エウリピデスの『トロイアの女たち』

 『トロイアの女たち』は古代ギリシャの三大悲劇作家エウリピデスの代表作である。。紀元前415年に初演された。ギリシャ人とトロイ人のトロイ戦争に関わる作品であり、戦争の悲惨さを描いている。この記事では、あらすじを紹介する。

『トロイアの女たち』のあらすじ

 この物語は古代のトロイア戦争を舞台としている。ギリシャ人は、ギリシャ人の王メネラオスの妻ヘレネがトロイの王子パリスに奪われたということにより、トロイに攻め込み、トロイア戦争を始めた。

 これが10年間続いた。ギリシャ人は有名なトロイの木馬という策略を用いて、ついにトロイ人に勝利した。この物語は、まさにこの勝利が確定したところから始まる。
 この物語はトロイの女性視点で展開する。トロイの女性たちは戦争で敗北し、夫や兄弟などをギリシャ人に殺害された。女性たち自身や子どもたちはギリシャ人の奴隷として、ギリシャに連行されようとしている。
 海の神ポセイドンと女神アテナがこの戦争の被害について語り合う。ポセイドンはトロイの味方をしてきたのにたいし、アテナはギリシャの味方をしてきた。トロイ戦争では、人間だけでなく神々もまたそれぞれの国のために戦っていた。戦争中、アテナはギリシャ人の英雄らに様々な仕方で協力した。
 だが、いまはアテナはギリシャ人を罰そうとしている。というのも、ギリシャの英雄アエネイスがアテナの神殿でトロイアの王女カサンドラを強姦したためである。アテナはこれが明らかに自身への冒涜だと感じた。

 そのため、アテナはポセイドンにたいし、ギリシャ人の船団を帰り道で罰するよう求める(実際に、メネラオスなどは帰路で嵐によって遭難することになる)。 
 他方で、トロイの女王だったヘカペはトロイの荒れ果てた現状を嘆く。そこに、トロイの高貴な女性たちや侍女たちがやってくる。自分たちの将来を心配する。
 そこに、ギリシャの兵士がやってくる。彼は、トロイの女性と子どもがギリシャ人の奴隷としてそれぞれ配分されることになった、と彼女たちに告げる。女性たちは悲嘆に暮れる。ヘカペ自身はギリシャの英雄オデュッセウスの奴隷になることが決まった。みな悲嘆に暮れる。

トロイアの女たち 利用条件はウェブサイトにて


 そこに、ヘカペの娘のカサンドラがやってくる。カサンドラは予知の能力をもっている。カサンドラはギリシャの英雄アガメムノンの奴隷になることが決まった。だが、カサンドラは自分が彼とともにまもなく死ぬことを知り、困惑し、混乱する。

 彼女はアガメムノンとの「結婚」を祝ってくれるよう、トロイの女たちにもとめる。トロイの女たちはカサンドラのことを理解できない。カサンドラはそのままギリシャ人に連行される。

 ヘカベの義理の娘のアンドロマケが息子のアステュアナクスを抱いて、ヘカペのところにやってくる。アンドロマケはトロイの英雄ヘクトールの妻だったが、ヘクトールはすでに戦死している。アンドロマケはこのまま苦しみながら生きるより、死んだほうがよいとヘカペに言う。ヘカペは彼女に希望を失わないようにと諭す。
 アンドロマケもまたギリシャ人の奴隷として連行されることになっている。アンドロマケはかつての夫への操を立てるか、それとも新しい主人に従うべきか迷っている。ヘカベはアンドロマケに、これからの運命を受け入れるよう勧める。
 そこにギリシャ兵がやってくる。彼は、彼女の息子のアステュアナクスが処刑されることになったと告げる。というのも、アステュアナクスが大人になれば、いずれギリシャに反抗するかもしれないからだ、と。アンドロマケは愕然としながらも、これに抵抗することができない。息子を奪われ、アンドロマケは連行されていく。

息子を奪われるアンドロマケ

 次に、ギリシャ軍の王メネラオスがヘレネとともにやってくる。上述のように、ヘレネはメネラオスの妻だった。トロイ戦争はヘレネがトロイの王子パリスによって奪われたことで始まった。メネラオスはようやくヘレネを取り戻した。だが、メネラオスはヘレネがパリスのもとに駆け落ちしたと考えており、ヘレネを殺そうとしている。
 ヘレネが自身の行動を弁明する。すなわち、ヘレネは自身の意に反して、パリスによって連れてこられ、トロイに抑留されたのだ、と。ヘカペはこれを聞いて、ヘレネが自らパリスと駆け落ちしてきたと言う。メネラオスはヘレネを自国に連れ帰ることを決め、ともに立ち去る。

 ギリシャ兵がやってきて、幼いアステュアナクスの遺体を運んでくる。彼の父ヘクトールの盾がその棺となっている。ヘカペたちはアステュアナクスの死を悲しみ、彼の埋葬を準備する。
 ギリシャ兵はトロイの街に火を放つよう指示する。いよいよ、トロイの時代が終わる。ヘカペは燃えゆく街に身を投じて死のうとする。だが、ギリシャ兵に止められる。ヘカペらのトロイの女たちはもはや諦め、ギリシャ人に連行されていく。

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