シェイクスピアの『尺には尺を』

 『尺には尺を』はイギリスの劇作家シェークスピアの喜劇作品。 1604年頃に初演された。ウィーンでの風紀取締りの命令に端を発した逆転劇。この記事では、あらすじを紹介する(結末までのネタバレあり)。

『尺には尺を』(Measure for Measure)のあらすじ

 物語の舞台はオーストリアのウィーンである。ウィーンの公爵は部下のアンジェロにウィーンの統治を委ね、別の地域に移ると宣言する。その際に、アンジェロにウィーンの風紀の改善を支持する。ウィーンは売春宿が溢れていた。

 公爵はウィーンを出発する。だが、実際には、修道士に変装してウィーンに戻るつもりである。自分のいなくなったウィーンでなにが起こるかを観察するのだ。

 アンジェロは性風俗や売春などの取締を開始する。この頃、クラウディオという若者がジュリエットと結婚しようとしている。正式な結婚の前に、ジュリエットを妊娠させた。これはいまや忘れられているウィーンの法律では、違法だとされていた。アンジェロはこの法律により、クラウディオを逮捕する。しかも、クラウディオに死刑を宣告する。

 アンジェロはほかにも、性風俗にかんする厳しい法律を復活させる。ウィーンの売春宿をすべて廃止しようと考えている。

 他方、ルシオというクラウディオの知り合いがかの死刑判決を知り、驚く。ルシオはウィーンの売春宿の常連客であり、アンジェロの政策に危惧を抱いている。
 クラウディオには、イザベラという妹がいる。イザベラは敬虔で、貞潔な女性であり、修道女になろうとしている。ルシオはクラウディオの死刑判決をイザベラに教えに行く。イザベラはそれを知り、兄を助けるために、アンジェロに会いに行く。

 イザベラはアンジェロに、クラウディオの命を助けるよう懇願する。

アンジェロは拒否する。だが、助ける方法がないわけではないとほのめかす。それはイザベラがアンジェロとベッドで一夜をともにすることだと、彼は言う。
 イザベラはそれを聞いてショックを受ける。修道女になろうとしていたので、貞潔を守らなければならない。そう考え、イザベラはこの提案を拒否する。
 イザベラは獄中のクラウディオを訪ねる。アンジェロが上記のような提案をしてきたが、修道女となるべく断ったことを兄に伝える。クラウディオは複雑な心境になる。当初はイザベラの判断を尊重する。

尺には尺を シェイクスピア
イザベラとアンジェロ

 だが、クラウディオは妹のことをおもいながらも、自分の命を救うために、提案を受け入れるようイザベラに求める。イザベラは苦しい立場に追い込まれる。
 修道士に変装した公爵がそのやり取りを聞いていた。公爵が二人のところに近づく。クラウディオにたいしては、死は避けられないとして、覚悟するよう告げる。
 他方、公爵はイザベラにたいして、一つの解決策を提示する。アンジェロはかつて、マリアナと婚約していた。だが、マリアナが海難事故で結婚持参金を失ったため、彼はマリアナを捨てた。
 公爵はこのマリアナとの関係を利用することをイザベラに提案する。イザベラはそれを受け入れ、マリアナに協力を求める。
 イザベラはアンジェロに、彼と一夜をともにすると告げる。だが、実際には、マリアナがイザベラの代わりにアンジェロのもとに行き、マリアナだとバレないよう一夜をともにする。
 その結果、アンジェロは婚前交渉のような、クラウディオと同じ罪を犯したことになる。翌日、アンジェロは事実を知る。アンジェロは自らがクラウディオと同じ罪を犯したと理解する。
 アンジェロははクラウディオを赦免すると約束する。さらに、自らは法律に従って、マリアナと結婚することになる。このようにして、イザベラは修道女としての貞潔と兄の命を守ることができたかのように思われた。

 だが、アンジェロは約束を守らなかった。クラウディオの死刑を執行するよう命じる。
 牢獄にその命令が届く。そこに変装した公爵がやってくる。別の囚人の首をクラウディオのものとしてアンジェロに送るよう、画策する。たまたま囚人の一人が病没したため、これが実行される。アンジェロには首が届いたと知り、クラウディオが処刑されたと思い込む。

 他方、変装した公爵はイザベラを訪れ、クラウディオが処刑されたと告げる。公爵がいずれウィーンに戻って来るので、今回の事件を公爵に訴えるよう、変装した公爵はイザベラに提案する。そのようにして、アンジェロを裁くつもりである。

 公爵が真の姿でウィーンに戻って来る。イザベラは公爵に、アンジェロの事件を訴える。だが、当初は見ず知らずの女性よりも部下のアンジェロを信用するというふりをする。
 そこに、他の証人たちがでてきて、イザベラのために証言をする。マリアナはアンジェロとの婚約の過去や一夜をともにしたことを明らかにする。
 公爵が修道士の姿をしてこの事件に関わってきたことが明らかになる。誰も言い逃れができない状況になる。
 公爵はマリアナとアンジェロの結婚を命じたうえで、アンジェロを今回の事件で死刑に処すと宣告する。マリアナは公爵にアンジェロの命を助けるよう懇願し、公爵はこれを認める。
 公爵はクラウディオを釈放する。イザベラはクラウディオと再会する。公爵はイザベラに愛を告白し、修道女ではなく自分の妻になるよう求める。

おすすめ関連作品

 ・ ・

 ・ ・

おすすめ参考文献

シェイクスピア『尺には尺を』小田島 雄志訳、白水社、1983

タイトルとURLをコピーしました