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ジェームズ・マディソン:憲法論争と大統領としての貢献

 ジェームズ・マディソンはアメリカの政治家(1751ー1836 )。アメリカ合衆国の建国期に、『ザ・フェデラリスト』を公刊して合衆国憲法の制定で重要な役割を演じた。1809 ー17 年には、第 4 代のアメリカ大統領もつとめた。

マディソン(James Madison)の生涯

 マディソンはイギリスの北米植民地だったヴァージニアで地主の家庭に生まれた。プリンストン大学で学び、1771年に卒業した。若い頃から、イギリスに反対する政治活動に参加していた。

 政治家としての活躍:ヴァージニア信教自由法

 この時期、アメリカ合衆国はまだ存在していなかった。当時はまだ、イギリスの北米植民地だった。だが、ボストン虐殺事件やボストン茶会事件が起こり、北米植民地ではイギリスへの反発が強まっていった。

 1775年、ついにアメリカ独立革命が始まった。同年、マディソンは地元のオレンジ郡の安全委員会に選出された。ここから、政治家としてのキャリアが始まった。
 1776年、ヴァージニア議会の議員に選出された。1780年からは、大陸会議のメンバーとなった。

 1781年からは、マディソンはヴァージニア州議会でも活躍した。特に、ジェファソンが起草したヴァージニア信教自由法をヴァージニア州議会で可決させるために尽力し、1786年に無事可決させた。
 これは、アメリカ合衆国で最初に政教分離を定めた法律として重要視されている。
 それまで、イギリスでは英国教会が国教として特権的地位を占めており、独立したばかりのアメリカ合衆国でも同様の流れになりそうであった。それを阻止し、政教分離を果たしたのがこの法律だった。

合衆国憲法をめぐる論争

 1783年、アメリカ独立戦争が終結し、アメリカ合衆国が独立を果たした。だが、生まれたばかりのアメリカは自分たちの国のかたちを模索しており、人々の間で議論が激しくかわされた。
 そのような中で、1787年、マディソンは合衆国憲法制定会議のメンバーとなり、新たな憲法の制定と批准に尽力した。その一環として、ハミルトンらとともに、『ザ・フェデラリスト』を公刊した。
 これはアメリカ合衆国に強力な連邦政府を設立しようとする新しい合衆国憲法を擁護する論説集である。当初は80篇近くの論説がニューヨークの新聞で次々と発表された。
 1788年、そのうちのほとんどを『ザ・フェデラリスト』という単行本として公刊した。本書が世論に大きな影響を与え、新たな合衆国憲法も無事に批准された。

『ザ・フェデラリスト』での議論

 なぜアメリカ合衆国に強力な連邦政府を設立すべきなのか。マディソンは、そうしなければ、アメリカの国益が各州政府によって損なわれてしまうからだと論じた。
 当時、アメリカ合衆国を構成するそれぞれの州は、大きな権限をもっていた。反対に、まだ合衆国全体の政治をつかさどる連邦政府が確立していなかった。

 マディソンによれば、各州の州議会議員は偏狭で、非常に短期的な利害に基づいて行動してしまう。合衆国の利益に反するとしても、自身の州の短期的な利害のために、行動してしまう。

 たとえば、貨幣を独自に過剰に発行してインフレを起こしたり、他国と勝手に条約を結ぶ。合衆国の防衛のためにしかるべき資金を提供しない。他の州より優位に立とうとして行動し、結果として外国が漁夫の利を得てしまう。
 このような州の短絡的な行動が合衆国の国益を損なわないようにすべく、強力な連邦政府が必要である、とマディソンは論じた。

 中央の政界での活躍

 1789年には、マディソンは連邦議会の下院議員となった。ジェファソンらの共和派の主導者となった。
 1801年、ジェファソンが第三代アメリカ大統領に選出された。マディソンは彼の右腕として、国務長官を1808年までつとめた。共和派は合衆国での民主主義の進展を後押しした。

 大統領へ

 1808年、マディソンは大統領選挙で勝利した。1809年、第四代大統領に就任した。当時、アメリカ合衆国の領土は北米大陸の東海岸付近を中心とした限られたものだった。マディソンは自国領土を西へ拡大する施策を実行していった。
 その際に、イギリスが障害となっていた。また、イギリスはフランスとのナポレオン戦争により、アメリカとの貿易で問題を抱えていた。
 これらの原因によって、1812年から、英米戦争が開始された。1815年に終結したとき、アメリカが勝利したと各国に認識された。

 その後、マディソンは保護関税を導入したり、第二合衆国銀行を創設したりして、国内の経済を発展させていった。1817年、大統領の二期目の任期を満了した。それとともに、政界を引退した。

マディソンと縁のある人物

●アメリカ独立革命:当時イギリスの北米植民地だった13の州が本国のイギリス相手に行った戦争(1775−1783)。植民地側が勝利し、パリ条約を経て独立を承認され、アメリカ合衆国が成立した。アメリカ独立戦争とも呼ばれる。そもそも、独立革命はなぜ起こり、どのように展開したのか。
アメリカ独立戦争の記事をよむ

●アレクサンダー・ハミルトン:建国期のアメリカの政治家。『ザ・フェデラリスト』を公刊し、合衆国憲法の成立に尽力した。財務長官をつとめ、国立銀行を設立するなどして、幅広く活躍した。
ハミルトンの記事をよむ

●トマス・ジェファーソン:アメリカの政治家。アメリカ独立戦争に際して、独立宣言を起草するなどして大いに活躍した。独立後は、第三代大統領をつとめた
ジェファソンの記事をよむ

マディソンの肖像画

ジェームズ・マディソン 利用条件はウェブサイトで確認

マディソンの主な著作・作品

『ザ・フェデラリスト』(1787ー88)

おすすめ参考文献

西川秀和『ジェームズ・マディソン伝記事典』大学教育出版, 2016

Jeff Broadwater, Jefferson, Madison, and the making of the Constitution, University of North Carolina Press, 2019

Jack N. Rakove, A politician thinking : the creative mind of James Madison, University of Oklahoma Press, 2017

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