シェイクスピアの『ペリクリーズ』のあらすじ
この物語はガワーという詩人の語る叙事詩という体裁をとっている。ガワーはいにしえのアンティオキア王国について語り始める。
アンティオキア王国には、アンティオコス王とその娘が住んでいた。彼らはひそかに近親相姦の関係にあった。娘は年頃だったので、多くの求婚者があらわれた。アンティオコス王は結婚の条件として謎解きを要求し、失敗した者を死刑に処した。
ティルスの王子ペリクレス(主人公ペリクリーズのこと)がこの謎解きに挑む。その正解にたどり着く。だが、その正解は彼らの近親相姦という不都合な事実を明るみに出すものだと気づく。ペリクレスは正解を公にすれば、危険にさらされるだろう。
そこで、ペリクレスは正解を公にせず、ティルスに逃げ帰る。アンティオコス王は近親相姦を露見させないために、ペリクレスの暗殺のために刺客を送る。
ペリクレスは暗殺者が追ってくるのを心配する。友人の助言をえて、ひとまず国外に移ると決める。そのとき、タルソスが食糧難で苦しんでいることを知る。そこで、ペリクレスは食料をもって、タルソスに向かう。
タルソスの総督クレオンとその妻ディオニュザはペリクレスの支援に感謝する。ティルスから手紙が届き、ペリクレスはティルスに戻ってくるよう要請される。そこで、ペリクレスは帰国の途につく。
だが、帰路で船が難破する。ペリクレスは陸に打ち上げられ、漁師たちと出会う。漁師たちはシモニデス王の娘タイサのために、近日、馬上槍試合が開催されるという。優勝者はタイサと結婚できる、と。
ペリクレスはそれに興味をそそられる。だが、装備がない。漁師たちが網で漁をしていると、甲冑を引き上げる。ペリクレスはそれを使って、馬上槍試合に参加する。これに優勝し、タイサと結婚する。
ペリクレスはその地で幸せに暮らす。タイサは解任する。その頃、ティルスから手紙が届く。上述のアンティオコス王とその娘が死んだので、無事に帰国できるという。
そこで、ペリクレスはタイサをつれて帰国すると決め、出発する。だが、ティルスへの海路で、また大嵐にあう。タイサは船の上で出産する。大嵐と出産のため、死んでしまったように思われた。
船はいまにも沈みそうだ。船長はこの危機を乗り切るために、タイサの遺体を捨てる必要があるという。ペリクレスはやむなく同意する。遺体を棺に入れ、手紙や副葬品などを入れて、棺を海に投げ捨てる。
ペリクレスらの船はタルソスに到着した。そこで、ペリクレスは生まれたばかりの娘マリナと乳母を、上述のタルソス総督クレオンと妻ディオニザに託す。娘は赤ん坊なので、ティルスへの旅には耐えられないためだ。自らはそのままティルスへ戻る。
他方、タイサの棺はエフェソスに流れ着く。エフェソスの人々がそれを見つけ、医者を呼ぶ。医者はタイサを看護し、タイサは息を吹き返す。
タイサは嵐で夫と娘が死んでしまったと思い込む。女神ダイアナの神殿で暮らし始める。
それから15年の歳月が流れる。ペリクレスはティルスの王となり、タイサはダイアナの巫女となった。マリナはタルソスで美しい娘として成長する。
ディオニュザは自分の娘よりマリナが世間の注目をひいてしまうと感じ、嫉妬する。マリナをひそかに殺そうと企む。あと一歩のところで、マリナは海賊にさらわれる。
海賊はマリナを売春宿に売り飛ばす。売春宿には多くが客が来る。マリナを買おうとするが、マリナは買わないよう説得し、よりよい生き方を送るよう説得するのに成功する。
売春宿主はマリナを去らせる。マリナは名家に侍女としてつかえる。
ペリクレスはマリナがタルソスで成長したと思い、会いに行く。クレオンとディオニュサはマリナが海賊に奪われたという不祥事をもみけすために、マリナが死んだことにする。偽物の墓をつくり、ペリクレスにみせる。
ペリクレスは墓を見て、ショックを受ける。放浪の旅に出る。船はミティレネに到着する。総督リュシマコスはペリクレスを歓迎する。
ペリクレスはいまだに意気消沈している。そこで、リュシマコスはすでに評判の高いマリナをそこに呼び寄せる。マリナはペリクレスに会うが、二人とも相手が家族だと認識していない。
マリナはペリクレスの苦しみを和らげようとつとめる。自身のそれまでのつらい経験を語る。ペリクレスはマリナが自身の娘だということに気づき、歓喜する。
ペリクレスは疲れて眠りにつく。夢で、女神ダイアナがエフェソスの神殿に来るよう、ペリクレスをいざなう。ペリクレスは娘と再会できたことを感謝すべく、マリナを連れて、エフェソスの神殿に向かう。
ペリクレスとマリナはエフェソスの神殿につく。そこで、これまでの話を巫女のタイサにする。巫女が自身の妻だと気づいていない。タイサは話を聞いて、相手がペリクレスだと認識し、驚いて気を失う。
かつてタイサを蘇生させた医者は、彼女がタイサだと彼らに教える。一家は再会を喜びあう。一緒に、ティルスに戻る。
詩人ガワーが物語の結末を語る。クレオンとディオニサは彼ら自身の悪行により、タルソスの民衆の反乱で滅んだ。アンティオコス王らのように、悪は最後には罰せられるのだ。反対に、ペリクレスらは高潔であったので、最後には再会の喜びを得られた、と。