ドルしか相続させなかった。リリーはこれでトレナーへの借金を返済できるが、それ以上ではない。しかも、相続には1年間ほどかかることになる。
 その間、リリーは社交会への復帰を模索するが、うまくいかない。生計を立てるために、秘書として働き始める。だが、また不貞関係を疑われるのを恐れ、辞職する。帽子職人として働き始める。だが、借金が増えていく。
 リリーは様々な不安に襲われ、不眠症になる。睡眠薬を飲み始める。リリーはローズデールとの結婚によってこの窮地を乗り越えようかと考え、彼に連絡する。だが、これも思いとどまる。
 リリーはセルデンを訪れる。二人の関係は進展しないまま、リリーは帰宅する。セルデンはまだリリーに恋していると自覚し、翌日リリーを訪ねる。リリーは叔母の遺産を受け取り、トレナーへの借金を返していた。その後、睡眠薬を過剰摂取した。セルデンが訪ねた時、リリーは息を引き取っていた。

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おすすめ参考文献

ウォートン『歓楽の家』佐々木みよ子訳、荒地出版社、1995年

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