『二人の貴公子』はイギリスの代表的な劇作家シェイクスピアの作品。古代ギリシャを背景に、二人の若い貴族が一人の女性をめぐって織りなす物語。意外な結末が待っている。
シェイクスピアの『二人の貴公子』(The Two Noble Kinsmen)のあらすじ
舞台は古代ギリシャである。プロローグで、この作品は中世イギリスの文豪チョーサーの作品に由来するものだと説明される。
古代ギリシャのアテネでは、新婚のテセウスと花嫁ヒッポリタが結婚式をあげようとしている。そこに、3人の女王がやってくる。彼女たちの夫はテーベ王クレオンに殺害され、遺体がそこに放置されている。クレオンがその埋葬を許さないためだ。
彼女たちはこれを不当だと訴え、テセウスにクレオンと戦争するよう訴える。ヒッポリタやエミリアらも彼女たちに味方し、彼を説得する。テセウスは同意し、テーゼへと出軍する。
クレオンは評判の悪い王である。そのため、彼らの甥のパラモンとアルシテは、テーベを離れようと話し合う。そこに、アテネからテセウスがせめてくるという知らせが届く。仕方なく、二人はテーベを守ることを決める。
テセウスはテーベを陥落させるのに成功する。女王たちは夫の遺体を埋葬できた。アルシテとパラモンは重症を負う。テセウスは彼らが貴族だとわかり、アテネに連れ帰って、治療を受けさせる。
アテネでは、アルシテとパラモンは監獄の中で傷を癒やす。二人は自分たちの運命を憂う。だが、二人で同じ牢獄に入れられたことを不幸中の幸いだと喜ぶ。
ある日、エミリアがたまたま牢獄の下を通る。パラモンは彼女をひと目見て恋に落ちる。それをアルシテに伝える。アルシテも同じようにエミリアに一目惚れする。仲の良かった二人はこうして恋敵になる。物語はここから本格化していく。
テセウスはアルシテを釈放すると同時に、追放刑に処す。だが、あるしてはエミリアのことを忘れられない。そのため、ひそかに近隣の森に潜む。
そのころ、アテネでは競技大会などが開催荒れる予定だった。アルシテはどうにかしてエミリアに近づくために、変装してそれに参加しようと決める。これに参加して見事な成績をおさめ、エミリアの召使になることを認められる。
他方、パラモンは一人で牢獄にいる。看守の娘がパラモンに恋をする。パラモンと相思相愛になりたいと思う。いけないことだが、パラモンをどうにか牢獄から脱出させる方法を探す。
娘はパラモンを脱出させて森に連れ出し、とりあえずそこで待たせる。娘は一度アテネに戻る。食料などをとってきて、その後に一緒に国外に逃げるつもりだ。
パラモンは言われたとおりにせず、森の中を移動し始める。他方、アルシテは行事の一環で、召使として森にきている。二人がばったり出会う。二人はエミリアをめぐって言い争う。エミリアがどちらのものか、決闘で決めることになる。
だが、パラモンがまだ衰弱しているので、回復した後だ、と。アルシテは彼に食べものを与え、回復するまでその場を離れる。
他方、看守の娘が森に戻ってくる。パラモンが見当たらない。猛獣に食われたのだと思い込む。そのとき、自分がパラモンを脱獄させたことで、父の看守が処刑されてしまうと恐れる。絶望に襲われ、気がおかしくなる。森をさまよい始める。
その頃、森では、近隣住民たちがテセウスに披露する出し物の準備をする。だが、女性メンバーが一人足りないことに気づく。そこに看守の娘が通りかかる。メンバーに加わることになる。テセウスが到来し、彼らの踊りなどを楽しむ。
アルシテとパラモンは決闘を始めようとする。そこに、テセウスの一行が通りかかる。追放したはずのアルシテが居残っているのに気づき、激怒する。彼らを処刑しようとする。
エミリアが彼らの命を助けるよう説得する。テセウスは同意する。かわりに、彼らが来月アテネにきて、そこで戦うよう命じる。勝者にエミリアを、敗者んに死を与える、と。彼らは同意する。
他方、看守はパラモンの脱獄について、パラモンがテセウスに懇願したことにより、恩赦を与えられ、助かる。だが、娘は気がおかしいままである。看守は医者に相談する。
娘には求婚者がいる。医者は求婚者に求婚を続けるよう指示する。そのさいに、パラモンのふりをしてそうするように、と。娘はパラモンに求愛されていると勘違いし、それを受け入れる。精神が次第に回復し、もとに戻っていく。
ついに、戦いの日がくる。アルシテとパラモンはアテネにやってくる。戦いの前に、それぞれが神に祈る。アルシテは勝利を戦いの神マルスに、パラモンは愛を愛の女神ヴィーナスに祈る。エミリアはどちらかを決めることができぬまま、女神ダイアナに祈る。
戦いが始まる。エミリアは戦いを直視できない。召使が展開を報告する。最終的に、アルシテの勝利が宣言される。テセウスがアルシテをエミリアのもとに連れていき、結婚を認める。同時に、パラモンの処刑が予告される。
処刑のために、パラモンが森に連行される。斬首刑の準備が進められる。首を切り落とす、まさにその時、使者がやってくる。
使者は処刑の中止を求める。アルシテが落馬事故で瀕死の重傷だという。テセウスやエミリアらがやってくる。アルシテが運ばれてくる。
アルシテはパラモンの恋を知ったあとに自分が彼女をとろうとしたことが間違いだったといい、パラモンに詫びる。エミリアの夫になるよう託して、息を引き取る。
テセウスは神への祈りがそれぞれ実現したと感じる。アルシテは勝利を、パラモンは愛をえた。アルシテの葬儀の後に、パラモンとエミリアの結婚式を行うと宣言する。