『ペール・ギュント』はノルウェーの代表的な劇作家イプセンの作品。1867年に制作された初期のものである。
イプセンの『ペール・ギュント』(Peer Gynt)のあらすじ
ペール・ギュントは空想的で詩を好む青年である。父は道楽で財産をくいつぶし、行商人として旅立った。母は生活再建のためにペールに期待していたが、彼に期待をかけなくなってきた。
ペールはトナカイの狩りにでかけるが、失敗して戻って来る。母はペールが村の裕福な娘イングリッドとの縁談に失敗したとして、彼を責める。翌日はイングリッドと別の男性の結婚式だ。
ペールはまだチャンスがあると思い込み、結婚式へ向かう。母はペールが恥をかいてしまうと思い、彼の後を追う。
ペールは結婚式に参列する。他の客に馬鹿にされる。他の客の娘ソルヴェイグを見つけ、気に入り、ダンスを申し込む。だが、彼自身と父親の悪い噂のせいで、断られる。
ペールは花嫁のイングリッドが一人で家にいると知る。そこを訪れて、彼女と駆け落ちし、一夜を過ごす。
その結果、ペールは村から追放される。ペールは森をさまよう。母やソルヴェイグの一家が彼を探す。
ペールはふとしたアクシデントで気を失い、夢をみる。ペールは夢の中で、緑色の服を着た女性と出会う。トロルという神話上の生物にも出会う。トロルの王にも出会う。
ペールは自分の国をつくり、その王になりたいという空想的な夢をもっていた。トロルの王は娘と結婚すれば、ペールをトロルにしてやると提案する。ペールはいろいろ悩んだ末、これを断る。ペールはトロルたちと会話する中で、自己本位であることが大事だと考える。
その娘が妊娠していることが判明する。ペールは自分には身に覚えがないという。だが、トロルの王は激怒し、ペールを崖から突き落とせと命じる。そのとき、教会の鐘を鳴らされたおかげで、トロルは退散し、ペールは助かる。
そこで、ペールは夢から覚める。ペールは人里離れた場所で小屋を立て、生き抜こうとする。そこにソルヴェイグがやってきて、一緒に暮らしたいという。ペールは同意する。
だが、ペールの小屋に入ると、そこには夢の中にでてきた緑色の服の女性がいた。女性はペールにかつての罪を思い出させる。このソルヴェイグとの幸せな生活を諦めさせる。ペールは必ず戻って来るといって、小屋を後にし、村に向かう。
村では、母が死ぬ間際であった。ペールは母とあって、これまでの不手際を赦してもらう。母は自分の財産をペールに与える。母が没する。ペールは自分を見つめ直すべく、長い旅に出る。
ペールはモロッコで商人などの様々な仕事につく。いまや中年男性である。いつか世界の皇帝になるという空想的な夢をいまでも抱きながら、自己本位であることをモットーに暮らしている。多少の財産を築くことができた。
だが、ペールは旅の途中で友人たちに強盗され、無一文で海岸に取り残される。その地域の部族の娘に恋するが、失敗する。そのため、女性と金を追い求めるのをやめようと決める。
その代わりに、ペールは知を探求しようと決め、学者になろうとエジプトに向かう。他方、ソルヴェイグは上述の小屋でペールを信じて彼を待ち続けている。
ペールはエジプトで、スフィンクスの謎に挑む。たまたま、その土地の精神病院の職員に出会う。精神病院を訪れる。ペールは患者たちをみて、こう缶下駄。みなが他人を気にせず、実に自己本位で行きている、と。
ペールはながらく、皇帝になりたいと思ってきた。ここでなら、ペールは自分自身の皇帝になれる。ペールはほかの患者たちに、そのような人物として迎え入れられる。患者の中には、彼の「しもべ」となる者もでてくる。だが、二人が自殺したため、ペールはその「皇帝」の地位を退く。
ペールはいよいよ老人となる。故郷のノルウェーに帰ることにする。船での帰り道、難破してしまう。その船旅の際に、死体をくれと彼にせがむ奇妙な乗客にも出会う。
ペールはどうにか命からがら助かって陸に上がる。だが、無一文になった。故郷へと向かう。故郷では、イングリッドが没していた。村では葬式が行われ、オークションも行われる。ペールはそれに参加する。
かつての住民はペールを見ても彼だと気づかない。ペールは彼らに、ペール・ギュントとは誰かと尋ねる。彼らはペールがすでに死んだと思っており、どうしようもない輩のホラ吹きだったと答える。
ペールは成仏できなかった母の訪問を受ける。ペールは当惑して逃げ出す。不思議な人物に出会い、これまで避けてきた問いを突きつけられる。ペールは自己本位をモットーにしてきたが、いつどこで本当に自分自身になれたのか、と。
ペールは最後までこの問いに悪戦苦闘する。トロルの王にあったり、司祭に罪を告白したりと、いろいろ手を尽くす。だが、自分は何者でもないという考えにいたり、絶望する。
そのとき、ソルヴェイグの歌声が聞こえてくる。ペールは例の小屋の近くにきていたことに気づく。ソルヴェイグと話す中で、安堵を覚える。物語は幕を閉じる。
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おすすめ参考文献
イプセン『ペール・ギュント』毛利 三彌訳、論創社、2006年