『オデュッセイア』は古代ギリシャの代表的な詩人ホメロスの叙事詩。彼自身の『イリアス』とともに、古代ギリシャの代表的な叙事詩として知られる古典的名作である。その影響は古代ローマのウェルギリウスの『アエネイス』や中世のダンテの『神曲』、そして現代のジョイスの『ユリシーズ』などに広くみられる。この記事では、あらすじを歴史的な画像つきで紹介する(結末までのネタバレあり)。
『オデュッセイア』のあらすじ
この物語の主人公は英雄のオデュッセウスである。オデュッセウスはギリシャとトロイのトロイア戦争に参加していた。この戦争でトロイを滅ぼした後、帰路についた。だが、この帰路が様々な困難を伴う冒険でもあった。
帰路についてからもう10年も経った。オデュッセウスはまだ故郷のイタケー島にたどり着いていない。それどころか、カリプソに魅入られてしまい、彼女の島に閉じ込められている。オデュッセウスには脱出する方法がない。
他方、オデュッセウスの妻ペネロペは夫の無事を信じ、その帰国を待ち望んでいる。息子のテレマコスは成人した。だが、彼らはオデュッセウスの消息を知らない。イタケー島の人々はオデュッセウスがすでに死んだと考えている。多くの有力者がペネロペに求婚し、オデュッセウスの家を乗っ取ろうとしている。
その土地を奪う者も出てきた。オデュッセウスの召使の多くも統制がきかなくなってきた。テレマコスはこれらの横暴に対抗しようとするが、うまくいかない。求婚者のアンティノウスはこのテレマコスの暗殺を計画する。
この頃、神々はオデュッセウスについて議論していた。女神アテナはオデュッセウスを助けることを決める。アテナはゼウスを説得して、カリプソにオデュッセウスを解放させるための使者ヘルメスを派遣させる。同時に、アテナはテレマコスに働きかけ、ピュロスとスパルタに向かわせる。
テレマコスはそれらの地を訪れる。ピュロスのネストル王はオデュッセウスの消息を教えることができなかった。だが、スパルタのメネラオス王は、海の神プロテウスから、オデュッセウスが例の島で生きていることを知ったと、テレマコスに教える。
他方、イタケー島の求婚者たちはこのようなテレマコスの行動をみて、テレマコスやオデュッセウスが帰国したときに暗殺しようという計画を立てる。
他方、ゼウスはアテネに約束した通り、ヘルメスをカリプソのもとに派遣する。
カリプソはオデュッセウスを解放する。オデュッセウスはアテネの助けで船をつくり、例の島を脱出する。
だが、この船旅が嵐にあう。海の神ポセイドンが積年の恨みを晴らすために、オデュッセウスの船を襲ったのだ。というのも、かつてオデュッセウスはポセイドンの息子のキュクロプスとポリュペムスの目をつぶしていたためだ。オデュッセウスはどうにかこの危機を乗り切る。2週間ほどの航海の後に、フェイキアの国にたどり着く。
オデュッセウスはその航海で疲れ果てていた。フェイキアの王女ナウシカが浜辺に横たわるオデュッセウスを見つけ、介抱する。両親の国王夫妻に紹介する。
国王夫妻の前でオデュッセウスは身分を明かす。夫妻はトロイア戦争での彼の活躍ぶりを聞いていたので、ぜひオデュッセウスの話を聞きたいという。そこで、オデュッセウスはこれまでの冒険談を語り始める。
それはオデュッセウスがトロイア戦争でトロイを滅ぼした後、イタケー島に帰ろうとし始めてから例の島に着くまでの10年間に及ぶ冒険談である。
当初、オデュッセウスは多くの部下とともに帰路についた。キコネス族の土地では、彼らと戦った。オデュッセウスらがそこを脱出した後、今度は花で部下を酔わせる蓮食い族の土地を通った。
次に、上述のキュクロプスとポリュペモスの目を潰し、その父ポセイドンの恨みをかった。食人種の土地を通った後、魔女キルケに部下を様々な胴部に変えられた。
セイレーンの歌声に魅惑されぬようどうにか乗り切る。
予言者テイレシアスに会うために黄泉の国を訪れた。海の怪物スキュラと戦い、太陽の島にたどりつく。そこでは、アポロンの牛を傷つけてはならないとテイレシアスに忠告されていた。
だが、オデュッセウスの部下が牛を殺してしまう。オデュッセウスらが船旅を再開した後、ゼウスがオデュッセウスの部下をすべて雷で殺した。オデュッセウスはその後に例の島に漂流する。そこで7年間も閉じ込められていた。オデュッセウスはこのような冒険談を一晩中語る。
翌日、国王夫妻はオデュッセウスがイタケー島に帰れるよう船を手配し、送り届ける。その旅路で、女神アテネがオデュッセウスに語りかけ、イタケー島での現状を教える。オデュッセウスを粗末な身なりの乞食に変装させる。
オデュッセウスはイタケー島につき、忠実な豚飼いのエウマイオスのもとにやってくる。エウマイオスはオデュッセウスを迎え入れる。アテネはテレマコスにもイタケー島に戻るよう促す。かくして母娘はイタケー島で久々の再開を果たす。
二人はペネロペへの求婚者たちを殺害し、自分の領地を取り戻す計画を立てる。
翌日、オデュッセウスは乞食に変装したまま、自宅の宮廷に戻ってくる。彼の老犬アルゴスと乳母はオデュッセウスだと明確に認識する。
だが、ペネロペはまだオデュッセウスだとはっきりとは分かっていない。求婚者たちはオデュッセウスの身なりをみて嘲笑する。
翌日、ペネロペの提案で、求婚者たちとオデュッセウスは弓術の競技会を開くことになる。そこでは、かつてのオデュッセウスの弓を使って、12本の斧を射抜くことができるかが試される。これはかつてオデュッセウスだけが成し遂げた技である。これができた者がペネロペと結婚する資格を得る。
求婚者たちは斧を弓矢で射抜くことができない。そもそも、オデュッセウスの大弓をひくこともできない。オデュッセウスの番になり、軽々と12の斧の矢で射抜く。そのまま、オデュッセウスは矢を求婚者たちに放ち始める。忠実な召使の助力により、求婚者をすべて殺害する。不実な召使も殺す。
その後、オデュッセウスは正体を明かして、ペネロペと再会する。
郊外に住む老いた父にも会いに行く。父がオデュッセウスだと認識したとき、オデュッセウスは父を抱きしめて嘆き、涙を流した。二人は泣き叫び続けた。
殺害された求婚者たちの遺族はオデュッセウスへの復讐を計画する。だが、ゼウスの介入により、復讐は中止される。かくして、オデュッセウスはかつての地位と島の平和を取り戻す。
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おすすめ参考文献
ホメロス『オデュッセイア』松平 千秋訳, 岩波書店, 1994