『オセロ』はイギリスの代表的な劇作家シェイクスピアの悲劇作品である。四大悲劇の一つ。イギリスの演劇の古典的名作として知られる。この記事では、そのあらすじを紹介する 。
『オセロ』(Othello)のあらすじ
この作品は16世紀のヴェネツィアを舞台としている。当時、ヴェネツィアは独立した共和国であり、オスマン帝国と地中海で戦争していた。主人公のオセロはヴェネツィア共和国のムーア人の将校である。ムーア人はアフリカ出身の人々である。
オセロにはイアーゴとカッシオという部下がいる。イアーゴはより古くからオセロのもとに仕えていた。だが、カッシオがイアーゴより先に中尉に昇進した。イアーゴはこれを恨んでおり、オセロとカッシオを破滅させようとする。『オセロ』の物語はこのイアーゴの陰謀を中心に進んでいく。
オセロの結婚をめぐって
最近、オセロはブラバンティオの娘のデズデモーナと秘密裏に結婚した。裕福なロデリーゴは自分こそデズデモーナの結婚相手だったのに、オセロに奪われたと嘆く。イアーゴはオセロの結婚をブラバンティオに告げる。ブラバンティオは激怒し、オセロを逮捕して裁判にかけようと動き出す。
カッシオがオセロのもとに伝言をもってやってくる。ヴェネチアの大統領からの伝言だ。オスマン帝国が地中海にあるヴェネチアの拠点キプロス島に攻め込んできた。よって、オセロに、出動するために、元老院まで来い、と。
オセロがこの召集に応じようとしているところに、ブラバンティオがやってきた。オセロが魔術をつかって娘を盗んだと訴える。 オセロが元老院に向かうところだと知り、ブラバンティオは行かせることにする。この問題を元老院で周知しようとしたのだ。
元老院にて
元老院では、オスマン帝国との戦争について討論が行われている。そこに、ブラバンティオ、オセロ、カッシオ、イアーゴ、ロデリーゴが入ってくる。ブラバンティオはオセロがデズデモーナをたぶらかしたと訴える。
これにたいし、オセロが弁明を行う。自分の体験談などを語るうちに、デズデモーナと恋に落ちたのだ、と。デズデモーナが元老院に召喚される。デズデモーナは、愛のために結婚したのであり、今はもう父ではなく夫に忠誠をもつという。元老院はオセロ夫婦に味方する。
ブラバンティオは苛立つが、引きさがる。
オセロはキプロスに派遣されることが決まる。デズデモーナはオセロとともにキプロスに行くことを願い出て、認められる。
この流れをみていたイアーゴは、陰謀をふくらませる。ロデリーゴには、キプロス島に一緒にくるように説得する。さらに、デズデモーナがカッシオと浮気しているとオセロに信じ込ませるよう計画を練る。
キプロス島へ
彼らの船がキプロス島に到着する。この時点で、オスマン帝国の船が嵐で大損害を受けていたので、ヴェネチアの勝利が確定していた(よって、オスマン帝国との戦争は話題にならない)。
船から、デズデモーナ、イアーゴ、イアーゴの妻エミリアが降りてくる。すでに到着していたカッシオがデズデモーナを手厚くもてなす。オセロが到着し、デスデモーナが出迎える。
イアーゴはロデリーゴとふたりきりになって、こう話す。デズデモーナの興味はすでにカッシオに移っている。カッシオは短気で怒りやすい。夜にカッシオに挑発して、問題を起こさせよ、と。
その夜、オスマン帝国への勝利と、オセロの結婚のために、宴会が開かれる。
夜の宴会
宴会にて、イアーゴはカッシオに酒をすすめる。カッシオは酔っ払う。そこで、イアーゴはロデリーゴにたいして、カッシオを挑発するよう差し向ける。ロデリーゴがカッシオを挑発し、カッシオはロデリーゴと喧嘩になる。キプロス総督モンターノがこれを止めようとする。カッシオはモンターノを刺してしまい、傷を負わせる。
オセロが騒ぎを知ってやってくる。何が起こっているのかを問いただす。イアーゴはカッシオのよき友人のふりをして、カッシオがしたことを隠そうとする。だが、結局、カッシオが刺したことをオセロに話す。オセロはカッシオにたいし、中尉の地位を剥奪すると宣言する。
カッシオは落胆する。イアーゴをよき友人と思い込み、酒での失敗だといって愚痴をこぼす。ここで、イアーゴは陰謀の次の段階を開始する。カッシオが中尉に戻れるよう、デズデモーナを介して、オセロに頼めば、きっと中尉に戻れるだろう。だから、デズデモーナに協力を頼め。
イアーゴはこうカッシオに助言する。カッシオはこの助言を喜び、実行していく。だが、これはカッシオとデズデモーナの浮気関係を演出するためのイアーゴの方策であった。
デスデモーナの協力
カッシオはオセロとの和解を望む。そのために、イアーゴの助言にしたがう。彼の妻エミリオに頼んで、デスデモーナの協力を得ようとする。デスデモーナはこれに応じる。
カッシオはデスデモーナに協力を求める。デスデモーナは協力を約束する。そのとき、イアーゴがオセロを連れて、二人のところにやってくる。カッシオは後ろめたさを感じ、その場をすぐに立ち去る。
オセロは、デスデモーナのもとを去ったのがカッシオではなかったかと尋ねる。イアーゴはあえて「カッシオだ」とは言わない。むしろ、これを否定する。カッシオはオセロが来るのをみて、そんな後ろめたいことをして逃げることはないだろう、とイアーゴはいう。このようにして、オセロの心に嫉妬や疑念の種を少しずつまく。
オセロとふたりきりになったデスデモーナは、カッシオの復職をオセロに説得する。オセロのなかで、デスデモーナの不貞行為の疑念は確信に変わっていく。イアーゴはオセロの嫉妬と疑念の炎に油を注ぎ続ける。
オセロは頭が痛くなり、体調を崩す。デスデモーナはハンカチを頭に巻いてやろうとするが、これが床に落ちてしまう。二人が去り、エミリアがハンカチをひろう。以前から、ハンカチを入手するようイアーゴに頼まれていたのだ。これをイアーゴのもとへ届ける。イアーゴはハンカチを受取り、大喜びする。
ハンカチの罠
イアーゴはデスデモーナとカッシオの浮気の「証拠」として、ハンカチを利用する。カッシオの部屋にそれを仕掛ける。
イアーゴはオセロに、妻の浮気をさらに疑わせる。オセロは証拠を求める。イアーゴはカッシオがデズデモーナのハンカチを使っていたと言う。オセロはイアーゴを一層信用する。それどころか、この二人への「復讐」を誓う。
夜になり、オセロはデスデモーナにハンカチを借りたいというが、デスデモーナは持っていないと答える。デスデモーナは話題を変え、再びカッシオの復職を説得し始める。オセロは疑念と怒りで立ち去る。
他方、カッシオは自分の部屋にあるハンカチを不思議そうにひろう。娼婦ビアンカがそこにやってくる。カッシオはハンカチの刺繍をうつすようビアンカに依頼し、ハンカチを渡す。
オセロは再びイアーゴと話している。イアーゴはオセロの感情を刺激しつづけたため、オセロはついにてんかんの発作で意識を失う。
オセロは気がつく。イアーゴの手配により、オセロは部屋の中に隠れる。そこに、カッシオとビアンカがやってくる。ビアンカはデスデモーナのハンカチをカッシオに返す。これをみて、オセロはカッシオとデスデモーナの不倫を確信する。
そこに、デスデモーナらがヴェネチア政府からの手紙をもって入ってくる。手紙には、キプロスの統治をカッシオにまかせて、オセロに戻ってくるようにと書いてある。他方、デスデモーナはオセロとカッシオの仲違いについて話している。オセロは激怒し、デスデモーナを殴り、罵倒して、立ち去る。
その後、オセロはオセロはエミリアにデズデモーナについて質問する。エミリアはデスデモーナを擁護する。オセロはデズデモーナ自身に質問するが、娼婦だと罵倒する。デスデモーナはオセロのほうがおかしいのだと反論する。
デズデモーナは困り、イアーゴに助けを求める。イアーゴはオセロが国の問題で気を取り乱しているのだといい、協力を約束する。
その後、ロデリーゴがイアーゴのもとにやってくる。デスデモーナを奪い取るために、イアーゴに多くの金品を与えた。なのに、これに成功していない。オセロとデスデモーナはこのままキプロスを去ってしまう。イアーゴは嘘つきだ、と。
これにたいし、イアーゴはロデリーゴにこう提案する。二人がキプロスを去らないようにするには、カッシオという次期キプロス総督を排除すればよい、と。かくして、ロデリーゴにカッシオを襲わせようと計画する。
運命の夜:クライマックスへ
ある夜、ロデリーゴはイアーゴの計画の通り、カッシオを襲う。だが、殺害できず、反撃を受け、逃走する。イアーゴはカッシオを刺して逃げる。
カッシオが叫び声をあげ、周囲の人が駆けつける。イアーゴは負傷したロデリーゴを見つけ、殺害する。
オセロはイアーゴが計画通りにカッシオを殺したと思い込む。オセロはデスデモーナの殺害という自分の計画のために移動し始める。
デスデモーナは自室のベッドで眠っている。オセロはその前に来て、こう思い込んでいる。デスデモーナが不貞により、今後も多くの男をたぶらかすだろう。だから、ここでその生命を終わらせなければならない、と。
デスデモーナは目を覚ます。オセロは彼女に、「浮気」を認めるよう催促する。彼女のハンカチをカッシオに渡したのを認めよ、と。デスデモーナは否定する。オセロはそれを信用しない。デスデモーナは命乞いをするが、届かない。オセロは彼女の首を絞める。
エミリアがそこに入ってくる。ロデリーゴが殺され、カッシオが生きていると告げる。エミリアはデスデモーナが死にゆくのに気づく。オセロは自分が殺したと認める。彼女の「浮気」が原因であり、この一件にイアーゴが関与しているとエミリオに伝える。エミリアは夫の関与に衝撃を受ける。
エミリアは助けを呼ぶ。キプロス総督モンターノやイアーゴらが入ってくる。エミリアはイアーゴを問い詰めようとする。イアーゴはカッシオとデスデモーナが浮気していたと言う。オセロは、その証拠が彼女のハンカチだ、といって、イアーゴを弁護する。
エミリアは自分がそのハンカチを拾ってイアーゴに渡したのだという。オセロはようやく真実に気づき、愕然とする。
イアーゴは危険を察して、エミリアを刺して逃げる。モンターノは彼を追いかける。
モンターノやカッシオはイアーゴを捕まえて、オセロのもとに戻ってくる。オセロは逮捕される。だが、剣で自害して死ぬ。
イアーゴは裁判で処刑が命じられる。
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おすすめ参考文献
シェイクスピア『オセロ』河合 祥一郎訳, 新潮社, 2018
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※シェイクスピアの生涯と作品については、「シェイクスピア」の記事を参照。