『真夏の夜の夢』はイギリスの代表的な劇作家シェイクスピアの喜劇作品である。1595年頃に制作され、青年期の代表的な作品である。イギリスの古典的名作として知られる。この記事では、あらすじを紹介する(結末までのネタバレあり)。
『真夏の夜の夢』(Midsummer Night’s Dream)のあらすじ
舞台はギリシャのアテネである。シーシュース公爵とヒポリタが壮大な結婚式をあげようとしており、その準備をしている。そこに、アテネの貴族イージアスがやってくる。イージアスは娘のハーミアと、若いディミトリアスとライサンダーを連れてきた。
イージアスは娘ハーミアにたいし、ディミトリアスとの結婚を命じる。アテネの法律では、娘は父の命令に従わなければならない、さもなければ罰せられると付け加える。だが、ハーミアはディミトリアスではなく、ライサンダーを愛している。そのため、これを受け入れようとしない。
シーシュース公爵はハーミアが父の命令に従わなければ、一生神殿で尼僧として独身でいなければならないか、罰を受けるだろうという。ハーミアには、結婚式までに決めるようにと言う。
ハーミアはライサンダーとの駆け落ちを決める。アテネ近郊のライサンダーの叔母の家で結婚しようと計画する。この計画を、ハーミアの友人のヘレナに伝えた。ヘレナはこれを上述のディミトリアスに伝えた。ディミトリアスはかつてヘレナと婚約していた。
だが、ディミトリアスがハーミアと会ってから、婚約を解消した。イージアスによって、上述のように、ディミトリアスはヘレナではなくハーミアと結婚するという話が進んでいたところだった。
ヘレナはディミトリアスのことを諦めきれなかった。ディミトリアスの愛を取り戻そうとして、二人の駆け落ちの計画を伝えたのである。ハーミアとライサンダー、ディミトリアスとヘレナのこれら4人の若者たちの恋がこの物語の中心となる。
翌日の夜、ハーミアとライサンダーは計画通り、アテネを脱出し、郊外の森に移動する。ディミトリアスは彼らを追う。ヘレナはディミトリアスを追う。よって、四人とも森に入っていった。この森が物語の主な舞台となる。
森には、妖精たちが住んでいる。妖精の王オペロンとその王妃ティテニアが言い争っていた。ティテニアはちょうどインドから帰ってきたところであり、そこから持ち帰ったものをめぐって口論していた。
オペロンはティテニアが自分の言うことを聞かないので、懲らしめてやろうと思い至る。そこで、妖精パックに命じて、魔法の花を取りに行かせる。この花の汁はいわば媚薬である。それをひと塗りすれば、塗られた者は最初に見た者に恋をするのである。
他方、同じ森では、アテネの職人たちが別の行動を開始する。シーシュース公爵とヒポリタの結婚式での余興として、劇を行うことになっていた。そのための準備をしている。その中でも、ボトムという職人が重要な役割を担うことになる。
パックは魔法の花を入手して、妖精王オペロンにもってくる。そのころ、オペロンは森の中で、ディミトリアスとヘレナが言い争うのを聞いた。ヘレナはディミトリアスを諦められずに負ってきたわけだが、ディミトリアスはそれを迷惑と思い、ヘレナを冷たくあしらう。
オペロンはそれを聞いていた。オペロンはディミトリアスがヘレナに恋をするよう、魔法の花を使おうとする。そこで、オペロンはパックに、その花の汁をアテネ人に塗るように、と命じる。オペロン自身は、眠っている王妃ティテニアにその汁を塗る。
その頃、先に森に入っていたハーミアとライサンダーは道に迷っていた。疲れ、眠りに落ちた。パックがそこにやってくる。オペロンはディミトリアスに花の汁を塗るように、と命じたつもりだった。だが、パックは同じアテネ人のライサンダーに塗るよう命じられたと勘違いし、塗ってしまう(アテネ人に塗るように、と命じられていた)。
ヘレナはディミトリアスに置き去りにされる。近くを歩いていたら、ライサンダーが寝ているのに遭遇する。ライサンダーを起こす。ライサンダーはヘレナを見て、花の汁により、恋をする。ヘレナに言い寄る。
ヘレナは冗談だとおもい、その場を去る。ライサンダーは後を追う。しばらくして、ハーミアが目覚める。ライサンダーがいないのに気づいて落胆するが、彼を探しにいく。
他方、森ではアテネの職人たちが劇の練習をしていた。パックがそこを通りかかり、ボトムの頭をロバの頭に変える。ボトムはそれに気づかない。ボトム以外の職人が恐怖で逃げ出す。
パックはボトムをそのまま、妖精の王妃ティテニアの眠る場所に誘導する。ティテニアが目覚める。花の汁を塗られていたので、ロバ頭のボトムに恋をする。滑稽な光景となる。
パックは花の汁を塗るべき相手がライサンダーではなくディミトリアスだったことを知る。そこでパックはディミトリアスの目に花の汁を塗る。そこにヘレナが到着する。ディミトリアスは目を覚まし、ヘレナに恋に落ちる。ライサンダーも到着する。
ライサンダーとディミトリアスはヘレナに言い寄る。ヘレナは二人とも自分を馬鹿にしていると思い込む。そこにハーミアがやってくる。ライサンダーがヘレナに言い寄っているのを見て、激怒する。こうして、花の汁により、混乱した恋のバトルが始まる。ハーミアはヘレナに喧嘩を挑もうとする。
ライサンダーとディミトリアスはヘレナをめぐって、決闘を始めそうになる。それをみて、オペロンは戦いを回避しなければならないと考える。パックに、事態の収拾を命じる。
四人の若者たちは争いのために森の中を駆け回り、疲れ、パックの仕業によって眠りに落ちる。パックは花の汁をライサンダーに塗り、再びハーミアに恋をするよう仕向ける。ディミトリアスがヘレナに恋している状態はそのまま放置する。
その頃、妖精の王妃ティテニアは相変わらず滑稽なロバ男のボトムに恋をしていた。オペロンは十分だと思い、ティテニアの恋の状態を解除する。ボトムを元の姿に戻す。オペロンとティテニアは仲直りする。ボトムは仲間たちのところに戻る。
四人の若者は眠っている。そこに、シーシュース公爵やヒッポリタらが狩猟のために森に入ってくる。彼らが四人を起こす。ライサンダーはハーミアに再び恋をする。ライサンダーはハーミアとの駆け落ちを認める。ハーミアの父イージアスは彼らを罰するよう公爵に求める。
だが、公爵はライサンダーとハーミアが愛を誓っているだけでなく、ディミトリアスとヘレナもまたそうであることを知る。そこで、公爵の結婚式で、これら二組も結婚することにする。
結婚式では、アテネの職人たちが劇を行う。シーシュース公爵やライサンダーらはこれを愉しむ。それが終わると、それぞれのカップルがベッドに入る。妖精たちが彼らを祝福する。
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おすすめ参考文献
シェイクスピア『夏の夜の夢』河合祥一郎訳, KADOKAWA, 2013
※シェイクスピアの生涯と作品については、「シェイクスピア」の記事を参照。