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シェイクスピアの『ヘンリー4世』の第一部と第二部

 『ヘンリー4世』の第一部と第二部はイギリスの代表的な劇作家シェイクスピアの歴史劇である。それぞれ順に、あらすじを紹介する。第一部は、王権を奪取した後、反乱にあえぐヘンリー4世の時代を題材としている。

シェイクスピアの『ヘンリー4世 第一部』(Henry IV Part I)のあらすじ

 舞台は中世イギリスである。ヘンリー4世はイギリス王に即位した後も、政情が安定しなかった。ヘンリーが宿敵リチャード2世を暗殺したことの償いとして十字軍を派遣しようとした頃、ウェールズで反乱が起こる。そのため、十字軍をとりやめる。
 ヘンリーはウェールズの反乱を鎮圧しようとする。だが、北部では、配下のパーシー家が不穏な動きを見せている。そこで、ヘンリーはハリー・パーシー (通称ホットスパー) を宮廷に呼び寄せる。
 他方、ヘンリー4世の息子のハル王子は場末の酒場で放浪者やならず者たちと酒を飲んで暮らす日々だった。ハル王子が特に親しくしていたのはフォルスタッフだった。フォルスタッフは機知に富む愉快な人物であるが、盗みや詐欺で日銭を稼いでいる。
 ハル王子は王位継承者だったので、ヘンリーはハルに失望していた。ハル王子が王家の人間でありながら、毎日のようにいかがわしい場所でいかがわしい人々と交流をもっていたことはよく知られていた。
 他方で、ホットスパーがヘンリー4世のもとに召喚される。ヘンリーはホットスパーにたいし、ウェールズ反乱の鎮圧隊に加わるよう求める。だが、ホットスパーは不平を漏らす。
 なぜなら、かつてヘンリー4世がリチャード2世との戦いで勝利した時、ホットスパーのパーシー家が活躍したにもかかわらず、ヘンリー4世がこの恩義に報いていないからだ。ヘンリー4世は恩知らずだ、と。
 ホットスパーはヘンリーの要望を聞き入れずに、宮廷を立ち去る。
 その頃、フォルスタッフの友人たちはハル王子を巻き込んで、フォルスタッフにいたずらを仕掛ける。彼らは裕福な旅行客を襲って、金品を奪うという計画をフォルスタッフに持ちかける。
 フォルスタッフは酒代を得るために、これに参加する。ハル王子はこれが偽物の計画だとひそかに知らされ、参加を決める。
 この「追い剥ぎ」計画が実行される。フォルスタッフらは旅行客(に扮したならず者)を襲って、金品を奪おうとする。だが、「旅行客」に扮したハル王子らが逆にフォルスタッフに金品を要求し、追い剥ぎする。
 いたずらが終わり、彼らは酒場でいつものように飲んでいる。フォルスタッフが追い剥ぎされた話をする。ハル王子たちがネタバラシをし、自分たちがいたずらで追い剥ぎしたと明かす。
 他方、ホットスパーらのパーシー家がヘンリー4世に反旗を翻す。パーシー家はウェールズの反乱軍と同盟を組む。ほかにも、スコットランドやイングランドにも多くの味方をつくる。だが、この同盟から離反する者もでてきて、情勢は不安定である。
 ホットスパーはシュルーズベリーに移動し、彼自身の父と合流する。ヘンリーとの決戦に備える。
 ヘンリーはこれらの敵対者と戦うために、ハル王子を呼び戻す。ハル王子はいつものように酒番にいたが、宮廷に戻って来る。
 ヘンリはハル王子に、これまでの怠惰な生活について苦言を呈する。このままでは、ホットスパーがハル王子の王位継承権を奪ってしまう、と。ハル王子はこれまでの生き方を改め、反乱軍の鎮圧で活躍すると決意する。
 かくして、ハル王子はヘンリーと和解する。ヘンリーは鎮圧軍の指揮権を彼に委ねる。ハル王子はフォルスタッフら酒場の仲間たちを軍に組み込む。
 ヘンリーとハル王子が戦場に赴く。彼らは反乱軍にたいして、投稿すればその罪を赦すと告げ、懐柔しようとする。だが、交渉は成立せず、シュルーズベリーの戦いが始まる。
 敵軍がヘンリーを窮地に追いやる。ハル王子が奮戦し、この危機からヘンリーを救う。ヘンリーはハル王子を心から見直す。さらに、ハル王子はホットスパーと一騎打ちをし、打ち倒す。


 その頃、フォルスタッフはこの戦いに参加していたが、死にたくなかった。死んだふりをして、戦いが終わるのを待つ。ついにヘンリー軍が勝利する。フォルスタッフはホットスパーを倒したのは自分だと吹聴する。
 シュルーズベリーの戦いの結果、パーシー家は処刑される。だが、別の反乱軍がまだ残っている。ヘンリーとハル王子はこれらの鎮圧に向かう。『ヘンリー4世 第二部』に続く。

『ヘンリー4世 第二部』(Henry IV Part2)のあらすじ

 シュルーズベリーの戦いでホットスパーが勝利した。このような誤報が彼の父ノーサンバーランド伯爵のもとに届く。反乱軍は勢いづいて、ヘンリー4世との戦争続行を計画する。
 だが、それが誤報だと判明する。反乱軍では、それでも戦争を継続しようとする有力者が多い。だが、もう戦争をやめるよう求める声も大きくなってくる。
 他方で、フォルスタッフらのならず者たちは、シュルーズベリーの戦いの功績をたたえられ、昇進した。フォルスタッフは軍隊で若者の勧誘を任される。
 とはいえ、フォルスタッフは相変わらず酒場で仲間とつるむのが好きだった。酒代はツケにして飲んでいた。ついに酒代の支払いを求められて口論となり、フォルスタッフは逮捕される。だが、連行される前に、酒場の主人と和解し、軍務に戻ることができた。
 別の日、フォルスタッフはまた友人らと酒場で飲んでいた。そこに、ハル王子が変装してやってきた。別の人物がフォルスタッフに、そろそろ反乱軍との戦いに出発するよう催促する。
 だが、フォルスタッフは酒場で飲んでいたい。戦争への出発を拒む。さらに、ハル王子への不満を述べ始める。これを聞き、ハル王子は正体をあかして、口論になる。
 結局、フォルスタッフは戦いのために出発する。道中、旧友とばったり会う。久々の再会で、歓待される。フォルスタッフは徴兵も行っていたので、そこからも兵士を募集する。
 その頃、ゴルドリーの森で、反乱軍は決戦の準備をしている。ホットスパーの父ノーサンバーランド伯爵はこれに参加しないことを決めた。それでも、他のリーダーたちが反乱軍を結集させる。
 ヘンリー4世の息子ジョン王子がゴルドリーの森に到来する。ジョンは反乱軍のリーターたちと交渉する。彼らの要求をすべて受け入れるので、反乱をやめよ、と説得する。
 交渉がまとまる。反乱軍のリーダーたちは軍を解散させ、戦争が回避される。その後、ジョン王子はリーダーたちを急に拿捕する。当然、反発が起こる。だが、彼らは処刑される。彼らを騙し討ちにしたのだ。
 他方、ロンドンの宮廷では、ヘンリー4世が重病で、死が迫っている。そこに、反乱軍との戦争が終わったという知らせが届く。
 ハル王子はヘンリーの最期が近いことを知り、宮廷におもむく。ヘンリーはハル王子のかつての生き方をおもって、彼と王国の行く末を案じる。ハル王子と口論になる。
 だが、ハル王子はシュルーズベリーの戦いの頃から心を入れ替え、生き方を改めていた。父を雄弁に説得し、納得させる。

ヘンリーは安心して、息を引き取る。

 ハル王子は正式にイギリス王ヘンリー5世に即位する。この知らせを聞いて、フォルスタッフらは喜ぶ。即位を祝うために、ロンドンに向かう。
 フォルスタッフらはロンドンの町中でヘンリー5世を見つけ、祝意を述べようとする。だが、ヘンリーはフォルスタッフらを知らないという。
 ヘンリーは王として、かつての「いかがわしい」仲間たちとの決別を決めたのだ。フォルスタッフらに、今後、王と宮廷から10マイル以上離れるよう命じる。フォルスタッフは驚き、悲しむ。
 ヘンリーは王として議会を開き、フランスとの戦争を計画していく。

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シェイクスピア『ヘンリー4世 第一部』小田島 雄志訳、白水社、1983年

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