『武器と人』は近代イギリスの作家バーナード・ショーの戯曲作品。3幕で構成され、1894年に初演された。当時のブルガリアでの戦争を背景とした滑稽な恋物語。この記事では、あらすじを紹介する(結末までのネタバレあり)。
『武器と人』(Arms and the Man)のあらすじ
物語の舞台は1885年のブルガリアである。ブルガリアはセルビアと戦争中である。
物語の中心人物はブルガリア人女性のライナである。ライナは裕福な家庭の若い娘で、母のキャサリンと会話する。最近、ブルガリア騎兵隊がセルビア兵との戦いに勝利したのだといい、喜ぶ。
ライナには、セルギウスという婚約者がいる。セルギウスはブルガリア騎兵隊の兵士である。キャサリンは、セルギウスがその戦いで英雄のような活躍をしたという。ライナは大喜びする。
そこに、召使いのルーカがやってくる。セルビアの兵がこの付近に潜んでいるかもしれない。よって、窓を施錠して、警戒しなければならない、と忠告する。だが、ライナはこれを真に受けず、施錠しないままにする。
だが、その夜、セルビアの兵がライナの部屋に窓から入ってくる。彼はライナに、騒いだら殺す、と脅す。その男はスイス人の傭兵であった。
男は明らかに疲弊している。ライナがこの戦いをロマンチックな目でながめ、婚約者の活躍を英雄視している。だが、男はこの戦いを嫌悪しており、ただそこから生き延びることができたことを喜んでいる。ライナはこのような男の態度に衝撃を受ける。
そのとき、キャサリンがライナの部屋に近づいてくる。ライナは男を隠れさせる。キャサリンが部屋に入り、セルビア塀がこの付近に潜んでいると警告する。ライナは自分の部屋が安全だと言い、キャサリンに戻らせる。
男は空腹だった。ライナは男に、自分のチョコレートを与える。男は上述のブルガリア騎兵隊の勝利について語る。これは実に無謀な戦いであり、彼らの勝利はただ運がよかっただけだ、と。ライナはその騎兵隊のトップが婚約者だといって、男に怒りをぶつける。男は半笑いで、無礼を謝る。
ライナは男が無事に逃げるのを手伝うと約束する。男は疲労困憊だったので、ひとまずライナの絵屋で眠る。ライナはキャサリンに相談しにいく。
その後の数ヶ月で、戦争が終わる。1886年、ライナの家で召使たちが話し合っている。召使のルーカは召使のニコラと婚約している。ルーカは出世を望んでいるという。ライナ一家の秘密を握っていると意味ありげに語る。だが、ニコラは自分たちの主人を裏切れないという。
そこに、ライナの父のペトコフが帰宅する。ペトコフは妻キャサリンに、セルギウスが軍人として未熟であり、昇進できないだろうと語る。セルギウスもそこにやってくる。ライナが彼の帰りを喜んで出迎える。二人は互いに愛をささやきあう。
セルギウスは昇進を熱望していたが、できなかったので、軍隊に不満を抱いている。
ペトコフとセルギウスは、ある噂について話す。前年の戦争中に、セルビア兵が2 人のブルガリア人女性に匿われ、逃亡を手伝ってもらったという話である。
もちろん、これはライナとキャサリンがスイスの傭兵を助けたことである。ライナたちは噂が自分たちの話だと気づく。だが、何も言わない。ペトコフたちは噂がまさか自宅での出来事だとは思っていない。
セルギウスはルーカとふたりきりになる。ライナの婚約者であるにもかかわらず、ルーカに手を出し始める。ルーカは、ライナがセルギウスにたいして誠実ではないかもしれないとほのめかす。セルギウスは怪訝な顔をする。
しばらくして、ブランチュリという男がライナ家の庭に入ってくる。ルーカがそれに気づき、キャサリンに告げる。
ブランチュリは上述のスイスの傭兵だった。ライナの家から逃亡する際に、ペトコフのコートで変装した。そのコートを返しに来たのだった。
キャサリンはブランチュリがスイスの傭兵だと気づく。ライナもきて、彼に気づき、喜ぶ。あのチョコレートの兵士だ、と。
キャサリンはペトコフとセルギウスがブランチュリとばったり会うのではないかと危惧する。実際にそうなる。ペトコフは戦場でブランチュリと対面していたため、彼を認識する。ともに会話を始める。
物語はクライマックスを迎える。ルーカはライナがブランチュリに恋をしているといい、いわば主人の秘密を暴露する。セルギウスはそれを聞いて、ブランチュリに決闘を申し込む。ブランチュリとライナは言い逃れをしようとする。
だが、ライナは実のところ、ブランチュリに行為を抱き始めていた。そのため、彼に貸した父のコートに、自分の写真を入れていた。そのことが露見する。ライナはもはや言い逃れができないと思い、ブランチュリへの好意を認める。
ブランチュリもライナへの好意を認める。ペトコフはショックを受ける。
だが、セルギウスもまたライナにたいして誠実さを保っていなかった。彼はルーカを愛人にしており、そのことが露見する。ニコラはルーカとの婚約を破棄する。
こうして、二組の婚約者の関係が壊れる。
ブランチュリが父の莫大な財産を相続したばかりであることが知られる。ペトコフとキャサリンはライナとブランチュリの結婚に賛成する。ブランチュリはライナが17歳だとおもっていたので、躊躇する。だが、実際には23歳だと知り、ついに求婚する。
セルギウスはルーカを恋人として認める。こうして、新しい二組のカップルが成立する。
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おすすめ参考文献
飯田 敏博『バーナード・ショーの劇世界』いなほ書房, 2001