『ピグマリオン』は近代イギリスの作家バーナード・ショーの喜劇作品。1912年に制作され、翌年にウィーンで初演された。有名なミュージカル『マイフェアレディー』の原作である。貧しい田舎訛りの花売り娘が上品な話し方とマナーを訓練されて、身を立てていく物語。この記事では、あらすじを紹介する(結末までのネタバレあり)。
『ピグマリオン』(Pygmalion)のあらすじ
舞台は近代のロンドンである。ある夜、悪天候により、多くの人々が教会で雨宿りしている。主人公のエリザ・ドリトルは田舎出身の貧しい花売り娘である。彼らに花を売ろうとしている。
音声学者のヘンリー・ヒギンズが彼らの話し声を聞いて、出身地を特定し、メモをしている。エリザは彼を景観と勘違いし、自分の花売りの邪魔をしようとしていると思う。ヒギンズは彼らに、それぞれの出身地がどこかを言い当てようとする。
言語学者ピカリングがそれを聞いて、興味を持つ。ヒギンズは音声学者だと身分を明かす。ヒギンズは、数ヶ月あれば、田舎訛りのエリザが貴族の淑女と誤解されるほど上品な話し方をできるよう教えることができると言う。
雨がやんで、人々は去っていく。ヒギンズとピカリングは友人になり、一緒に夕飯を食べに行く。
翌朝、ピカリングがヒギンズの自宅を訪ねる。二人は音声学について話す。そこに、エリザが訪ねてくる。エリザは昨晩の話に興味をいだいていた。そこで、ヒギンズに、上品な話し方のレッスンを申し込む。より良い仕事につくためだ。
だが、ヒギンズはエリザがレッスン料を払えないと思い、エリザをからかう。ピカリングはエリザの依頼に興味を持ち、ヒギンズに賭けを提案する。その内容はこうだ。
半年後に大使の園遊会が予定されている。エリザには半年間、ヒギンズのレッスンを受けてもらい、その園遊会に出席してもらう。もしほかの参加者がエリザの話し方などの振る舞いをみて、彼女を貴族の淑女と勘違いするなら、ピカリングがレッスン料をヒギンズに支払う、と。
ヒギンズはこの賭けを気に入り、応じる。エリザは当初この賭けに不満だったが、ヒギンズは話を勧める。召使に、エリザを風呂に入れ、適切な衣服を着せるよう、命じる。
そこに、エリザの父アルフレッド・ドゥーリトルがやってくる。エリザがヒギンズのもとに滞在するのを認めるかわりに、金銭を要求する。ヒギンズは当初憤慨したが、これに応じる。
そこから、エリザはヒギンズのレッスンを数ヶ月受ける。
ある日、ヒギンズ家はヒルズ一家を自宅に招く。ヒギンズはエリザに、貴族の淑女らしい仕方で彼らに応対するよう指示する。エリザはそれを試みる。だが、田舎訛りが出てしまう。息子のフレディ・ヒルズはむしろそこに惹かれる。
だが、ヒルズ夫人はエリザの会話の話題やマナーに愕然とする。娘のクララ・ヒルズはエリザのマナーが通例と異なることを気にしない。このように反応は様々だったが、本番の大使の園遊会で淑女として通用するかは不透明である。
ヒギンズはエリザへの「実験」がうまくいくようピカリングと話し合う。ヒギンズ夫人はヒギンズらに、エリザを実験台として扱わないよう忠告する。この実験が終わった後のエリザの行く末を心配する。
いよいよエリザたちは大使の園遊会に出席する。エリザは見事に、淑女になりすますことに成功する。ヒギンズが賭けに勝ったのである。長い一日を終えて、ヒギンズとエリザとピカリングはヒギンズの家に戻って来る。
ヒギンズはピカリングとともに、「実験」の成果について話し合う。ふたりとも、この実験にはすでに飽きていたという。エリザは二人のやり取りをみて憤慨し、ヒギンズにスリッパを投げつける。ヒギンズが身勝手だ、と。同時に、エリザは「実験」が終わった後の自分の行く末に不安を抱く。
ヒギンズはスリッパに驚いたが、エリザに裕福な人物との結婚を勧める。だが、エリザはこれを拒否する。ヒギンズは花屋での職を勧める。エリザは園遊会のために借りた宝石を返しながら、この衣服はもらっていいのかと尋ねる。ヒギンズはエリザのふるまいに失望し、エリザを恩知らずだという。
翌朝、ヒギンズはヒギンズ夫人のもとへ急いでやってくる。エリザが家出をしてしまったのだ。そkに、エリザの父ドリトルがやってくる。
ドリトルはヒギンズの過去の発言がきっかけとなって、ある人物から大きな遺産を受けた。ドリトルは急に裕福になった。それに見合うマナーを身につける必要がでてきた。そこで、娘と同様に、上品な話し方を教えるよう、ヒギンズに依頼しに来た。
ヒギンズはドリトルに、ヒギンズのレッスンを終えたが、今後も自分の家に置いておきたいという。エリザへのヒギンズの姿勢は昨日と大差がない。
ヒギンズ夫人はヒギンズらのやり取りを聞いて、ヒギンズらを身勝手だと叱る。エリザが実は家の中に隠れていると明かす。夫人はエリザを呼ぶ。
エリザがやってくる。エリザはピカリングにたいし、これまで模範的な礼儀作法を自分にたいして実践してくれたことに感謝を示す。エリザはかつての話し方や振る舞いを完全に忘れたと言う。しかし、ヒギンズは、エリザがそのうちかつての下層階級の作法に戻るだろうと思っている。
エリザは父と会う。父は再婚することを伝え、結婚式に出席するよう求める。エリザとヒギンズ夫人らはそれに出席することになり、準備を始める。
物語の最後で、エリザとヒギンズが会話をする。二人はエリザの今後について話し合う。エリザはヒギンズが自分を都合のよいように雑用係にしたいだけだという。現状は奴隷のようなものだ。ヒギンズがそうでないと言うなら、無礼な態度をとらずに、優しくしてほしい、と。
ヒギンズは自分が乱暴な振る舞いをするのは誰に対しても同じことだという。よって、エリザにたいしても同様だ、と。エリザには、やはり裕福な男性との結婚を勧める。だが、エリザはむしろフレディ・ヒルズとの結婚を望む。
エリザはヒギンズが自身への態度を改めないなら、自立して、音声学で身を立て、ヒギンズのライバルになる、という。ヒギンズは憤慨しながらも、エリザのしたたかさに望外の喜びを感じる。
ヒギンズ夫人がエリザを結婚式に連れて行こうとして、やってくる。彼女たちが去るとき、ヒギンズはいつものようにエリザにお使いを頼む。エリザは自分で買ってくるようにと答えて、出ていく。物語は幕を閉じる。
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