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ネルソン・マンデラの映画『インビクタス』

 『インビクタス』は2009年に公開された著名なクリント・イーストウッド監督の映画である。ネルソン・マンデラ役はモーガン・フリーマンがつとめた。主要キャストにはマット・デイモンがいる。
 この作品はジャーナリストのジョン・カーリンの著書『Playing the Enemy : Nelson Mandela and the Game That Made a Nation』を映画化したものである。ネルソン・マンデラにかんする著作だ。
 この記事では、この映画自体では十分語られていないその背景や、内容、意義を説明する。特に、マンデラやこの映画に興味がある方には、一読するようおすすめする。

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マンデラの映画『インビクタス』とは

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そもそも、マンデラはどんな人?この映画の背景

 この映画は1990年のマンデラの釈放から1994年の大統領就任について簡単に触れる。その後に、1995年の南アフリカでのラグビー・ワールドカップを主な舞台として、ネルソンを中心に物語を進めている。
 この物語をよく理解するには、背景としてマンデラ自身と南アフリカの歴史をすこし詳しく知る必要がある。
 マンデラは南アフリカ出身の黒人である。南アフリカが人種差別のアパルトヘイト政策を進めるのにたいし、反対運動を起こした。そのため、逮捕され、20年以上も獄中生活を送った。
 獄中生活で、マンデラはアパルトヘイトへの反対運動を続ける。同時に自分自身の過去を見つめ直し、人間として成長していった。
 その頃、南アフリカのアパルトヘイトへの国際的な非難が高まり、ネルソンの釈放を求める国際的な声も高まる。1990年、ついにネルソンは釈放される。ネルソンは国内外で歓呼の声とともに迎えられる。
 その後、ネルソンは南アフリカのアパルトヘイト廃止や民主化を進める。だが、長期的なアパルトヘイトの継続により、国民間の対立や分断は根深くなっていた。武力対立がやまなかった。南アフリカの白人にたいする黒人の憎悪や復讐はなかなかなくならなかった。
 そのような中で、マンデラは国民間の和解に尽力する。同胞の黒人にたいして、白人たちのアパルトヘイトの罪を赦すよう訴えた。白人と黒人・他の人種の対話と融和を訴えた。
 ついに、マンデラは1993年にノーベル平和賞をえて、南アフリカの民主的選挙を実現する。1994年に大統領になり、和解と民主化を進める。
 1995年、そのような流れで、南アフリカでラブギー・ワールドカップが開催される。南アフリカが見事に優勝する。

『インビクタス』の内容:ラグビー・ワールドカップでの国民の和解の物語

 『インビクタス』はこのような背景のもと、そのラグビー・ワールドカップを主な舞台として、マンデラ大統領と南アフリカのラグビー代表のキャプテンを軸とした物語を展開する。
 ラグビーという競技が題材であることは重要だ。なぜなら、長い間、ラグビーは少なくとも南アフリカでは白人主義で排外主義のスポーツであり続けたためだ。南アフリカの黒人はラグビー場でプレイすることは難しかった。
 そこに、ネルソン大統領が深く関わっていく。ネルソンはこの時、すでに70歳を超えたベテランの卓越した政治家だった。極めて困難なアパルトヘイトの廃止と民主化そして国民の和解をその並外れたリーダーシップで進めてきた。
 対照的に、ラグビー代表の白人のキャプテンは若者である。チームをまとめあげ、よい結果を出すのに悪戦苦闘している。
 ネルソンは自身の経験をもとに、白人の若いキャプテンをすぐれたリーダーとして育て上げていく。若いキャプテンはネルソンの人間性と指導に圧倒されながら、自身とチームを成長させていく。その先に、南アフリカの優勝が待っている。

『インビクタス』から得られるもの

 この映画はラグビーの熱い闘いを背景とした、南アフリカの人種主義にたいするマンデラの闘いの物語だといえる。とくに、アパルトヘイトが制度としては廃止された後の時代にかんする作品だ。制度として廃止されてもなお、人種対立は続いた。これをいかに終わらせるかの物語である。
 上述のように、マンデラはとくに、白人の罪を赦すよう黒人たちに訴えた。いわば、キリスト教のメシア(救世主)のように行動した。このような憎しみや怨恨が残っている限り、人種対立は終わらず、南アフリカは発展できないためだ。
 マンデラの非人種主義と寛大さがそれまでのラグビーの白人主義と排外主義に打ち勝っていく。そのようにして、南アフリカの和解を進めていく。
 さらに、マンデラは人種主義との闘いをより広いスケールで展開しようとした。南アフリカという国を超えて、アフリカや世界での人種主義と闘おうとした。
 というのも、ラグビー・ワールドカップは世界中で10億人の視聴者にテレビ放送されたためだ。この世界規模の闘いの絶好の機会であった。
 さらに、上述のように、かつて、南アフリカは世界中で人種主義で悪名高かった。いわば、人種主義のシンボルだった。ネルソンはまさにこの南アフリカを寛容と和解の国に変えたというメッセージを出した。人種主義を乗り越えるという強力なメッセージを世界に打ち出した。
 かくして、南アフリカのラグビー・ワールドカップとそこでの優勝は、そのための国民全体の団結と融和のすばらしい手段となった。同時に、世界での人種主義との闘いの優れた手段にもなった。
 この映画をみることで、ラグビーのワクワクするようなスポーツ・シーンを楽しむことができるだけでなく、現代の人種主義との闘いやネルソンの魅力を知ることができる。

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おすすめ参考文献

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Herwitz , Daniel. Race and Reconciliation: Essays from the New South Africa . Ann Arbor : University of Michigan Press , 2003 .

Mangcu , Xolela , ed. The Meaning of Mandela: A Literary and Intellectual Celebration . Cape Town : HSRC Press , 2006 .

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Broun , Kenneth. Saving Nelson Mandela: The Rivonia Trial and the Fate of South Africa . Oxford : Oxford University Press , 2012 .

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