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シェイクスピアの『テンペスト』

 『テンペスト』はイギリスの代表的な劇作家シェイクスピアの喜劇作品である。1611年に初演された。ロマンス劇の一つであり、イギリスの古典的名作として知られる。この記事では、あらすじを紹介する 。

テンペスト(The Tempest)のあらすじ

 物語の舞台は、ある島である。その島の近くを、ナポリ王アロンソやアントニオらが乗っている船が通過していた。アロンソは娘とアフリカのチュニス王子の結婚式の帰り道だった。だが、その船が嵐に襲われる。乗船者たちはみな船の沈没を覚悟する。彼らはその島へと流されていく。

 他方、その島にはすでに住人がいた。まず、プロスペロと娘のミランダである。二人は遠くから、その船が嵐に襲われるのをみている。ミランダはプロセペロに、哀れな乗船者をどうにか救ってほしいと頼む。 プロスペロは大丈夫だと断言する。

嵐に襲われる船

 プロスペロはミランダに、過去の話をする。プロステロはかつて、ミラノの正統な公爵だった。だが、12年前、上述のアントニオ(プロスペロの弟)とナポリ公爵アロンソが共謀して、プロスペロからその地位と財産を奪った。

 さらに、プロスペロとミランダを小舟に乗せて追放した。プロスペロとミランダは現在の島に漂着し、運よく生き残った。その際に、従者のゴンサロが物資と魔法書をプロスペロに渡していた。

 そのおかげで、プロスペロはいまや魔法を使えるようになった。この魔法を現在では島の生活で使用している。今回、弟アロンソとアロンソらがたまたまこの島の近くを通ったのが、プロスペロにとって幸運であった、と。

 プロスペロはこのように語り、ミランダを眠らせる。妖精アリエルを呼び出す。アリエルはプロスペロの命令で、アロンソらの船を嵐で襲っていた。その後、アロンソらをこの島に流れ着くように手配した。

 アリエルはプロスペロの命令を聞けば、プロスペロへの服従から解放されることになっていた。プロスペロはアリエルにたいし、自分以外には見えない姿になって、行動を再開するよう命じる。
 そもそもアリエルがプロスペロに服従していたのは、理由がある。プロスペロがこの島に到来する前、魔女シコラックスがアリエルを木の中に閉じ込めていた。シコラックスはアリエルを解放しないまま、死んでしまった。そこにプロスペロがやってきて、アリエルを解放した。そのかわりに、プロスペロに服従した。
 シコラックスにはキャリバンという息子がいる。キャリバンは醜い大男であり、現在、プロスペロの召使になっている。プロスペロのことを憎んでいる。

左から、ミランダ、プロスペロ、アリエル、キャリバン

 アロンソの一行が島に流れ着く。まず、ナポリ王アロンソの息子フェルディナントである。フェルディナントは単独で流れ着き、島の中を歩き回る。ミランダと遭遇する。ミランダはそれまで、プロスペロとキャリバン以外の男性を見たことがなかった。

 ミランダとフェルディナントは恋に落ちる。これはプロスペロの望むところだった。だが、すぐに結婚させようとはしない。

  他方、アントニオとアロンソらもまた島に上陸する。彼らには、ゴンサロとセバスチャンも一緒だった。セバスチャンはアロンソの弟であり、よってナポリ王の弟である。アロンソは息子のフェルディナントが一緒ではないため、死んでしまったのではないかと考える。今回の結婚の旅にこなければ、こんなことにはならなかった、と。
 そこに、アリエルは目に見えない姿でやってきて、セバスチャンとアントニオ以外を眠らせる。アントニオはセバスチャンにたいし、アロンソを今のうちに殺してしまえと説得する。

 なぜなら、フェルディナントが本当に死んでいるとすれば、アロンソが死ねば弟のフェルディナントこそ次のナポリ王になれるからだ。セバスチャンはこれに納得し、剣を抜く。アリエルが叫び声をあげ、ゴンサロらが目覚める。殺害は中止される。彼らはそのままフェルディナントの捜索を続ける。

 他方、キャリバンはプロスペロの命令で薪を取りにいく。そこに、船から道化師と召使が上陸してくる。キャリバンはトリンキュロをみて、プロスペロが意地悪のために送り込んできた妖精だと誤解する。

 そこで、マントの下に潜む。天候悪化により、トリンキュロもまたそのマントの下に避難する。ステファノがやってくる。キャリバンはまた新たな妖精が邪魔しにやってきたと思い込み、そのように応対する。ステファノらはキャリバンに酒をすすめ、一緒に飲む。キャリバンは酔っ払う。

 キャリバンはプロスペロへの復讐のための計画を考え、トリンキュロらを巻き込もうとする。キャリバンはプロスペロを殺害し、ミランダを奪い、ステファノをこの島の新たな王にすると提案する。ステファノらはこれに賛同する。アリエルはその計画を聞いて、戻って、プロスペロに報告する。

 その頃、フェルディナントは薪運びなどをしていた。ミランダのためだとおもい、あくせく働く。ミランダに話しかけるのをプロスペロに禁じられていた。だが、ミランダは父のすきをみて、フェルディナントに休憩をすすめる。二人は仲良く話し合う。

フェルディナントとミランダ

 ついにミランダが彼に愛を告白し、フェルディナントはこれを受け入れる。フェルディナントが望んでいる展開となった。フェルディナントは二人の婚約を祝して、若い二人のために、妖精たちに仮面劇を行わせる。

 その頃、アロンソ、ゴンサロ、セバスチャン、アントニオは引き続きフェルディナントを探し回っている。いよいよ探し疲れてくる。アロンソはフェルディナントが死んだに違いないと嘆く。

 アロンソたちは食事をしていると、アリエルが見えない姿でやってくる。かつてのプロスペロにたいする共謀について、アロンソやアントニオに責める。今回のフェルディナントの一件はその罪への罰だ、と。彼らはこのアリエルの声に慄き、逃げ去る。

 プロスペロはキャリバンらの陰謀の計画を知り、彼らを罰する。彼らが茨の茂みを通り、汚濁した池を泳ぐよう手配したのだ。その後、美しい衣服を罠として利用する。彼らがそれを盗もうとしたところで、犬に化けた妖精たちが彼らを追い立てる。こうして、彼らは懲らしめられる。

 次に、アロンソたちの番である。プロスペロはアロンソたちが自分のところにくるよう、アリエルを手配する。アロンソたちがやってくる。プロスペロはミラノ公爵の衣服をきて、アロンソらに、かつての共謀の罪を責める。

 アロンソらはかつての罪を謝罪し、もはやミラノ公爵の地位と財産にたいしてはなんの要求もしないという。プロスペロはアロンソを赦す。

 アロンソは今回の嵐でフェルディナントを失ったと嘆く。これにたいし、プロスペロは最近自分の娘を失ったと返答する。そのニュアンスを理解させるために、プロスペロはカーテンを引く。

 そこでは、フェルディナンドとミランダが仲睦まじくしている。 アロンソたちはフェルディナンドが生きていたことに驚く。 フェルディナンドはアロンソにミランダとの結婚の話をする。アロンソはそれを喜んで受け入れる。

 プロスペロは弟のアントニオと対峙する。アントニオはかつての共謀について謝罪しない。だが、プロスペロは彼を罰しないと約束する。

 プロスペロの命令で、キャリバンらが解放され、その場に加わる。キャリバンは過ちを謝罪する。彼らはみなで宴を開き、この島でのプロスペロの過去について話をする。

 その後、一行はみな帰国の途につく。アリエルは航海の無事を確かめるという最後の命令を受ける。

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参考文献

シェイクスピア『テンペスト』 河合祥一郎訳, KADOKAWA, 2024

※シェイクスピアの生涯と作品については、「シェイクスピア」の記事を参照

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