ヘシオドスの『神統記』

 『神統記』は古代ギリシャの詩人ヘシオドスの抒情詩。紀元前8世紀頃に制作された。世界の始まりから神々の戦いへと,ギリシャ神話の物語が語られている。この記事では、あらすじを紹介する(結末までのネタバレあり)。

『神統記』(Theogonia)のあらすじ

 この作品は芸術の女神たちへの呼びかけから始まり、この世界の始まりについて語る。始まりにおいては、ただ混沌と深淵だけがあった。その後、ガイア(地球)が誕生し、タルタロス (冥界) とエロスも誕生する。エロスは多くの神々を生むことになる。

 まず、ガイアとエロスの子どもとしてウラノス(天)が生まれる。そこから多くの神々のタイタン族が生まれる。その中には、クロノスがいる。ウラノスはタイタンを恐れたため、タイタンをガイアとともに洞窟に閉じ込める。
 ガイアとクロノスは協力してウラノスと戦う。クロノスはウラノスの性器を切断し、去勢することに成功する。クロノスはウラノスの性器を海に投げ込む。その結果、海の泡から女神アフロディーテが生まれる。
 ウラノスは去っていく。クロノスが神々の支配者となる。
 他の神々、ニンフ、怪物などの起源が説明される。有名なメドゥーサやハーピー、ケルベロス、キマイラ、スフィンクスなども登場する。
 女神ヘカテは人間たちの崇拝にこたえて、人間に政治や文化などの様々な恩恵を与えたとされる。また、ゼウスが上ステュクスの子孫をオリンポスに住まわせる。
 話題はクロノスに戻って来る。ウラノスに勝利したクロノスは女神レアを凌辱する。その結果、レアは結婚の女神ヘラ、冥界の神ハデス、海の神ポセイドンなどを生む。
 クロノスは自身の子供によって打ち負かされるという予言を受ける。これを恐れたため、これらの子どもたちを飲み込んでしまう。だが、レアはクロノスとの子どものゼウスを密かに産み、ガイアに委ねる。
 ゼウスは成長する。クロノスが飲み込んだすべての子供たちを吐き出させるのに成功する。その結果、彼らの王となり、彼らから雷を与えられる。雷がゼウスの象徴となる。

 話題はゼウスとタイタン族に移る。ゼウスが彼らの傲慢さを罰することになる。有名なエピソードもみられる。たとえば、ゼウスを怒らせたアトラスが世界を自身の両肩で支えなければならなくなる。

アトラス

 ほかに、プロメテウスのエピソードである。プロメテウスは食事の際にゼウスを欺こうとして見破られ、怒りを買う。さらに、人類のために火を盗んで与える。その結果、彼は岩山に鎖で縛られ、毎日、鷲に肝臓を食べられるという罰を受ける。

プロメテウス


 ほかにも、パンドラの箱で有名なパンドラについても語られる。
 次に、物語は神々の戦いに移る。上述のように、クロノスは自分の子供に打倒されると予言されていた。それがゼウスによって実現されることになる。
 クロノスとタイタン族は、ゼウスとその兄弟の神々と戦うことになる。その際に、ゼウスはウラノスの子孫の神々の支援を得ようとして、成功する。
 神々の戦いが始まる。天と地、海で壮絶な大決戦が繰り広げられる。ゼウスが勝利する。クロノスとタイタン族を冥府へと閉じ込める。


 冥府はハデスとペルセポネが支配している。ケルベロスが番犬をつとめている。ケルベロスは新参者を喜んで迎えいれる。だが、出て行こうとする者は誰でも喰らい尽くす。
 ゼウスがクロノスとタイタン族に勝利した後、ガイアの末っ子たるテュフォンがゼウスに挑戦する。テュフォンは台風(タイフーン)の語源であるように、大嵐などの天災をもたらす怪物である。ゼウスたちはこの凶暴な怪物と戦い、どうにか勝利する。
 最後に、ゼウスの子孫について語られる。そこには神々だけでなく英雄も含まれる。
 ゼウスは多くの妻をもった。最初の妻メティスとの間に、女神アテナをもうける。レトとの間に、音楽や医療の神アポロン、貞節と狩猟の女神アルテミスをもうける。第一夫人で妹ヘラとの間に、戦いの神アレスなどをもうける。女神マイアとの間に、ヘルメスをもうける。人間の女性セメレとの間に、酒と恍惚の神ディオニュソスをもうける。

ゼウスとヘラ

 有名な英雄としては、ヘラクレスがゼウスとアルクメネから生まれる。アキレスは海の神々の子孫であると語られる。人間の男性アンキスはアフロディーテから、アエネアスが生まれる。

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ヘシオドス『神統記』廣川 洋一訳, 岩波書店, 1984

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