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ソフォクレスの『オイディプス王』シリーズ

 この記事では、古代ギリシャの代表的な劇作家ソフォクレスの有名な悲劇作品『オイディプス王』のシリーズ作品のあらすじを紹介する。紀元前5世紀頃に制作された。具体的には、『オイディプス王』と『コロノスのオイディプス』そして『アンティゴネ』である 。

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『オイディプス王』のあらすじ

 テーベの都市がひどい疫病に襲われていた。凶作にも苦しんでいる。オイディプス王はこの問題の解決をすべく、義理の兄弟のクレオンをデルフィの神託所に送る。当時の慣習として、神アポロンの神託を助言とするためである。
 クレオンが神託をもって戻ってくる。疫病を終わらせるには、先代の王ライオスを殺害した犯人を捕まえ、テーベから追放する必要がある。その犯人はいまもテーベにいる、と。
 オイディプスはクレオンに、ライオスの殺人について尋ねる。クレオンがいうには、ライオスは盗賊たちに殺されたが、その際に逃げのびたのは一人だけだった。 オイディプスはライオスの死の謎を解くことを約束する。必ず犯人を見つけて追い出すことを誓う。

 オイディプスは犯人を見つけるために、ライオスの死に関する情報提供をテーベの市民に命じる。オイディプスは捜査の手がかりをえるために、盲目の預言者テイレシアスを呼び寄せる。テイレシアスは預言者として知ったことをオイディプスに話そうとしない。真実は苦痛のもたらすだけだという。
 オイディプスはテイレシアスの回答に苛立つ。テイレシアスが何も語らないのは、テイレシアスがライオスの殺人に関与したからだと非難し始める。テイレシアスはこれを聞いて激怒する。テイレシアスはオイディプスがその殺人犯であり、現在の疫病の原因だと告げる。

 オイディプスはこれにたいして、テイレシアスとクレオンがオイディプスにたいして謀反を起こそうとしているのだとやりかえす。
 オイディプスはテイレシアスの過去の行動についても論難する。その際に、オイディプスの過去についても語られる。かつて、テーベの街はスフィンクスに襲われた。スフィンクスの提示した謎が解かれない限り、スフィンクスはテーベを解放しないと宣言した。

 この時、オイディプスは遠くの街コリントで、コリント王のもとで育てられていた。だが、神託によって、オイディプスは父を殺し、母を妻にするだろうと告げられたので、コリントの街を去った。

 そして、テーベにやってきた。スフィンクスの謎を解いて、テーベを解放した。この少し前に先代の王ライオスが殺害されていたので、オイディプスがテーベの新たな王となった。

スフィンクスの謎を解くオイディプス

 オイディプスとテイレシアスの口論の終わりに、テイレシアスは立ち去る。その際に、こう告げる。ライオスと犯人の関係は父ないし兄であり、犯人は妻の息子であることが判明するだろう、と。

 オイディプスは自身に対するクレオンの陰謀を革新し、追放か処刑をしようと宣言する。ここで、オイディプスの妻イオカステがやってくる。イオカステはかつてライオスの妻だった。イオカステはクレオンが無実だとして、オイディプスに処刑をやめるよう懇願する。
 その際に、イオカステはそもそも神託や預言者のいうことを鵜呑みにすべきでないという。というのも、かつてイオカステが受けた神託は間違っていたからだという。それによれば、ライオスが自分の息子に殺されるとされた。

 だが、実際には、ライオスは盗賊に殺された。ライオスの息子はそのずっと前にテーベから離れた山で死んだ。よって、この神託は外れた、と。
 オイディプスはイオカステに、ライオスの殺害の状況を尋ねる。殺害現場は三叉路だった。オイディプスは嫌な予感がよぎる。オイディプスは上述のようにコリントを去ってテーベに向かう途中で、三叉路にやってきた。

 そこである人々と小競り合いになり、何人かを殺害した。その後、オイディプスはテーベにやってきた。そして今に至る、と。オイディプスは犯人の捜索のために、殺害現場で生き延びた羊飼いを連れてくるよう命じる。
 このとき、コリントから老いた使者がやってきて、イオカステに面会する。オイディプスの父でコリント王のポリュボスが老衰で亡くなったという知らせを伝える。さらに、コリントはオイディプスに王としてコリントに戻って来るよう求めている、と。
 イオカステはこれらをオイディプスに伝える。二人は上述の予言が外れたと喜ぶ。オイディプスは父を殺さずにすんだ、と。この世界は必然によってではなく偶然に支配されており、よって予言というものは当たらないのだ、と考える。
 このコリントの年老いた使者はオイディプスの出自について語る。この使者は普段、羊飼いをしている。かつて、羊の世話をしていた時、テーベから他の羊飼いがやってきた。彼は赤ん坊をこのコリントの羊飼いに渡した。それがオイデイlプスである。

 コリントの羊飼いはオイディプスをコリント王に贈与した。その後、オイディプスはコリント王家のもとで育てられた、と。オイディプスはテーベの羊飼いが誰かを尋ねる。それは、ライオスの召使だったと判明する。

 オイディプスは真実を知るべく、そのコリントの羊飼いを連れてくるよう命じる。イオカステは慄き、これ以上真実を知ろうとしないようオイディプスに懇願する。だが、オイディプスは聞く耳を持たない。イオカステはその場から立ち去る。
 そこに、コリントの羊飼いがやってくる。実は、この羊飼いはライオス殺害の現場からただひとり逃げのびた羊飼いでもあった。
 オイディプスはこの羊飼いに質問する。だが羊飼いは答えようとしない。オイディプスは答えなければ処刑すると脅す。ついに、羊飼いは真実を語り始める。この羊飼いはイオカステから、ライオスとイイオカステの赤ん坊を渡された。神託により、この赤ん坊が父を殺すとされたので、赤ん坊を殺害せよと命じられた。

 だが、羊飼いは赤ん坊をかわいそうに思った。そこで、命令に従わず、コリントの羊飼いに渡した。コリントで育てば、テーベの王を殺すことはないだろうと考えたのだ。この赤ん坊がオイディプスである。
 かくして、オイディプスは真実を知る。実際に父のライオスを殺し、母と結婚したことに気づく。神託をすでに実現していたことに気づく。

 イオカステは首をつって自殺する。オイディプスはその死体を見つけ、彼女の衣からピンを抜き、自分の目を突き刺す。もはや見ることを拒否して、盲目になったのだ。その後、クレオンに、自分をテーベから追放するよう求める。これが承諾され、追放される。

『コロノスのオイディプス』のあらすじ

 

追放された盲目のオイディプス

 今作は、オイディプスが追放されてから数年後の物語である。オイディプスは盲目であり、乞食のような身なりをしている。娘のアンティゴネの助けを借りて生きている。
 オイディプスたちはアテネ近郊ののコロノスの森にたどりつく。二人はそこで休憩しようとする。だが、そこの住民が彼らに退去するよう求める。その森は人間の立ちってはならない聖域だからである。オイディプスはどの神の聖域なのか尋ねる。復讐の女神の聖域だと返答される。
 オイディプスはこの地を立ち去ることができないと答える。なぜなら、かつて、自分がこの地で死ぬとアポロンに神託されたからである。そこで、オイディプスは住民に、アテネの王テセウスを呼んでくるよう頼む。

 他の住民たちもそこに集まってくる。彼らは乞食姿のオイディプスにたいし、一体何者なのかを尋ねる。オイディプスは身分をあかす。オイディプスの悲劇的な運命はすでにアテネでも広く知られていたので、住民たちはオイディプスだと知って恐れる。彼らはオイディプスに早くこの地を立ち去るよう求める。

 だが、オイディプスはかつての悲劇的な行いが恐ろしいものだったが、自分の責任ではないと歌える。オイディプスがこの地にとどまれば、この地に祝福が訪れるかもしれないという。住民たちはとりあえずテセウスを待って、彼の判断に従うことにする。

 そこに、オイディプスの娘イスメネがやってくる。イスメネはオイディプスに、現在のテーベの状況を知らせる。

オイディプスと二人の娘

オイディプスがテーベを追放された後、彼自身の二人の息子がその支配権をめぐって争いを始めた。ポリュネイケースはエテオクレスによって追放された。

 だが、現在、ポリュネイケースはテーベを攻略するために、アルゴスで軍事的な準備をしている。これにたいし、エテオクレスやクレオンらのテーベの支配者たちはテーベを守ろうとしている。

 そこで、彼らはオイデイlプスがテーベに戻って来るよう求めている。なぜなら、オイディプスの埋葬地がある土地に幸運がもたらされると神託されたからだ。
 オイディプスはこのような動向を聞いて、激怒する。彼の息子たちは、かつて、テーベからのオイディプスの追放を妨げようとしなかった。それにもかかわらず、いまやオイディプスを利用しようとしている。オイディプスはそう考え、息子たちには協力しないと決める。

 オイディプスは再び住民たちに、かつての悲劇的な行いについて弁明する。あの行いは意図的なものではなく、避けようがなかった、と。

 アテネの王テセウスはオイディプスのもとにやってくる。オイディプスは上述の神託をテセウスに説明する。すなわち、オイディプスが死んでコロノスに埋葬することを許してくれるなら、彼自身の墓がアテネに祝福をもたらすだろう、と。

 テセウスはオイディプスがコロノスに留まることを歓迎し、それを許可する。テセウスはその場を立ち去る。
 次に、テーベから、クレオンが到来する。クレオンはオイディプスの息子エテオクレスとともに、テーベを守ろうとしている。
 クレオンはオイディプスの追放後の不幸に同情を示す。オイディプスをテーベに連れ帰ろうと説得する。だが、オイディプスはこれを拒否する。おいでイプスは彼らがオイディプスをただ利用しようとしているだけなので、協力しない、と。
 そこで、クレオンは強硬手段をとる。まず、ッ兵士を浸かって、アンティゴネとイスメーネを人質に取る。さらに、力ずくでオイディプス自身を捕らえようとする。
 近隣住民はこれをみて、テセウスを呼びに行く。テセウスは現場に急行し、オイディプスを助ける。さらに、二人の娘をも助け出す。オイディプスはテセウスに感謝する。

 次に、オイディプスの息子ポリュネイケスが彼のもとにやってくる。ポリュネイケスはテーベ攻略の準備をしている。ポリュネイケスはオイディプスにたいして、追放後に何の支援もしなかったことを詫びる。そのうえで、今回の戦争で協力してほしいと頼む。
 オイディプスはこれも拒否する。オイディプスが追放後に何の支援もえられなかったことを恨んでいるためだ。オイディプスは彼に、テーベ攻略が失敗し、彼ら息子たちが殺し合うだろうと言い、追い返す。

 突然、雷がなる。オイディプスに死期が来たことを悟る。オイディプスはテセウスに、こう告げる。オイディプスがいまや没した後、テセウスがその埋葬地を王がオイディプスの埋葬地を秘密にしておけば、アテネの都市はこの墓によって守られるだろう。テセウスは納得する。
 オイディプスは死を迎えるために、王や娘たち、住民たちを森の外に連れ出す。オイディプスは死の準備をする。テセウスだけが彼の死ぬ場所を把握する。オイディプスは死ぬ。

 イスメネとアンティゴネは森に戻り、父を悼む。テセウスは彼女たちをテーベに送り返すことにする。テーゼでの戦争を阻止したいと思いながら。

『アンティゴネ』(Antigonē)のあらすじ

 『アンティゴネ』において、まず、その予言が実現する。オイディプスの息子とは、エテオクレースとポリュネイケスの 2 人である。オイディプスの死後、二人は 1 年ごとに交代でテーベの王になることに合意した。しかし、1 年後、兄のエテオクレスは合意に背いて、退位を拒否した。
 そこで、ポリュネイケスはテーベに進軍しました。全員が敗北した。その最中に、二人は決闘し、
二人とも死んだ。かくして、予言は実現された。彼らの叔父のクレオンがテーゼ王になった。
 クレオンはエテオクレースを名誉ある仕方で埋葬するよう命じる。だが、ポリュネイケスはテーベへの反逆者であるとして、その遺体を埋葬するのを禁止する。ポリュネイケスを埋葬しようとする者を死刑に処すると命じる。この物語はこの埋葬をめぐって展開する。

 夜明け頃、アンティゴネが家に戻って来る。彼女の姉妹のイスメネはアンティゴネに、どこに行っていたのかを尋ねる。二人はエテオクレースとポリュネイケスが戦死したことを悲しむ。イスメネはアンティゴネが、クレオンの命令に逆らい、ポリュネイケスを埋葬しようとしているのではないかと疑う。

 イスメネはアンティゴネに、クレオンという王の命令に反することはできないと説得する。だが、アンティゴネはそれを拒む。死者の埋葬は神々の法に基づくものであり、一人の人間の命令に優位する、と。イスメネはこれ以上、オイディプス家に不幸をもたらすべきではないという。だが、アンティゴネはポリュネイケスを埋葬すると言う。

 そこに、ヘイモンがやってくる。ヘイモンはクレオンの息子であり、アンティゴネに求婚している。アンティゴネはヘイモンに、ぎゅっと抱きしめるようお願いする。そして、ヘイモンと結婚することは決してできないと告げる。ヘイモンは愕然として、立ち去る。
 イスメネはアンティゴネに、日が明るくなろうとしているのに、埋葬しに行くのかと尋ねる。明るいうちに埋葬すれば、アンティゴネの罪がすぐに露見してしまうからである。アンティゴネは、すでに埋葬を始めたという。

埋葬の儀式をするアンティゴネ

 他方で、クレオンのもとに兵士がやってくる。誰かがポリュネイケスの遺体を埋葬しようとしていると報告する。クレオンは彼に、この件への対応し、さらにこれを外部に漏らさないよう命じる。

 兵士はアンティゴネをクレオンのもとに連行する。アンティゴネが昼間にポリュネイケスの埋葬していたところ、兵士に捕まったのである。クレオンは兵士を退去させる。
 クレオンはこの一件を秘密裏に、平穏に解決しようとする。

 目撃者がほかにいないことを確認する。このままアンティゴネが埋葬を諦めれば、クレオンはこの一件をそのまま終わらせようとする。
 だが、アンティゴネは妥協しようとしない。夜にまた埋葬しにいくつもりだ。クレオンはそれを察し、王であるクレオンの命令に従うよう求める。だが、アンティゴネは神々の法や伝統に従うといい、拒否する。
 クレオンは別の仕方で、アンティゴネを説得する。ポリュネイケスが埋葬に値しない人物だということを訴える。ポリュネイケスは若い頃から残酷な人物だった。オイディプスはポリュネイケスを投獄できなかったので、かわりにアルゴスで軍に入隊させた。

 だが、ポリュネイケスが入隊すると、オイディプスへの陰謀を開始した。ポリュネイケスだけではない。エテオクレスもまたオイディプスへの陰謀を開始した。
 これらの二人の息子は最近の戦いでともに死んだ。クレオンが二人の死体を引き取りにいくと、二人の遺体は無惨な姿に傷つけられて発見された。ポリュネイケスとエテオレクスはこのような人物なのである。
 アンティゴネは言葉を失い、自室に戻る。クレオンは早くヘイモンと結婚するよう、アンティゴネにいう。
 イスメネがアンティゴネのもとにやってくる。アンティゴネをどうにかして助けるという。アンティゴネのかわりに、埋葬を行うという。
 アンティゴネはイスメネの言動に困惑する。イスメネが自分と同じ罪を犯すのを恐れて、一件を終わらせようとする。クレオンに、自分を逮捕するよう求める。クレオンはそれに応じる。

 今度は、ヘイモンがクレオンのもとにやってくる。アンティゴネへの処罰を考え直すよう求める。この時点で、テーベの人々はアンティゴネが埋葬しようとした事実を知る。クレオンはこれがすでに知られてしまったので、王の命令(埋葬しようとした者を罰する)を厳密に執行するしかないという。クレオンは抗議する。

 クレオンは、息子が父親よりも裏切り者の女の味方をしているとして、ヘイモンを非難する。これにたいし、へイモンは、アンティゴネの死がまた別の死を招くだろうと警告する。二人は相容れないまま別れる。

 アンティゴネは牢獄にいる。兵士が見張りをしている。アンティゴネは彼に、自身の処刑方法を尋ねる。生きたまま墓に埋められることを知る。アンティゴネは彼に、伝言を依頼する。愛と謝罪の伝言である。処刑の時がきて、アンティゴネは連れて行かれる。生きたまま、墓に閉じ込められる。

 盲目の予言者テイレシアスがクレオンのところにやってくる。彼は、アンティゴネを殺すことが大きな過ちだと訴える。さらに、ポリュネイケースの遺体を埋葬すべきだ、と。
 クレオンはテイレシアスと言い争う。テイレシアスが偽りの予言者だと非難する。これにたいし、テイレシアスは、アンティゴネを殺せば、神々がクレオンの子供の命を奪うだろうと告げる。クレオンはこれに動揺し、処刑の中止を決める。アンティゴネを閉じ込めた墓に急いで向かう。

 クレオンが去った宮殿に、使者がやってくる。クレオンの妻エウリュディケにたいし,ハイモンが自殺したと伝える。彼女は何が起こったのかを尋ねる。
 アンティゴネが墓に閉じ込められた。クレモンが到着し、ハイモンと中に入った。アンティゴネはすでに首をつって死んでいた。ハイモンは剣で自殺した。
 エウリュディケはこの報告を聞いて、自殺する。クレオンは息子の遺体を抱えて、宮殿に戻ってくる。クレオンは悲しみに暮れる。使者がやってきて、エウリュディケが自殺したと報告する。クレオンがハイモンを殺したと呪っていた、と。かくして、クレオンは苦悶の中で一人とりのこされる。

おすすめ参考文献

ソポクレス『オイディプス王』河合 祥一郎訳, 光文社, 2017

ソフォクレス『コロノスのオイディプス』高津 春繁訳, 岩波書店, 1973

ソフォクレス『アンティゴネ』中務 哲郎訳, 岩波書店, 2014

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