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シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』

 『ジュリアス・シーザー』はイギリスの代表的な劇作家シェイクスピアの悲劇。1599年頃に制作された。古代ローマのユリウス・カエサルの暗殺をめぐる物語 。

 『ジュリアス・シーザー』(Julius Caesar )のあらすじ

 この物語の舞台は古代ローマである。ジュリアス・シーザー(ユリウス・カエサル)がライバルのポンペイウスと戦い勝利したところから、物語が始まる。
 シーザーはローマに凱旋して戻って来る。市民がシーザーを歓呼の声で迎え入れる。護民官たちは市民たちの光景をみて、嘆く。シーザーは新たな戦利品を得たわけではなく、ポンペイウスはかつて優れた統治者として称賛されていたではないか、と。
 シーザーが群衆の中を練り歩いていたとき、占い師が彼に「3月15日には気をつけろ」と警告する。だが、シーザーはそれを無視する。
 シーザーには、ブルータスとカシウスという友人がいる。ブルータスは特に親友である。だが、シーザーが今回の勝利で勢いを得て、ローマの王になろうとしているのではないかと危惧する。そうなれば、ローマは共和政から王政に変わる。
 ブルータスは共和政の価値を信奉する共和主義d者であるため、シーザーが王になるのを止めなければと思っている。そのことをカシウスに語ると、カシウスはシーザーへの批判を行う。
 カスカは言う。シーザーがアントニウスに王冠を三度渡されたが、それを断ったと告げる。だが、三度目はまんざらではない様子だった、とも。

 その後、カシウスはカスカと嵐の中で出会う。嵐はローマの不吉の前兆だと思われる。カスカは翌日に元老院がシーザーに王として戴冠する予定だという。カシウスはこれを聞いて憤慨する。最も有徳なローマ人の手で、この事態を食い止めようと決心する。それはいかに危険であろうと、名誉ある行為だと考えている。
 カシウスはブルータスをこの陰謀に参加させようとする。シーザーを非難する手紙を彼の家に投げ込むよう手配する。

 ブルータスはカシウスの陰謀を知り、眠れない夜を過ごす。翌日、カシウスらがブルータスを訪ねる。ブルータスはシーザーの暗殺以外に、解決策はないと自分に言い聞かせている。カシウスはブルータスとシーザー暗殺について話し合う。翌日に決行することを決める。翌日は3月15日である。カシウスらは立ち去る。
 ブルータスの妻ポーシャはブルータスに、何をしようとしているのか教えるよう求める。ブルータスはあとで教えると約束する。
 他方、シーザーもまた不安を感じている。妻のカルプルニアはシーザーが殺される夢を見たため、シーザーに元老院には行かないよう求める。シーザーは大丈夫だと妻を説得しようとしたが、妻に同意して家に留まることにする。
 そこに、陰謀者の一人テキウスがやってくる。テキウスはシーザーに、元老院で戴冠式が行われると伝える。シーザーが家にとどまろうとする理由を聞いて、それでは臆病者だと思われるので、元老院に行くべきだと説得する。シーザーは同意し、出発する。ブルータスらは元老院に向かう。

 シーザーが元老院に到着する。シーザーはその日が3月15日だと知りながら、中に入る。陰謀者たちはシーザーを取り囲み、恭順するふりをして、彼の前でひざまずく。だが、一気にシーザーを刺し殺す。最後にブルータスが一撃を加える。シーザーは「ブルータス、お前もか」と言い残して、死ぬ。

 ブルータスらは祖国からシーザーの暴政から自由になったことを喜ぶ。そこに、逃げていたアントニウスが戻って来る。アントニウスはブルータスらと和解するふりをし、信用される。
 ブルータスは、シーザーの葬儀で群衆に話すつもりだとアントニーに告げる。アントニーはこれを聞いて、自分も話したいと申し出て、認められる。
 ブルータスらは立ち去る。アントニウスはシーザーの遺体の前で悲しみに暮れ、復讐を誓う。シーザーの甥のオクタヴィアヌスがローマに向かっていると聞く。アントニウスは彼と共闘することに決める。

 シーザーの葬儀で、ブルータスはローマのためにシーザーを殺す必要があったと民衆の理性に訴える。最初、民衆は賛成の声を上げる。しかし、アントニーが民衆に演説すると、彼は感情的な演説を行い、シーザーを悲しませ、皮肉にもブルータスを「名誉ある」と称賛する。アントニーがシーザーの遺言を読み上げて演説を終える頃には、ブルータスは民衆を復讐心に燃えた反乱へと駆り立て、ブルータスとカッシウスはローマから逃げ去っていた。
 シーザーの葬儀が始まる。ブルータスはシーザー暗殺の理由を民衆に説明する。シーザーはローマで暴君になろうとしていた。よって、シーザーが死んで我々が自由になるか、シーザーが生きて我々が奴隷になるか、二者択一だった、と。ローマの自由のための暗殺だと説明し、民衆を納得させる。
 次に、アントニウスがシーザーの遺体を持って入ってくる。ブルータスと対照的に、彼は感情を込めて群衆に訴える。シーザーを賛美し、シーザーがローマ人に金と土地を残した偉大な人物だと訴える。民衆の復讐心を駆り立てるのに成功する。ブルータスらはその場から逃亡する。
 民衆は暴徒化し、陰謀家のグループを捕まえて殺そうとする。人違いで殺されるケースもでてくる。

 オクタヴィアヌスとレピドゥスがローマに到着し、アントニウスと合流する。シーザーの復讐のために、出陣の準備を進める。
 他方、ブルータスらも戦争の準備をする。だが、ブルータスとカッシウスの関係は悪化していた。カシウスがブルータスと口論になる。これがエスカレートし、カシウスはブルータスに自分を殺せと言う。ブルータスは冷静になり、二人は和解する。
 ブルータスは妻ポーシャが自殺したので、気分を害していたのだと釈明する。妻はオクタヴィアヌスらの勢力増大をみて、自殺していた。
 ブルータスとカシウスは戦争の計画で話し合う。ブルータスは自陣まで待って、敵を迎え撃つと主張する。カシウスはもっと前線で戦おうという。だが、ブルータスはそれを退ける。カシウスが立ち去る。
 シーザーの亡霊がブルータスを訪れる。フィリッピで会おうと言って、消える。ブルータスはフィリッピへの出軍を決める。

ブルータスとシーザーの亡霊

 フィリッピに、両軍が到着する。オクタヴィアヌスとアントニウスはブルータスとカッシウスと顔を合わせ、罵り合う。両者が別れる。
 カッシウスは弱気になっている。不吉な前兆を信じるような人物ではなかったが、信じかけるほどである。ブルータスと、敗北したらどうなるか話し合う。二人は別れを告げ、それぞれ戦場に向かう。

 カッシウスはアントニウスの軍と戦う。劣勢にあるが、戦局は確定的ではない。だが、カッシウスは負けが決まると思い込み、自身を刺し殺すよう仲間に頼む。かつてシーザーを殺した短剣を渡して、その短剣で自身を刺殺してもらう。ほかのメンバーも自殺する。
 ブルータスがそこにやってくる。カシウスの死をいたみ、シーザーの亡霊のせいだと考える。
 ブルータスは戦いを続ける。アントニウス軍が優勢となる。ほかの陰謀者たちが捕まるか、殺される。
 ブルータスはいよいよ敗北を悟り、自分の死ぬ時が来たと考える。ブルータスは味方の塀に別れを告げる。剣で自害する。
 そこに、アントニウスとオクタヴィアヌスがやってくる。ブルータスの遺体を見て、ブルータスを有徳な人物として称賛する。陰謀家たちはシーザーを妬んで殺したが、ブルータスだけは違った、と。ブルータスを丁重に埋葬すると決める。

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シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』河合 祥一郎訳, 角川文庫, 2023

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