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シェイクスピアの『ヘンリー8世 』

  『ヘンリー8世』はイギリスの代表的な劇作家シェイクスピアの歴史劇。16世紀前半のイギリスで離婚問題をきっかけとして宗教改革をもたらしたヘンリー8世を題材としている。

『ヘンリー8世 』(Henry VIII)のあらすじ

 舞台はヘンリー8世の宮廷である。ヘンリーのもとでは、主にウルジー枢機卿が政務を委ねられていた。ウルジーは平民出身であり、貴族ではなかった。平民出身でこれほど出世した例は当時、稀だった。
 ウルジーは野心的な人物だった。貴族たちからは、卑しい身分のウルジーは不人気だった。ウルジーもまた、立身出世の邪魔になる貴族にたいして敵対的だった。
 貴族の中では、とくにバッキンガム公がウルジーと反目していた。だが、ある日、衛兵がバッキンガム公を反逆罪で逮捕し、投獄する。ウルジーが裏で糸を引いていた。
 バッキンガム公はヘンリーと女王キャサリンの面前で裁かれる。そこでは、バッキンガム公がイギリスの王位継承権を狙っていたと証言される。ヘンリーはこれを信じて怒り、バッキンガム公に死刑を宣告する。
 だが、キャサリンは王の怒りをなだめ、バッキンガム公を救おうとした。キャサリンはウルジーを疑わしい人物だと思っており、この裁判にも疑念を向けていた。だが、死刑判決は覆らなかった。
 ウルジーはバッキンガム公の息子が復讐するのを恐れ、彼を辺境の地に配属する。同時に、バッキンガム公の次のターゲットとしてキャサリンを選ぶ。キャサリンも野心の邪魔になるためだ。
 ウルジーはヘンリーからキャサリンを引き離すことに決める。すなわち、離婚である。そのために、まず、ヘンリーにキャサリンへの不信感を植え付けようとする。
 ある日、ウルジーの邸宅で晩餐会が催される。ヘンリーもまた変装してこれに出席する。ウルジーはそれに気づいた上で、アン・ブーリンを紹介する。ヘンリーは彼女の美しさにみとれる。ウルジーはこのような仕方でも、ヘンリーをキャサリンから引き離そうとする。
 ヘンリーは次第に離婚を決心するようになる。キャサリンとの間に、イギリスの王位を継承する男児がいないこと(生まれても間もなく死んでしまった)が主な原因と考えられた。ヘンリーはアン・ブーリンとの結婚の準備を勧める。
 巷では、バッキンガム公の死刑について噂が流れる。王に忠誠を尽くしてきた彼への同情の声が聞かれる。同時に、ウルジーへの不人気の声も囁かれる。
 ローマ教皇庁から、ヘンリーの宮廷に使節が到着する。これはヘンリーの離婚問題に対処するためだ。当時、結婚はキリスト教の宗教儀式であり、離婚には教皇の許可が必要だと考えられていた。そのため、教皇庁から使節が派遣された。
 キャサリンは自分には妻としていかなる問題もないと訴える。ウルジーが離婚を画策していると考え、彼を痛烈に非難する。これにたいし、ウルジーは離婚に有利な証言を示す。
 ヘンリーの心は決まっていた。ヘンリーはキャサリンと離婚すべく、さまざまな根拠をローマの使節に示す。キャサリンはヘンリーに離婚しないよう懇願する。ウルジーと使節は、キャサリンに離婚を受け入れるよう説得する。キャサリンは激怒する。

説得をうけて激怒するキャサリン

 ウルジーはキャサリンという障害をも取り除くのに成功し、ますます勢いづく。ウルジーは失脚させた貴族たちの財産を没収するなどして、私財を蓄える。自身の威光をますます輝かせようとする。
 だが、ウルジーはヘンリーの離婚問題を延期したほうがよいと考えるようになる。ヘンリーがこのままアンに熱中してしまうと、今度はアンが障害になる恐れもある。ほかにも、当時の国際問題が引き金となる。
 そこで、ウルジーは離婚延期のための書簡をひそかに教皇庁に送ろうとする。だが、これが配送ミスにより、ヘンリーのもとに届いてしまう。ヘンリーはウルジーの「裏切り」に激怒する。
 ヘンリーはウルジーを召喚する。ウルジーに書簡などをみせる。ウルジーはそれでも自己弁護を試みるが、失敗する。貴族たちはそれまでのウルジーへの不満を爆発させ、ウルジーを罷免するようヘンリーを説得する。
 ヘンリーはウルジーの地位と財産を没収する。ウルジーはようやく、事態の重大さに気づく。失脚して、宮廷を去る。

 その後、ヘンリーはアンとの結婚を決め、アンは女王になる。妊娠していることも明らかとなる。キャサリンはその地位を追われる。
 ウルジーの死刑が決まり、その噂が広がる。キャサリンはそれを聞いて、それまでのウルジーの罪を赦すようになる。
 他方で、聖職者のクランマーがイギリスに帰国する。クランマーは他の聖職者らとの諍いを起こしている。ヘンリーはその噂を聞いて、クランマーに忠告する。
 クランマーはヘンリーにたいし、自身が計略のターゲットになっているので、支援するよう求める。ヘンリーは承諾する。
 クランマーは上述の問題のために召喚される。クランマーを投獄しようと画策する動きもでてくる。だが、ヘンリーの介入により、クランマーは最終的にこの危機を乗り越える。
 ヘンリーとアンの娘が生まれる。洗礼式が行われる。ヘンリーはクランマーに、娘の洗礼名を与えるよう求める。娘はエリザベスと名付けられる。のちのエリザベス1世である。

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おすすめ参考文献

シェイクスピア『ヘンリー8世』松岡 和子訳、筑摩書房、2019年

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