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ネルソン・マンデラの自伝『自由への長い道』

 ネルソン・マンデラは世界的に有名な南アフリカの大統領です。彼は2つの自伝を表した。『自由への長い道』はその一つで、世界中の多くの人たちに感動と希望を与えてきました。この記事では、その内容や意義を紹介します。

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『自由への長い道』(Long Walk to Freedom)とは

著者はどんな人?

 ネルソン・マンデラは1918年に南アフリカの部族で生まれた人物です。南アフリカ政府が人種差別的なアパルトヘイト政策を行うのにたいして、黒人などの国民が反対していました。
 マンデラはその廃止などのために活動し、逮捕されました。20年以上、投獄されます。その後、釈放され、アパルトヘイトを廃止させた功績で知られています。ノーベル平和賞を得て、南アフリカを民主化させ、大統領にもなった人です。

本書の内容

 本書はマンデラが投獄されていた時期に執筆し始め、大統領になってから完成させたものです。マンデラの幼少時代から大統領時代までの自伝です。
 マンデラは幼少期の部族での生活から、都市での大学生活をへて、弁護士になります。同時に、南アフリカの民族運動に深く関わっていき、その関係で逮捕されます。
 上述のように、20年以上、投獄されます。彼の刑罰は当初、終身刑でした。すなわち、若くして投獄されたマンデラは、死ぬまで刑務所暮らしの運命にありました。
 このような絶望的な中で、マンデラは自分自身を見つめ直します。同時に、刑務所の外での出来事の情報をしっかり収集し続けます。国内ニュースだけでなく、国際ニュースをも収集し、しっかりと時代についていこうとします。
 マンデラは内省によって、自分自身を変革し、成長していきます。
 この頃、時代が大きく変わっていきます。第二次世界大戦後、アフリカの植民地が西洋諸国から独立していきます。国際社会は南アフリカのアパルトヘイト政策に厳しく対処していきます。同時に、国内でのアパルトヘイト反対運動が活発になります。
 マンデラはこのような情勢の中で、アパルトヘイトと戦う人物として、世界的に注目を浴びていきます。海外から取材を受けることもありました。
 国際的圧力の中で、南アフリカ政府はアパルトヘイトの見直しに着手します。この流れで、マンデラはついに、1990年に釈放されます。
 そこから、マンデラはアパルトヘイト廃止や南アフリカの民主化などのために精力的に活動します。有力な政治家として躍進していきます。
 1993年には、南アフリカで最初の民主的選挙を実現させます。マンデラの政党はこれに勝利し、1994年、マンデラは大統領になるのです。

 本書はこのようなマンデラの人生の大部分をマンデラの視点で語っています。

本書から、なにが得られるか:その意義

 20世紀のマンデラという個人の並外れた偉業の物語を知ることができる

 本書は20年以上の投獄生活でも希望を失わず、アパルトヘイト廃止や南アフリカの民主化という大事業を成し遂げた人物の自伝です。
 その功績自体が並外れているだけでなく、もともとは終身刑という絶望の末にそれを成し遂げたところに、マンデラの感動的な物語のエッセンスがあります。
 マンデラは終身刑として獄中にあったとき、なにを考えたのでしょうか。自分自身のこれまでの行動を見つめ直し、どこに問題を見出して、どう改善すべきだと気づいたのでしょうか。
 マンデラが絶望的な状況の中でもお、自己を見つめ直し、改善し、出所後には祖国を変えていく。南アフリカのために貢献するだけでなく、アフリカや世界の人権のために活動していく。
 逆境に負けない人間としての尊厳、逆境を克服する勝利、人権のための闘いがみてとれます。そのような人間ドラマを読むことができます。

 現代の人種主義への闘いや人権のための闘いの記録を知ることができる

 本書において、マンデラ自身の問題が、実は南アフリカという国家の問題とも深く結びついていたと示されています。マンデラ自身の成長と改善が、祖国の改善や解放につながっていくのです。
 そのため、マンデラという個人の物語は、祖国の人種政策の廃止や民主化、アフリカや世界の人権のための闘いの大きな物語と密接に連動していきます。いわば、マンデラは現代のアフリカで大きな使命を背負った人物として描かれます。
 上述のように、本書は自伝としてドキュメンタリーの側面をもちます。同時に、マンデラが人種主義や人権の闘いのために利用した道具でもあります。
 マンデラは本書において、理想的な責任ある市民像の模範となっています。本書の読者にたいして、マンデラを模倣して、彼ら自身も優れた市民になるよう促しています。
 本書の出版当時、マンデラは南アフリカの民主化のために闘っていました。民主主義を機能させるためには、市民がそのための責任を自覚して、そのために行動することが必要です。
 マンデラは本書によって、そのような市民を育て上げようとしました。本書はそれゆえ教養小説でもあります。実のところ、本書には、子供向けのマンガ版(コミック)も存在します。これはマンデラが公認したものです。
 本書を読むことで、マンデラがどのようにして現代の人種主義と闘い、人権や民主主義のために闘ったかを見て取ることができます。よって、本書は現代におけるこれらの重大なテーマについて知る重要な史料でもあります。
 本書を読むことで、マンデラ自身の個人的偉業がどのようなものかだけでなく、南アフリカやアフリカ大陸そして世界の人種主義や人権などの闘いのあり方を知ることができるのです。

 かつてのアメリカ大統領バラク・オバマは本書を「歴史を理解し、そして歴史を変えたい人にとって必読の書」と称賛しています。

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おすすめ参考文献

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Herwitz , Daniel. Race and Reconciliation: Essays from the New South Africa . Ann Arbor : University of Michigan Press , 2003 .

Mangcu , Xolela , ed. The Meaning of Mandela: A Literary and Intellectual Celebration . Cape Town : HSRC Press , 2006 .

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Broun , Kenneth. Saving Nelson Mandela: The Rivonia Trial and the Fate of South Africa . Oxford : Oxford University Press , 2012 .

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