『リチャード2世』はイギリスの代表的劇作家シェイクスピアの歴史劇。一連のイギリス中世史にかんする歴史劇の始まりである。
シェイクスピアの『リチャード2世』(Richard II)のあらすじ
舞台は14世紀後半のイギリスである。イギリス王はリチャード2世である。リチャード2世の宮廷では、二人の貴族がお互いを反逆者だとして罵り合っている。一人はヘンリー・ボリングブルックである。ヘンリーはリチャード2世のいとこであり、のちにヘンリー4世となる。
ヘンリーがグロスター公を暗殺したことは公然の秘密だった。この問題で、ヘンリーはモーブレーとの対立の末に、決闘で決着をつけることになる。
二人の戦いが始まる。リチャードがこれを独断でやめさせる。リチャードはモーブレーを終身の追放刑に処する。ヘンリーを10年間の追放刑に処する。
リチャードはアイルランド遠征を決める。そのための資金集めを行う。この頃、追放されたヘンリーの父ゴーントは、失意の中で、死が迫っていた。王の親族の貴族であるため、相応の土地と財産をもっている。
リチャードはアイルランド遠征のために、ゴーントの遺産を奪おうと計画する。ゴーントの息子(ヘンリー)は追放刑に処されたところであるので、リチャードからすれば絶好のチャンスだ。
ゴーントはそのことを知る。死にゆく中で、リチャードが見舞いに訪れる。ゴーントはリチャードを非難するが、まもなく没する。リチャードは彼の土地と財産を没収する。ヘンリーの遺産を奪ったのである。
このリチャードの身勝手なふるまいにより、一部の貴族が離反する。民衆の間でも、リチャードへの反感が広がる。だが、リチャードは意に介さず、アイルランド遠征に出発する。
追放されているヘンリーは父ゴーントの死を知る。自身の遺産がリチャードに奪われたことも知る。ヘンリーは激怒し、軍隊を集めて、イギリスへと出発する。
リチャードが不在のイギリスに、ヘンリーが到来する。ヨーク公がヘンリーの一行に対面する。ヘンリーは自身の遺産を取り戻しにきたという。ヨークは彼に同情しながら、なだめようとする。だが失敗し、ヘンリーの進軍をとめられない。
リチャードがアイルランドでの戦争中に、ヘンリーはイギリスでの権力基盤を固めていく。リチャードの支持者たちを懐柔して味方につける。反対されれば、処刑する。このようにして、リチャードの権力基盤を破壊する。
リチャードがアイルランド遠征を終え、帰国する。だが、すでにイギリスでの情勢が大きく変わってしまったことに気づく。ヘンリーとの戦いを避けると決め、軍を解散させる。
リチャードは城に移動し、ヘンリーと対面する。ヘンリーの遺産を返し、追放令を解除するのに同意する。ロンドンに向かうことになる。
リチャードはロンドンに戻る。ヘンリーの真の目的はイギリス王になることだった。そのため、リチャードに退位するよう要求する。リチャードはこれに応じざるをえないと判断する。
リチャードは正式に王冠と王錫をヘンリーに渡して、王権を譲る。ヘンリーはイギリス王ヘンリー4世になる。リチャードは城に幽閉される。
このヘンリーの野心的行動に、貴族の一部が猛反発する。ヨーク公の息子たちは決起して、ヘンリーへの暗殺を企てる。ヨーク公がこれを知り、ヘンリーに密告する。息子への赦免を何度も懇願する。
ヘンリーは彼の息子を赦免するが、ほかの共謀者を逮捕させる。同時に、自身の王権がいまだに危うい状態にあると気づく。
エクストンがヘンリーを訪れる。ヘンリーは自身の権力が危うい中で、リチャードが厄介な存在だとエクストンにほのめかす。エクストンは退出する。
エクストンはそのまま城に向かい、リチャードを暗殺する。その遺体をヘンリーのもとにもっていく。ヘンリーは遺体を見て、リチャード暗殺は自身の意図ではなかったと言う。この暗殺が自身の罪ではない、と。
ヘンリーはエクストンを追放刑に処す。いとこで前王のリチャード殺しへの罪悪感から逃れるために、ヘンリーは聖地エルサレムへの巡礼を決める。
物語は『ヘンリー4世』へと続く。