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シェイクスピアの『十二夜』

 『十二夜』はイギリスの代表的な劇作家シェークスピアの喜劇。1601年頃に初演され、1623年に公刊された。嵐で難破した双子の兄妹が、とある宮廷での恋愛にそれぞれの仕方で関わり、ドタバタの騒動を起こしながら、恋を実らせる物語 。

『十二夜』(Twelfth Night)のあらすじ

 物語の舞台はイリュリア王国である。この国のオーシーノ公爵という貴族がオリヴィアという淑女への恋を抱いている。だが、オリヴィアは兄の死を悼み、長らく誰とも会おうとしない。そのため、オーシーノは恋を実らせることができず、つらい日々を送っている。

 他方、若い貴族の双子の兄妹のヴァイオラとセバスチャンが船旅をしている。だが、嵐によって難破してしまい、離れ離れになる。
 ヴァイオラはイリュリア王国の海岸に流される。セバスチャンがきっと死んでしまったと思い、悲しむ。ヴァイオラは船長にイリュリア王国のオーシーノとオリヴィアの話を聞く。生きていくために、身分を隠して、男性に変装して、小姓としてオーシーノのもとで働こうと決める。そこで、ヴァイオラはセザーリオと名乗る。

 ヴァイオラはオーシーノに気に入られ、小姓として雇われる。ヴァイオラはオーシーノに恋をする。だが、男性に扮しているため、オーシーノに求愛することができない。オーシーノはヴァイオラの恋心に気づかない。
 ある日、オーシーノはヴァイオラに重要な用事を頼む。愛すべきオリヴィアへの彼の愛を伝えることである。ヴァイオラはオーシーノへの恋を成就させるどころか、そのオーシーノからオリヴィアへの愛を伝えるという役目を受けたのである。
 ヴァイオラは男性に扮したまま、オリヴィアに会い、この任務を遂行する。だが、オリヴィアはオーシーノの求愛には応じない。それどころか、若くして容貌の優れたヴァイオラを男性だと思い込み、ヴァイオラに恋をしてしまう。
 ヴァイオラは当惑する。思いがけない三角関係が生じたからである。ヴァイオラは主人のオーシーノに恋をし、オーシーノはオリヴィアに、オリヴィアは男性としてのヴァイオラに恋をしている。

 他方、オリヴィアの邸宅では、彼女の親類や従者たちがサブ・ストーリーを展開し始める。オリヴィアの叔父のサー・トビーらはオリヴィアの横柄な執事マルヴォーリオの日頃の振る舞いに苛立っている。

マルヴォーリオ

そこで、オリヴィアの侍女マリアがマルヴォーリオをからかおうとして、いたずらを思いつく。
 それは、オリヴィアがマルヴォーリオに恋をしていると彼に勘違いさせるというおものだ。そのために、マリアはオリヴィアからMAOIという略称の人物に宛てた手紙を偽造する。
 そこでは、こう指示が書かれている。もし手紙の名宛人(MAOI)がオリヴィアの愛を受け入れるなら、そのしるしとして、黄色いストッキングとガーターを身につけて、横柄に振る舞い、常に微笑むように、と。もしなぜそのようなことをしているのかを尋ねられても、誰にも答えないように、と。

 マルヴォーリオはその手紙を見つける。マリアの狙い通りに、彼はそれが自分宛てだと思い込む。オリヴィアの恋に有頂天になり、手紙の指示に従う。マルヴォーリオの振る舞いが明らかに変であるので、オリヴィアは彼が気が狂ったと思うようになる。

指示通りに振る舞うマルヴォーリオと、笑いをこらえるマリア、あきれるオリヴィア

 他方、この物語の冒頭で難破していたヴァイオラの双子の兄セバスチャンはどうなったのか。彼はイリュリアのアントニオという人物に難破船から救助された。その後、アントニオのもとで世話になっていた。
 セバスチャンはヴァイオラが嵐で死んでしまったと思い、嘆く。アントニオがセバスチャンに執着する中で、セバスチャンはオーシーノの領地にやってくる。アントニオはセバスチャンを追いかける。
 他方、オリヴィアの邸宅では、サー・アンドリューがオリヴィアに恋をしている。もちろん、オリヴィアは男装のヴァイオラに恋をしている。アンドリューはそのことに気づき始め、ヴァイオラに決闘を申し込む。
 ヴァイオラは決闘の申し出に当惑し、これを回避しようとする。だが、アンドリューがヴァイオラ襲いかかろうとする。そこに、アントニオがやってきて、ヴァイオラを助けようとする。ヴァイオラはその隙に逃げる。
 セバスチャンがそこにやってくる。セバスチャンはヴァイオラと双子であり、顔が似ている。ヴァイオラは男装していたので、ほぼ同じ姿をしていた。そのため、アンドリューはセバスチャンをヴァイオラだと思い込み、決闘を開始する。
 セバスチャンは急に見知らぬアンドリューに襲われて困惑するが、自己防衛する。その間に、オリヴィアがそこに現れ、戦いを止めさせる。オリヴィアはセバスチャンをヴァイオラだと思い込み、求愛する。
 セバスチャンは見知らぬオリヴィアの求愛に当アクする。だが、オリヴィアの美しさに惹かれる。さらに、オリヴィアが裕福な淑女だと知る。そのため、オリヴィアの求愛に応じる。

 その頃、アントニオはオーシーノの警備隊に捕まる。アントニオはオーシーノと長年敵対していた人物だからである。アントニオはそこにいたヴァイオラをセバスチャンだと勘違いし、ヴァイオラに助けを求める。
 だが、ヴァイオラはアントニオと初対面であり、知らない人物だとう。アントニオはヴァイオラを裏切り者と叫びながら、追放される。アントニオの話しぶりから、ヴァイオラは兄が生きているかもしれないと思う。ヴァイオラはオーシーノの邸宅に戻る。

 他方、オリヴィア邸では執事マルヴォーリオへのいたずらが続く。オリヴィアは彼が狂ってしまったと思っている。マリアやトビーはそれに同意したふりをする。彼らはマルヴォーリオを治療の一環として、暗い独房に閉じ込める。そこで、彼を嘲笑するなどして、普段の仕返しをする。
 トビーは十分だと考え、マルヴォーリオがオリヴィアにそこから解放するよう求める手紙を書かせる。
 他方、オーシーノは男装したヴァイオラを連れて、自ら、オリヴィアの邸宅にやってくる。オリヴィアはヴァイオラをみて、セバスチャンだと思い込む。セバスチャンはオリヴィアの求愛を受け入れていたので、オリヴィアはセバスチャンの妻として振る舞う。
 上述のように、オーシーノは自分の従者たるヴァイオラを、オリヴィアへの自分の愛を伝えさせるためにオリヴィアのもとに派遣していた。ところが、オリヴィアはヴァイオラを夫とみなしている。オーシーノはこの事実に当惑し、激怒する。
 もちろん、ヴァイオラもまたなぜオリヴィアがそのように振る舞うのかわからず、当惑する。しかも、主人で愛すべきオーシーノに激怒され、さらに困惑する。

 そこに、セバスチャンがやってくる。全てが明らかになる。セバスチャンとヴァイオラは再会を喜ぶ。オーシーノはヴァイオラが女性だと知って、驚く。だが、自分がヴァイオラを愛していると気づく、求愛する。ヴァイオラの恋もこうして成就する。トビーとマリアも密かに結婚していたことが分かる。
 マルヴォーリオが独房にいることに気づいて、彼が解放される。彼へのいたずらも露見される。マルヴォーリオは激怒し、立ち去る。
 新たな夫婦たちの結婚の祝宴が準備される。

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シェイクスピア『十二夜』河合 祥一郎訳, 岩波書店, 2011

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