『野鴨』はノルウェーの代表的な劇作家イプセンの作品。1884年に制作された。
イプセンの『野鴨』(Vildanden)のあらすじ
物語はハコンヴェルレの邸宅から始まる。彼は裕福な商人である。息子のグレガースが久々に帰ってきたので、晩餐会をひらいている。
そこに、グレガースの友人ヤルマール・エクダールが訪れる。エクダールの父はかつてはコン・ヴェルレとビジネス・パートナーでもあったが、スキャンダルで失墜した。その悪い影響を息子のヤルマールも被っていた。
ヤルマールはジーナと結婚している。ジーナはハコンの召使をしていたことがある。ハコンの妻は没する前に、ハコンがジーナと不倫していたと思っていた。それをグレガースに伝えていた。
ハコンはヤルマールに写真の仕事と住居を与えていた。そのため、ヤルマールとジーナの結婚はハコンのおかげでもあった。グレガースはこのような状況を知る。
グレガースはジーナとの不倫で父ハコンを責める。ハコンは別の女性と結婚するつもりで、グレガースに同意してもらいたいと語る。グレガースは再び家を出ると決める。
ヤルマールのアパートで、ヤルマールはジーナと14歳の娘ヘドヴィグと仲良く暮らしている。夫婦は一緒に写真の仕事を行っている。そこに、グレガースがやってくる。彼はヘドヴィグが失明しつつあることを知る。
ヤルマールの父エクダル老人は彼らと同居している。老人はグレガースを屋根裏部屋に案内する。そこには、ウサギや鳩などとともに、野鴨が飼育されている。特に、野鴨はかつてハコンが狩猟で得たものを引き取って、ヘドヴィグが可愛がっている。
ヤルマールの家には、空き部屋があった。グレガースは彼らと一緒に暮らすと決める
グレガースはヤルマール家の奇妙な生活を目にすることになる。ヤルマールと妻は自宅で写真のしごとをしている。ヘドヴィグは目の病気のために学校に通っていない。かわりに、エクダル老人らと時間を過ごしている。
グレガースがヘドヴィグと話していると、突然、屋根裏から銃声が聞こえる。かつて狩猟好きだったエクダル老人がそこで「狩猟をしている」ようだ。
グレガースはヤルマールと話す。ヤルマールは偉大な発明にとりかかっており、これが一家の財政を立て直す手段なのだと語る。だが、まだ完成には時間がかかるので、内容は説明できない、と。
昼食をとる。グレガースとヤルマール以外に訪問着が来る。ハコンもやってきて、グレガースに家に戻ってくるよう促す。だが、グレガースは、ヤルマールに真実を話すという。ハコンは立ち去る。
グレガースはヤルマールと散歩に行き、かつてのジーナとハコンの情事について知らせる。二人は帰宅する。
ヤルマールはジーナとヘドヴィグから距離をとるようになる。ヤルマールは発明から写真の仕事に移り、ジーナには手伝わせないと言う。もはや屋根裏部屋には入らない。ヘドヴィグのかわいがっている野鴨も処分したい、と。
ヤルマールはジーナに、ハコンとの関係を問い詰める。ジーナはハコンとの情事を認めるが、ヤルマールを愛していると弁明する。
グレガースやヘドヴィグが入ってくる。ヘドヴィグはハコンから誕生日プレゼントを受け取っていた。また、ハコンが別の召使の女性と結婚すると知らされる。
ハコンはエクダル老人に年金を与えており、これが老人の死後にはヤルマールに継承されることも知る。グレガースはハコンがヤルマールを買収しようとしていると言う。ヤルマールはジーナに、ヘドヴィグは自分の子かと尋ねる。ジーナはわからないと答える。
ヤルマールは自宅にいるのが嫌になり、家を飛び出す。ヘドヴィグは父の愛情が失われていくのを感じ、その原因を考える。
グレガースはヘドヴィグを慰める。ヘドヴィグは、ヤルマールが野鴨のようにもっと自分を愛してくれるよう望む。グレガースは、父親の愛を取り戻すために、ヘドヴィグに大切なものを犠牲にするようすすめる。
翌朝、ヤルマールは飲み歩いて帰ってきて、ソファで寝ている。起きてきて、部屋に入ってくる。ジーナと会話し、父をつれて出ていくつもりだと話す。ヘドヴィグが入ってくる。ヤルマールは再びヘドヴィグのことも拒絶する。ヘドヴィグはピストルをもって屋根裏部屋にいく。
ヤルマールは朝食をとりはじめる。ジーナと今後について話す。その時、屋根裏部屋で銃声が響く。グレガースはヘドヴィグがヤルマールの愛情を取り戻すために、愛する野鴨を犠牲にしたのだという。
ヤルマールは屋根裏部屋のドアを開ける。そこで死んでいたのは、野鴨ではなくヘドヴィグだった。ヤルマールは後悔の念に駆られる。グレガースはへドヴィグの死によって、ヤルマールが人として再起できたと考える。