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シェイクスピアの『ヴェローナのニ紳士』

 『ヴェローナのニ紳士』はイギリスの代表的な劇作家シェイクスピアの作品。16世紀末に制作された。ヴェローナの二人の紳士は親友だ。一人がミラノへ旅立つ。もう一人は恋人のためにヴェローナに留まろうとするが、まもなくミラノへ旅立つ。二人の紳士はミラノ公爵の娘に恋する。すでに恋人のいる紳士は、彼女への愛と、親友への友情を犠牲にして、公爵の娘にのめり込んでいく。その果てに待つものとは・・・。

シェイクスピアの『ヴェローナのニ紳士』( The Two Gentlemen of Verona)のあらすじ

 イタリアのヴェローナの二人の紳士、ヴァレンタインとプロテウスは親友である。ヴァレンタインは見聞を広めるために、旅に出ると決めた。プロテウスは愛するジュリアのために、ヴェローナにとどまる。そのため、二人の親友はしばしの別れを惜しむ。ヴァレンタインはミラノへ向かう。
 プロテウスからジュリアへの恋文が届けられる。ジュリアには、多くの求婚者がいた。ジュリアは召使に、どの求婚者がいいかと問う。召使はプロテウスを勧める。
 そのとき、召使がプロテウスからの恋文を受け取っていたことがわかる。ジュリアは召使と口論になり、その恋文を勢いで破ってしまう。だが、そのことをすぐに後悔する。
 プロテウスの父は、プロテウスの将来を案じている。(この時代、旅には人を成長させる教育の役割があると考えられていた。10代の若い貴族が特に教育の重要な段階として旅にでた)。プロテウスの父はプロテウスを旅にいかせて、成長させるべきだと考えた。
 そこで、プロテウスの父はプロテウスをミラノへ旅させることに決めた。プロテウスはジュリアへの未練があったが、しぶしぶ旅立つことに同意する。ジュリアとは、変わらぬ愛のしるしとして、指輪を交換する。
 ミラノでは、ヴァレンタインはミラノ公爵の宮廷に出入りしている。公爵の娘シルヴィアに恋をする。シルヴィアもまたヴァレンタインに惹かれる。ひそかに匿名の恋文を執筆させ、ヴァレンタインに届けさせる。
 プロテウスがミラノに到着し、公爵に艦隊される。公爵はすでにヴァレンタインからプロテウスのよい噂を聞いていた。プロテウスは同席していたシルヴィアに心を奪われる。
 プロテウスはヴァレンタインと再会する。ヴァレンタインはプロテウスに、シルヴィアに恋しており、結婚するつもりだという。だが公爵の同意を得るという問題もあるため、駆け落ちする計画だと打ち明ける。
 これにたいし、プロテウスは自分が同じくシルヴィアに恋していることをヴァレンタインには言わない。むしろ、シルヴィアへの恋の情熱がヴァレンタインとの友情に上回る。もちろん、プロテウスはこの新たな恋はジュリアへの裏切りだということを自覚している。
 その頃、ジュリアはプロテウスと離れ離れになっているのが耐えられなくなる。決意して、ミラノまで彼を追いかけることにする。女性の一人旅は危険なので、男装して出発する。
 その頃、プロテウスは公爵に、ヴァレンタインがシルヴィアと駆け落ちするつもりだと教える。公爵はこの計画に驚き、半信半疑である。そこで、ヴァレンタインを呼び出し、遠回しにこれが本当かを探る。
 ヴァレンタインが計画をうっかりもらす。公爵は激怒し、ヴァレンタインを追放刑に処す。こうして、プロテウスは親友ヴァレンタインをシルヴィアから引き離すのに成功する。
 公爵はシルヴィアがヴァレンタインに惹かれていることに気づいていた。そこで、ヴァレンタインへの未練をなくすよう、ヴァレンタインが実は卑しい悪い男だったという嘘をシルヴィアに教える。同じ嘘を彼女に教えるよう、プロテウスに依頼する。プロテウスはためらったが、同意する。
 公爵はシルヴィアの花婿候補として、トゥリオという貴族を選ぼうとしていた。トゥリオとプロテウスはシルヴィアの愛を勝ち取るために、シルヴィアの部屋の窓の下で、彼女への愛の詩を朗唱することになる。
 プロテウスが実際にそうしているとき、ヴェローナから到着したジュリアが物陰からそれをみていた。ジュリアはひどく傷つく。
 他方で、ヴァレンタインはマントヴァに行こうとして、移動する。だが、無法者の集団に捕まる。彼らはもともと紳士だったが、色欲の罪で追放に処された者たちだった。彼らは力づくでヴァレンタインを自分たちの首魁にさせる。
 シルヴィアはヴァレンタインのことが諦められなかった。そこで、友人に同伴してもらいながら、マントヴァを目指す。
 プロテウスは男装したジュリアと会う。「彼」がジュリアだと気づかない。シルヴィアに贈り物を渡してほしいといって、変装したジュリアに指輪を渡す。それは、かつてプロテウスがジュリアと愛を誓いあった時に交換した指輪だった。
 ジュリアは深く傷つき、そのまま言う通りにしようとして、これを引き受ける。だが、それでもプロテウスを諦められなかった。ジュリアは言う通りに指輪をシルヴィアのもとにもっていく。
 だが、ジュリアはシルヴィアにこの贈り物を断るよう仕向ける。正体を明かさないまま、これがプロテウスへのジュリアという女性のプレゼントしたものだったことを知らせる。シルヴィアはそれを聞いて、指輪の受け取りを拒否する。
 シルヴィアは友人とともに、マントヴァへの移動を開始する。だが、森を通っている時に、上述の無法者の集団に捕まる。友人は逃げてしまう。
 公爵はシルヴィアがいなくなったのに気づき、捜索隊を組織する。プロテウスとトゥリオ、変装したジュリアがこれに参加する。
 プロテウスが無法者の集団を発見し、シルヴィアが捕まっているのを見つける。無法者を蹴散らし、シルヴィアを救う。だが、シルヴィアは公爵のもとに戻りたくない。
 プロテウスはシルヴィアに、解放した見返りを求める。シルヴィアの愛を得ようとする。だが、シルヴィアは拒否し続ける。無法者の頭のヴァレンタインはそのやりとりを物陰から見ている。プロテウスはシルヴィアに無理やり迫ろうとする。ヴァレンタインがついに出てきて、それを制止する。

プロテウスはすぐにその暴挙を謝罪する。ヴァレンタインは彼への友情を失っていなかったので、彼を赦す。
 それまでの経緯を受けて、ジュリアがついに正体をあかし、プロテウスの不実さを責める。プロテウスはジュリアにも赦しを請う。
 そこに、公爵やトゥリオたちがやってくる。トゥリオはシルヴィアを自分のものだというが、ヴァレンタインの威勢に怖気づく。公爵はヴァレンタインに頼もしさを感じて、シルヴィアとの結婚を許可する。
 ヴァレンタインとシルヴィア、プロテウスとジュリアの結婚式が行われることになる。

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シェイクスピア『ヴェローナのニ紳士』小田島 雄志訳、白水社、1983年

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