『お気に召すまま』はイギリスの代表的な劇作家シェイクスピアの喜劇作品。1600年頃に制作された。彼のロマンス喜劇の古典的名作として知られる。この記事では、あらすじを紹介する(結末までのネタバレあり)。
主人公のオーランドは兄と遺産相続でもめており、殺されそうになる。森に逃げ込む。他の貴族の一家でも、揉め事があり、二人の若い娘が森に逃げ込む。それぞれに追手が迫りくる。彼らの運命はいかに。
『お気に召すまま』(As You Like It)のあらすじ
ローランド・ド・ボーイズ卿が没した。遺産は長兄のオリバーがほとんど相続した。弟のオーランドはほとんど遺産を得ることができなかった。ローランドはオーランドを大切にするようオリバーに遺言したが、オリバーはこれを無視した。
そのため、オーランドには、その身分にふさわしい教育も施さない。そのため、オーランドはオリバーに抗議し、二人は口論になる。このオーランドがこの物語の中心人物の一人である。
オーランドはフレデリック公爵の宮廷武闘家のチャールズに戦いを挑もうとしていた。チャールズはそれを知って、オリバーのところにやってきた。もし自分がオーランドのような身分の高い者を負かしたら非難されてしまう。よって、オーランドに参戦をとりやめるよう説得してほしい、とチャールズはオリバーに頼んだ。
オリバーはこれを、オーランドを懲らしめるチャンスだとみなした。よって、チャールズにオーランドを存分に打ち負かすよう説得し、成功する。
翌日、フレデリック公爵の宮廷で、試合が行われる。そこには、フレデリック公爵や娘のせリア、そして姪のロザリンドがチャールズとオーランドの試合を感染する。チャールズはオーランドを打ち負かそうとするが、オーランドが見事に勝利する。
フレデリック公爵はオーランドがローランド卿の息子だと知って、不機嫌になり、立ち去る。フレデリック公爵はローランド卿と敵対していたためだ。ロザリンドとセリアはオーランドを祝福する。オーランドはロザリンドに恋をする。
オーランドは自宅に戻る。召使のアダムがやってきて、オーランドにこう警告する。兄のオリバーがオーランド殺害の計画を立てている、と。そこで、オーランドは安全を求めて、アーデンの森に逃げることにする。
アーデンの森には、シニア公爵が住んでいる。シニア公爵はフレデリック公爵の兄である。上述のロザリンドの父である。だが、フレデリック公爵の陰謀により、爵位や財産を奪われ、アーデンの森に逃避している。この森で平穏に田園生活を送っている。
オーランドはそのアーデンの森に逃げ込む。その頃、フレデリック公爵はロザリンドを、自身にたいして陰謀を企てているとして、追放することに決めた。ロザリンドもアーデンの森に逃亡することに決める。フレデリック公爵の娘セリアはロザリンドなしに生きていけないと考え、父には黙って、ロザリンドについていくことを決める。
安全のために、ロザリンドは青年に変装してガニメドと名乗る。セリアは羊飼いの少女に変装して、アリエナと名乗る。フレデリックの道化師、タッチストーンも同行します。
フレデリック公爵は娘の失踪に激怒する。 娘と姪の失踪がオーランドの失踪と重なることを知り、オーランドが娘の失踪の元凶だと思い込む。そこで、フレデリック公爵はオリバーを呼び出す。
オリバーに、彼らを見つけ出すよう命じる。失敗すれば、オリバーの財産を没収する、と。同時に、フレデリック自身はシニア公爵を滅ぼすために出陣の準備を始める。
オーランドは食料を探し求める中で、シニア公爵の居住地に到達する。シニア公爵はローランド卿と友人だったため、その息子オーランドを歓待する。
他方で、ロザリンドとセリアは変装したまま、小さな小屋に落ち着き、羊の群れを飼育する。新しい生活を始める。ある日、ロザリンドはオーランドが同じアデンの森の中で、恋の病に苦しんでいることを知る。
ロザリンドは青年の変装のまま、オーランドの恋の苦しみを癒そうとする。そのために、オーランドに会う。自分をロザリンドだと思って、言い寄るよう、オーランドに提案する。自身はロザリンドのふりをするから、と(
ロザリンド自身が青年に変装したまま、ロザリンドのフリをしてあげる、という提案)。そうすれば、オーランドの恋の病も癒やされるだろう、と。オーランドはこの提案を受け入れる。
他方、アーデンの森では、別の二人の羊飼いが恋の問題を抱えている。シルヴィウスがフィービーに恋をしている。だが、フィービーはシルヴィウスを冷たくあしらう。二人の間に、ロザリンドが仲裁で入る。すると、フィービーは男装しているロザリンドに恋をする。
この頃、オリバーはアーデンの森に到着する。ガニメドのもとにやってくる。ガニメドはオーランドがいつも通りやってくるのを待っていたが、オーランドは来ない。代わりにオリバーがやってきたのだ。
オリバーはガニメドに言う。オリバーが森でヘビやライオンに襲われそうになったのを、オーランドが救ってくれた。だが、その際に、負傷した。だからガニメドのもとに行けないのだと、ガニメドに伝言してほしい、とオリバーに依頼した。そのため、オリバーはガニメドのもとにやってきたのだ、と。
その後、アーデンの森の中で、新たな恋が始まる。羊飼いアリエナに変装していたセリアはオリバーと出会い、二人は恋に落ちる。結婚を約束する。他方、セリアの道化師タッチストーンは農民の娘オードリーに恋をする。
このように複数の恋が複雑に展開する中で、ロザリンドはそれぞれの決着を一気につけようとする。青年ガニメドに変装したまま、ガニメドがもし女性と結婚するなら、フィービーと結婚するという。そのための結婚式をみんなで行おうと提案し、みんなも同意する。
翌日の結婚式には、上述の人々が集まる。オーランド、セリアとオリバー、フィービーとシルヴィウス、タッチストーンとオードリー、シニア公爵とその部下たちである。
ロザリンドはガニメドとして、他のカップルたちを結婚させようとする。フィービーには、ガニメドとの結婚が無理になったら、シルヴィウスと結婚するという約束を取り付ける。シニア公爵には、娘のロザリンド(すなわち自分(がオーランドと結婚できるのであれば、それを許すよう約束させる。
ロザリンドとセリアは変装をといて、元の姿で再び結婚式に登場する。魔術を用いて、4組のカップルをそれぞれ結婚させる: ロザリンドとオーランド、セリアとオリバー、フィービーとシルヴィウス、オードリーとタッチストーンである。
その頃、フレデリック公爵はアーデンの森へと進軍を開始する。だが、森の入口で、敬虔な隠者に出会う。世俗的な野心を捨てるよう説得され、感銘を受ける。フレデリックは回心し、隠者のように修道生活を志す。そのため、爵位をシニア公爵に返上する。
結婚した者たちは宮廷に戻ることになる。
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参考文献
シェイクスピア『お気に召すまま』松岡和子訳, 筑摩書房, 2007
※シェイクスピアの生涯と作品については、「シェイクスピア」の記事を参照。