『幽霊』はノルウェーの代表的な劇作家イプセンの作品である。1881年に制作された。安楽死や近親相姦などのセンセーショナルなテーマを扱う作品である。
ヘンリック・イプセンの『幽霊』のあらすじ
舞台はアルヴィング家の屋敷である。ここには、レジーナが召使として働いている。その父親のジェイコブがレジーナを訪問する。
ジェイコブは孤児院の建設に携わっていた。これはアルヴィング家の夫が近頃亡くなったことを偲んでつくられたものだ。この孤児院がほぼ完成した。
ジェイコブは自分自身で船乗りのための店を開こうとしている。レジーナを訪れたのは、彼女にこの店で働いてもらうためだ。だが、レジーナは船乗りの店で働くより、上流社会のもとで働きたいと思う。よって、父の依頼を断る。ジェイコブが立ち去る。
ジェイコブのビジネス仲間でもあるマンダーズ牧師がやってくる。牧師はレジーナに、父の仕事を手伝うよう説得する。だが、レジーナは断る。むしろ、上流社会での仕事の斡旋を彼に頼もうとする。
アルヴィング家の夫人ヘレンがやってくる。ヘレンは牧師と、孤児院の開所式について話し合う。また、孤児院に保険をかけるべきかで話し合う。宗教的施設でもある孤児院に保険をかけるのは信仰心に反すると思われるかもしれない。そう思い、牧師は保険をかけるのに消極的である。二人は保険を書けないことに決める。
アルヴィング夫人の息子オズワルドがやってくる。オズワルドは長らくヨーロッパで生活し、芸術家として働いてきた。仕事仲間が婚外で子供をうんだことについて、オズワルドと牧師は言い争いになる。オズワルドは結婚にしばられない自由な恋愛を支持する。
オズワルドが立ち去る。結婚を宗教儀式でもあると考える牧師は、オズワルドの自由恋愛の考えに腹を立てている。ヘレンにたいし,オズワルドの教育が失敗だと怒りをぶつける。
牧師はヘレンに、かつてのヘレンの行いについても語る。ヘレンの夫はかつて不倫をした。ヘレンはそのために、一時、夫のもとを去った。牧師はヘレンに考え直すよう説得し、二人を和解させたのだった。
ヘレンは戻った後も、問題が続いていたことを牧師に語る。夫は召使ジョアンナとの間に子供をつくったのだ。この裏切り行為ゆえに、ヘレンはオズワルドを夫から遠ざけようと決め、ヨーロッパに送り出した、と。さらに、夫とジョアンナの子供とはレジーナのことだと打ち明ける。
夕食の準備をしているとき、ヘレンと牧師はオズワルドがレジーナに言い寄っているのに気づく。オズワルドとレジーナは腹違いの兄妹だが、二人はその事実をまだ知らない。
夕食後、牧師とヘレンはレジーナとオズワルドの関係をどうすべきか話し合う。二人が兄妹であることをオズワルドたちに打ち明けるべきか話し合う。牧師はこれについて否定的である。このことが明らかになれば、亡き夫の名誉が傷つくためだ、と。
だが、ヘレンは牧師の説得に応じて夫のもとに戻ったことを後悔している。それでも、二人はレジーナをオズワルドから遠ざけることで一致する。
そのとき、ジェイコブがやってくる。牧師はジェイコブにレジーナの一件を黙っていたことを叱責する。ジェイコブはジョアンナのために黙っていたと答える。ジェイコブは孤児院の開所のために祈りの儀式を行うよう、牧師に頼む。二人は孤児院へ移動する。
ヘレンはオズワルドを呼び、話し合う。オズワルドは自分が自由な女性関係の結果として、梅毒にかかったことを母に告げる。しかも、この病気はかなり悪化している、と。それでも、レジーナにアプローチしたいという。
そこに、レジーナがやってくる。ヘレンは二人に兄妹であるという事実を打ち明けようかと考える。だがそのとき、孤児院で家事が起こる。三人は退避する。
ジェイコブと牧師らは孤児院が焼け落ちたという。火事の原因について話し合う。ジェイコブは牧師に原因があると説得し始める。牧師は孤児院に保険をかけないようヘレンを説得したのを思い出し、後悔する。
牧師は自身の評判が下がるのを恐れる。そこで、ジェイコブが火事の原因だったことにする代わりに、孤児院のための残りの資金をジェイコブの新しいお店のために提供することを決める。これはジェイコブの望み通りのことだった。二人は立ち去る。
オズワルドがやってくる。ヘレンはオズワルドとレジーナに、兄妹という事実をついに打ち明ける。レジーナは動揺するとともに、これまで騙されてきたと思い、旅立つことを決める。
ヘレンとオズワルドは二人きりになる。オズワルドは自身の梅毒がもう取り返しのつかないほどひどくなったという。モルヒネによって命を絶つつもりだ。発作が起きたら、レジーナにそれを手伝ってもらうつもりだった。だが、レジーナは去った。そこで、母に手伝ってほしいと頼む。
ヘレンはショックを受ける。だが、しぶしぶ同意する。二人は静かに、日が昇るのを見ている。ついにオズワルドが発作を起こし始める。ヘレンはモルヒネを探しながら、息子の願いをかなえるべきか思い悩む。
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おすすめ参考文献
イプセン『イプセン戯曲選集』毛利 三彌訳、東海大学、1997年