『タイタス・アンドロニカス』はイギリスの代表的な劇作家シェイクスピアの作品。シェイクスピアの作品の中でも際立って残酷な物語である。
シェイクスピアの『タイタス・アンドロニカス』(Titus Andronicus)のあらすじ
舞台は古代ローマである。ローマの将軍タイタス・アンドロニカスはゴート族との長い戦争から返ってくる。この戦争で、自身の多くの息子を失った。その代わりに、ゴート族の女王タモラ、その3人の息子、ムーア人のアロンを捕虜として連行する。
ローマの儀式として、タイタスは自分の戦没した息子たちのために、タモラの息子の一人を犠牲に捧げる。そのため、タモラはタイタスへの復讐心に燃えるようになる。
この頃、サトゥルニヌスが新たなローマ皇帝になる。タイタスは彼に仕え、タモラとその二人の息子を彼に差し出す。
サトゥルニヌスは彼の兄弟のバシアヌスと花嫁候補をめぐって対立する。一悶着が起こったあの地、サトゥルニヌスはタモラを皇后に選ぶ。彼はタモラとその二人の息子、アロンを解放する。
アロンはタモラとひそかに恋仲になる。
タモラの息子たちはタイタスの娘ラビニアと結婚しようとして、口論する。アロンはそこにやってくる。アロンは彼らに、ラビニアを強姦するよう提案する。
森での狩りの日、アロンはタモラとの一連の計略を実行する。アロンは穴を掘って、金塊を埋める。さらに、タモラの息子たちを使って、皇帝の弟バシアヌスをひそかに殺し、遺体を金塊の近くの穴に捨てる。
アロンはタイタスの息子たちをその穴におびき寄せ、落とす。そこに皇帝サトゥルニヌスを導く。サトゥルニヌスは穴にバシアヌスの死体と金塊、そしてタイタスの二人の息子を見つける。かくして、二人が金塊のためにバシアヌスを殺したと思い込む。
他方、タモラの息子たちはタイタスの娘ラヴィニアを捕まえ、強姦する。自分たちが犯人であることが発覚しないよう、ラヴィニアの手と舌を切り落とす。
タイタスは二人の息子がバシアヌス殺しの容疑者になって、ショックを受ける。皇帝サトゥルニヌスに、息子たちの命を救うよう懇願する。タイタスのもう一人の息子ルキウスも同様にしたが、そのために追放刑に処される。タイタスは手と舌を切断されたラヴィニアと再会する。
アロンがタイタスのもとにやってくる。アロンがこれらの事件の首謀者であることはまだ周知されていない。アロンはタイタスにこう追い打ちをかける。
もしタイタスの家族の誰かが手を切り落として皇帝に送れば、二人の息子たちの処刑は見送られるかもしれない、と。タイタスはこれを信じ、自分の手を切り落として、皇帝に送る。そのかわりに、タイタスは息子たちの切り落とされた首と自分の手を(送り返されて)受け取る。
タイタスは次第に精神を病んでくる。ラビニアを強姦した犯人が誰かを知ろうとする。ラビニアはどうにかしてこれをタイタスに教える。
その頃、タモラがアーロンとの子供を生む。タモラは皇后であるので、子供はサトゥルニヌスとの子供でなければならない。だが、実際は、愛人となったアーロンとの子供だった。というのも、その肌は黒かったためである(ムーア人は黒人として知られていた)。
タモラはアーロンとの不義が露見されるのを恐れた。そこで、生まれた子供を殺すよう命じる。だが、アロンは乳母を殺して、子供を救い、逃亡する。
その頃、タイタスの追放された息子ルキウスはゴート族のもとに移り、ローマとの戦争の準備をしている。アーロンと赤ん坊はここに連れてこられる。ルキウスは赤ん坊の命を救うと約束する。そのかわりに、バシアヌス殺害の真相をアロンから聞く。
他方で、タイタスは皇帝にナイフを送りつけるなど、一見して気が狂ったような行動をとる。タモラが彼を訪ねてくる。ゴート族のローマ攻略を止めるよう求める。二人の息子をタイタスのもとに残し、立ち去る。
タイタスはラビニア強姦の復讐として、タモラの息子たちを殺す。
タイタスはサトゥルニヌスとタモラを晩餐に招待する。タイタスは彼らに肉のパイなどをふるまう。タイタスは娘を恥辱から守るためなら殺した方がよいという逸話を語る。サトゥルニヌスはこれに同意する。タイタスは同席していたラビニアを殺す。
ラビニアにそのような恥辱を与えたのは誰か。それがタモラの息子たちだということを、タイタスは説明する。サトゥルニヌスは息子たちを呼び出すよう命じる。
タイタスは息子たちがもうここにきているという。そう、息子たちは彼らが食べているパイである、と。タイタスはタモラを殺す。サトゥルニヌスは憤慨し、タイタスを殺す。サトゥルニヌスも殺される。
タイタスの息子ルキウスはこれらの出来事を知る。これらの黒幕は投獄中のアロンだと説得される。ルキウスは新たな皇帝となる。アロンは罪を悔い改めないとして、生き埋めに処される。
タイタスとラビニアは国葬が営まれ、タモラの死体は動物の餌として投げ捨てられる。