『テレーズ・ラカン』は近代フランスの代表的な作家ゾラの初期の代表作。1867年に公刊された。
エミール・ゾラの『テレーズ・ラカン』(Thérèse Raquin)のあらすじ
テレーズは幼い頃、母をなくした。父がテレーズを叔母のラカン夫人のもとに預けたので、テレーズは叔母の家で生活するようになった。叔母とその息子のカミーユとの3人暮らしだった。
カミーユは病弱だったので、叔母はカミーユ中心の生活を送った。叔母は雑貨屋を営んでいた。いつかカミーユとテレーズに結婚してほしいと考えていた。テレーズはその願いに気づいていた。
テレーズはカミーユと、愛を感じることのないまま、結婚する。カミーユがパリに引っ越したいという。ラカン夫人はこれを受け入れ、3人はパリに引っ越す。ラカン夫人はパリで雑貨屋を始める。テレーズはこれを手伝い、カミーユは別の事務所で働き始める。
一家は木曜日の夕方に客人を迎えてささやかな晩餐会をするようになる。そこには、元警察官のミショーと息子で現警察官のオリヴィエなどが招待される。テレーズはこの晩餐会も含めて、パリでの生活を退屈に感じている。
ある日、カミーユは木曜晩餐会に、同僚で幼馴染のローランを連れてくる。これが物語を大きく動かすことになる。
ローランは仕事で出世している。そのため、カミーユとラカン夫人の羨望の的になっている。だが、ローラン自身は享楽的な性格であり、ほんとうは今の仕事よりも裸の女性だけ描いて画家としてやっていきたいという。
それまで退屈な人生を送っていたテレーズは、ローランに大きな衝撃を受ける。ローランに急速に惹かれていく。ローランはそのことに気づく。ローランはカミーユの肖像画を描きたいといい、それからラカン邸に通うことにする。
ローランは肖像画を完成させる。その夜、ローランはテレーズとはじめて二人きりになる。二人は情事をはじめ、不倫関係になる。ローランは口実をつくっては仕事中に事務所を抜け出て、テレーズと密会する。情事は続いていく。
ラカン夫人とカミーユはそれに気づかない。だがついに、会社がローランに激怒する。もう一度抜け出たら、解雇すると彼に通知する。そのため、ローランはテレーズと密会できなくなる。
ローランは木曜の晩餐会などには参加し続ける。そのため、ローランはテレーズと会い続けたが、二人きりにはなれない。二人の欲求は高まっていく。
ついに、テレーズが口実を作って外出し、ローランの家にやってくる。二人の情熱が燃え上がる。激しく愛し合う。その後、二人はどうしたら一緒に幸せに暮らせるかを話し合う。その結果、カミーユが邪魔だという結論に落ち着く。カミーユを排除するために、殺すという案がでてくる。
テレーズはカミーユと日曜日に散歩する習慣があった。ローランはこれを利用する。三人でセーヌ川沿いにきた時に、一緒にボートに乗る。水が怖いカミーユを、誰も見ていないところで川に突き落とし、殺す。カミーユは最後の抵抗でローランの首に怪我を負わせるが、死ぬ。
ローランはボートを転覆させ、自己を装う。周囲の人達に助けられる。周囲の人達はローランの説明を信じ、カミーユの事故死だと思う。
ラカン夫人はカミーユの死を知り、悲嘆に暮れる。テレーズとローランは怪しまれないようにするために、当面は結婚せず、会う頻度も減らすことにする。
カミーユの遺体はなかなか発見されない。ローランは首の傷に苦しみながら、彼を殺したことで心を苦しめられる。テレーズも気がおかしくなりそうになる。ベッドで寝て過ごす日々が続く。
だが、ほどなくして、ローランとテレーズはそれぞれ日常生活を取り戻す。ラカン夫人は雑貨屋を再会するが、精神的にまいっている。ローランとテレーズはまだ合わないようにしている。ローランは享楽のために、若いヌード・モデルと関係を始める。
だが、彼女と別れる。ローランはいよいよテレーズを求め始める。テレーズは慎重だった。だが、15ヶ月待ったということで、二人は関係を再会する。
ミショーはラカン夫人に、テレーズの再婚相手を探すよう助言する。ラカン夫人は相手探しで悩む。ミショーはローランを推薦する。そこで、ローランとテレーズの結婚が決まる。
結婚式が近づくにつれ、カミーユのことが頭を離れなくなっていき、テレーズとローランは精神的におかしくなっていく。いざ二人が一緒に暮らすようになっても、状況は変わらない。二人は過去の行いに苦しみ続ける。
ついに、二人はこうなってしまった原因をめぐって、互いを憎み始める。ローランは別のアパートをかりて、昼間はそこに移る。
ラカン夫人は発作を起こし、麻痺に陥る。テレーズとローランはラカン夫人のおかげでどうにか場の空気を保っていたため、この状況に困惑する。ラカン夫人の介護をする。
だが、二人は喧嘩するようになり、これは日増しに悪化する。ついに、ラカン夫人がいることを忘れて、喧嘩中にカミーユを殺したことを口にしてしまう。ラカン夫人は衝撃を受ける。
木曜晩餐会で、ラカン夫人は殺人の事実をミショーらに伝えようとする。だが、麻痺のせいでうまく伝えられない。
テレーズとローランの喧嘩はひどくなっていく。ローランはテレーズに暴力をふるうようになる。ラカン夫人は食事の拒否によって死のうと考えるが、これが二人にとって好都合だと思い、やめる。
テレーズとローランは互いを殺そうと思うに至る。ローランはテレーズを毒殺しようとする。テレーズはローランを刺し殺そうとする。だが、互いにそれに気づいたため、実行されなかった。
二人はもう互いに幸せになれないと確信する。抱きしめ合って涙を流す。一緒に服毒自殺をする。