ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』

 『海底二万里』は19世紀フランスの作家ジュール・ヴェルヌの代表的な小説である。SF小説の古典的名作として知られる。この記事では、そのあらすじを紹介する(結末までのネタバレあり)。

『海底二万里』(Vingt mille lieues sous les mers)

 物語の背景

 物語の舞台は1866年である。物語の背景として、二点だけ言及しよう。

 第一に、この時期には、科学者が科学調査のために船に乗って科学探検旅行を行うようになっていたことである。たとえば、1830年代には、チャールズ・ダーウィンがこのような科学探検旅行を行い、その成果を有名な『種の起源』として発表した。この物語の主人公も同様の科学者だと想定できる。
 第二に、1861年にアメリカ合衆国で南北戦争という内戦が起こった。有名な大統領アブラハム・リンカーンが奴隷解放宣言を行い、1865年に内戦を終わらせた。だが、その年に暗殺された。この物語はその翌年、1866年という設定である。

 あらすじ

 1866年の夏、世界各地で巨大生物が船を襲うという問題が起こった。アメリカ海軍の提督はそれに対処するよう任務を与えられる。提督はパリの海洋学者アロナックス教授とその弟子コンセイユに協力を求める。アロナックスがこの物語の主人公である。さらに、提督は銛打ち名人のランドにも協力を求める。
 かくして、提督と3人はアブラハム・リンカーン号に乗って、ニューヨークを出港する。太平洋にて、彼らは例の怪物に遭遇し、襲われる。アロナックスとコンセイユ、ランドは海に叩き落される。彼らはその生物にしがつつくうちに、これが実は潜水艦だと気づく。潜水艦の壁を叩き、中に入れてもらう。

 潜水艦はネモ船長のノーチラス号であった。ネモ船長は外部の社会に敵意を感じており、復讐心を抱いている。ほかにも、船員が彼のもとで働いている。

 アロナックスらはネモ船長に紹介される。ネモは彼らに、船内では自由に行動してよいという。ただし、船から出ていく自由はない。食事なども十分に提供される。
 船内は快適な環境であった。船はなんと電気で動いており、石炭などの海洋資源で自給自足の生活をしている(ちなみに、この時代はまだまだ電気が実用化されていない)。船内には美術品や娯楽品もある。ただ、空気を取り込むために、時折浮上する必要がある。

 ここから、アロナックスらはニモ船長の海底旅行に同行することになる。アロナックスはそもそも海洋学者であり、海の世界については興味津々である。この時代、人類は海底についてはほとんど知らないに等しい。ネモのノーチラス号は海底の美しく興味深い光景をアロナックスにみせる。潜水服を来て、海底散歩を行うこともあった。
 このように高度に発展したノーチラス号でも、座礁することはある。オーストラリアで座礁したときには、一時的に陸地にあがった。原住民との交流も描かれる。
 そこから2年ほどが経過する。一行は引き続き世界の海を移動し続ける。紅海と地中海をつなぐ海底の道を通る。
 一行は海底旅行の名勝ともいうべき、失われたアトランティス大陸の見物にいく。興味津々でこの失われた伝説の都市をみてまわる。そのほかにも、真珠を採取したり、かつての沈没船から財宝を回収したり、クジラを捕獲したりする。
 一行は南極大陸を目指す。そこは氷の美しい世界だった。だが同時に、氷山に囲まれてノーチラス号の移動が阻まれ、空気不足で死ぬ恐れもあった。それでも、ニモは南極大陸への移動を試み、到達する。そこに旗を立て、南極到達を宣言する。
 だが、戻り道に、氷山が倒れてきて、ノーチラス号は移動を阻まれた。空気が足りなくなる。どうにか斧で氷の壁を壊す。絶体絶命と思われた時、ノーチラス号はどうにか氷山エリアを脱出する。
 船はカリブ海に移動する。そこでは、伝説の巨大なイカと遭遇する。イカとの壮絶な格闘により、船員にも死者がでる。どうにか撃退する。

 ネモは次第に無口になり、アロナックスらとの交流をしなくなってくる。アロナックスらはいつかノーチラス号から脱出しなくてはならないという思いが強くなってくる。
 ある日、軍艦がノーチラス号に近づいてきた。かつてのリンカーン号のように、ノーチラス号と遭遇し、攻撃を仕掛けてくる。ネモは反撃し、その軍艦を海底に沈める。ネモは外部への復讐心をますます強めるとともに、悲しみに打ちひしがれる。アロナックスらとはますます合わなくなる。
 ある夜、アロナックスらはついに脱出計画を実行に移す。嵐が起こり、大きな渦が近づいてくる。それでも、アロナックスらはボートに移り、どうにか脱出に成功する。ネモ船長らのその後の消息は不明である。

おすすめ参考文献

ヴェルヌ『海底二万里』村松潔訳, 新潮社, 2012

※ジュール・ヴェルヌの生涯と作品については、次の記事を参照。

https://rekishi-to-monogatari.net/Jules Verne

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