ジョン・アダムズはアメリカ合衆国の第二代大統領(1735ー1826)。宗主国イギリスからアメリカ植民地を独立させるために活躍した。アメリカ独立戦争で勝利後、アメリカ合衆国でワシントン初代大統領のもとで副大統領をつとめた。その後、第二代大統領に就任した。アメリカ建国時の主要人物の一人として知られる。
アダムズ(John Adams)の生涯
ジョン・アダムズは(独立前の)アメリカのマサチューセッツ州で、農家に生まれた。アダムズの家系は17世紀初頭のイギリスからの入植者に遡ることができるほど、アメリカ植民地では古株だった。親類のサミュエル・アダムズもまた、アメリカ独立戦争で重要な人物となる。
父親はジョン・アダムズに牧師になるよう勧めた。彼はハーバード大学で学んだ。だが、聖職者の道には進まなかった。
むしろ、アダムズは法律や政治の道を選んだ。法学を学んで、弁護士になった。有名な案件としては、ボストン虐殺事件の容疑者の弁護を行い、無罪を得たケースが挙げられる。さらに、30歳になったころ、政治家の道も志す。
アメリカの独立へ
1771年には、マサチューセッツ州の下院議員に当選した。この頃、ボストン虐殺事件にみられたように、アメリカ植民地は宗主国のイギリスから独立すべきと訴える流れも徐々に強まってきた。
アダムズはまさにそのような論客の一人だった。さらに、アメリカ独立宣言起草のための委員会のメンバーにも選ばれた。このように、独立のために大いに活躍した。
アメリカ独立戦争が1783年のパリ条約で終結した。アメリカ植民地はアメリカ合衆国として独立した。アダムズはその条約でアメリカ代表として署名した。独立後、最初の駐英大使としてかつての宗主国に派遣され、重要な交渉をこなした。
アメリカの最初の大統領選挙で勝利したのは、周知のように、ジョージ・ワシントンだった。この選挙でアダムズは二位になった。そこで、1789ー97年に副大統領をつとめ、ワシントンを支えた。
この時期、アメリカは独立戦争での莫大な債務の返済に取り組んだ。さらに、新生アメリカで強力な国家を構築すべく、司法や税などの様々な制度を設立していった。
また、イギリスとは両国間の様々な問題を解決し、主権国家として承認してもらうよう交渉し、成功した。
アメリカ大統領へ
1796年、二回目の大統領選挙が行われた。今度は、アダムズは建国の父の一人として知られるトマス・ジェファーソンと選挙戦を戦った。僅差で勝利し、第二代大統領に就任した。
革命期のフランスとの関係
アダムズはフランス革命政府との関係で大いに頭を悩ませた。1789年、フランス革命が起こった。イギリスなどの周辺国はこの革命を阻止すべく、干渉戦争を行った。上述のように、アメリカはイギリスとの交渉で敵対関係にひとまず終止符を打った。
だが、フランスがアメリカ船舶を攻撃するようになった。そのため、アダムズは外交でこの問題を解決しようとした。だが、外交使節は無視され続けるなど、この試みは失敗した。両国の軍事衝突が始まった。
この戦いを背景にしながら、1798年、アダムズは外国人・扇動法を制定した。これはフランスとの戦争を支持する世論に後押しされながら、実際にはアメリカ国内の敵を標的にしたものである。
たとえば、アメリカ政府に敵対的な文書の執筆や公刊などが禁止された。その結果、多くの印刷業者が抑圧された。逮捕や投獄の対象にもなった。あるいは、アダムズの政敵たる共和党を支持したフランス人移民などが国外追放に処された。
共和党との対決
共和党はこれらの措置に応戦した。副大統領のジェファソンやマディソンは違憲の連邦法を無効にする決議をヴァージニア州などでつくりあげた。
これは南北戦争にも影響を与えるような前例となる。さらに、共和党は党組織の整備を進めていった。地方支部から全国支部まで整備し、多くの新たな新聞を刊行した。
1800年、アダムズは三回目の大統領選挙に挑んだ。今度も、ジェファーソンと戦った。だが、ジェファーソンの共和党は上述のような組織化に成功していたので、選挙戦を有利に展開し、アダムズが敗北した。それ以降、アダムズは歴史の表舞台から消えていった。
彼の息子のジョン・クインシー・アダムズはいずれ大統領に就任することになる。
ジョン・アダムズと縁のある人物や事物
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ジョン・アダムズの肖像画
おすすめ参考文献
石川敬史『アメリカ連邦政府の思想的基礎 : ジョン・アダムズの中央政府論』溪水社, 2008
Paula Baker and Donald T. Critchlow(ed.), The Oxford handbook of American political history, Oxford University Press, 2020
Luke Mayville, John Adams and the fear of American oligarchy, Princeton University Press, 2016