『じゃじゃ馬ならし』はイギリスの代表的な劇作家シェイクスピアの喜劇作品。1592ー93年頃に制作された。
『じゃじゃ馬ならし』(The Taming of the Shrew)のあらすじ
物語は酔っ払いのスライから始まる。彼は酔っ払って酒場から追い出され、眠り込む。領主がたまたまそこに通りかかり、スライを自身の屋敷に運ぶ。スライをからかおうとしているのだ。
領主はスライが寝ている間に、貴族の立派な衣服を着せ、領主のベッドに寝かせる。スライの妻を召使に変装させる。スライが目を覚ます。スライは見たことのない場所で目覚めたので動揺する。召使いたちはスライを領主のように扱う。スライは長らく正気を失っていたが、ようやく最近になって正気を取り戻したのだ、と説明される。
スライはこれを当初受け入れなかった。だが、召使に変装した妻にもそういわれ、納豆する。スライは旅の俳優たちの劇を見るよう促される。以下、この劇が本作の最後まで続くことになる。
物語の舞台はイタリアの都市パドヴァである。和解ルーセンティオが召使いのトラニオを連れて、パドヴァ大学に学びに来た。ルーセンティオはたまたま、美しいビアンカに出会い、恋をする。
だが、ビアンカとの結婚を成就させるには、2つのハードルがあった。一つは、ビアンカにはすでに求婚者のホルテンシオがいることだ。
もう一つは、ビアンカの父バプティスタはビアンカの姉キャサリンが先に結婚しなければ、ビアンカを誰にも結婚させないと決めていることだ。だが、ビアンカは性格が穏やかなのにたいし、キャサリンは気性が荒く意地悪である。
ルーセンティオはビアンカに近づくために、彼女の家庭教師になる。二人になる時間をつくり、距離を縮めようとする。彼の召使トラニオはルーセンティオに扮して、ビアンカの父バプティスタに結婚の話を進めようとする。
他方、他の求婚者のホルテンシオはビアンカの音楽教師になり、恋の競争を繰りひろげる。
その頃、ホルテンシオの友人ペトルーキオが花嫁を探しにパドヴァにやってきた。ペトルーキオの相手選びの基準は金である。裕福な女性なら、どんな性格の女性でもかまわない、と。
ホルテンシオはペトルーキオにビアンカの姉キャサリンを勧める。ペトルーキオはキャサリンが金持ちだと知って、それに同意する。
ペトルーキオは実際にバプティスタの家に行き、キャサリンと会う。二人の性格はあわず、言い争いになる。キャサリンはペトルーキオを罵倒する。だが、ペトルーキオは全く折れない。キャサリンがなんといおうと、結婚するのだと言い張る。
バプティスタが二人の様子を見に来る。ペトルーキオは彼に、キャサリンが自分との結婚を認めたと嘘をいう。日曜日に挙式をあげるのだ、と。キャサリンはこれを聞いて黙り込む。
かくして、バプティスタの家では、キャサリンにはペトルーキオが求婚している。ビアンカには、ホルテンシオとグレミオそしてルーセンティオ(トラニオが変装中)が求婚している。ルーセンティオ自身は 家庭教師のカンビオに変装して、ビアンカに近づいている。
バプティスタはペトルーキオとキャサリンの結婚を認める。そこで、ビアンカの結婚相手について考える。求婚者たちが彼に自己アピールする。バプティスタは、ルセンティオの父 のヴィンチェンティオ)がルセンティオに財産を相続することを保証するなら、ルーセンティオとビアンカを結婚させると決める。
その頃、ルーセンティオ自身は家庭教師に変装して、ビアンカに授業をする。その最中に、ビアンカに自身の正体を明かして、口説く。
日曜日、ペトルーキオとキャサリンの結婚式が催される。ペトルーキオは結婚式になかなか現れない。キャサリンは不安になる。
ペトルーキオが遅れてやってきた。だが、身なりも乗り物も悪い。ペトルーキオはこのようにしてキャサリンを「飼い馴らし」始める。
結婚式が終わる。豪華な宴会が予定されていたが、ペトルーキオはそれに出席せずにキャサリンを田舎の邸宅へ連れて行く。
ペトルーキオは邸宅にて、召使たちの前で、キャサリンがもはや結婚して自分ものになったのだから、自分の好きにしてよいのだと告げる。ペトルーキオはキャサリンを本格的に「飼い馴らし」始める。
ペトルーキオはなにかしら理由を見つけて、キャサリンを叱責し、食べ物を与えないようにする。睡眠をもまともにとれないようにする。そのようにして、自分にたいして従順になるよう仕向ける。
その頃、パドヴァでは、変装中のルーセンティオとホルテンシオがビアンカの愛を勝ち取ろうとして競いあっている。ついに、ルーセンティオが勝利する。ホルテンシオは裕福な未亡人と結婚することにする。
バプティスタはビアンカとの結婚の条件として、ルーセンティオの父親の同意を要求していた。そこで、ルーセンティオの召使トラニオはルーセンティオの父親役を探し出す。
トラニオはルーセンティオに変装したまま、父親役とともに、バプティスタを訪ねる。結婚の条件に同意し、結婚の段取りを決める。他方、ルーセンティオはビアンカとの駆け落ちを計画する。
他方、ペトルーチオはキャサリンを従順にしていった。飢えて眠ることも許されないキャサリンに、大量の食べ物をもってくる。キャサリンが彼に感謝するなら、食べてよいという。
その頃、ビアンカとルーセンティオの血痕が決まる。ペトルーチオらも出席することになる。そのためのキャサリンの衣装を決める。ペトルーチオはこの衣装選びもキャサリンを飼い馴らす手段として利用する。
ペトルーチオとキャサリンは結婚式のためにパドヴァに向かう。ペトルーチオはキャサリンにたいし、太陽を月であると、老人を若い乙女であると言うよう求め、納得させる。
道中、ルーセンティオの父ヴィンチェンシオとペトルーチオらがたまたま出会う。ヴィンチェンシオはルーセンティオに会いに行くところだった。キャサリンは老人のヴィンチェンシオを若い乙女と呼び、彼を当惑させる。「飼い馴らし」が完成する。
彼ら全員がパドヴァに同着する。トラニオ(ルーセンティオに変装)とルーセンティオの父親役にたまたま出会う。ヴィンチェンシオはこの状況に驚き、彼らと口論になる。バプティスタは当惑する。
そこに、ルーセンティオとビアンカがやってくる。ルーセンティオはこれまでの経緯と事態を説明する。バプティスタとヴィンチェンシオは驚くが、二人の結婚に同意する。
ホルテンシオと上述の未亡人が結婚する。宴会で、ペトルーチオは気性の荒い女性のキャサリンとよく結婚したものだとからかわれる。これにたいし、ペトルーチオらは賭けをすることになる。
ビアンカとキャサリン、未亡人を呼び出し、誰が最初にやってくるか。誰がもっとも従順かを試すのだ。ビアンカが最初だ、と多くは賭けた。
だが、最初に来たのはキャサリンだった。ビアンカは来なかった。ペトルーチオは勝利し、キャサリンとともに宴会を去ってベッドに行く。
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山田昭廣『シェイクスピアはどのようにしてシェイクスピアとなったか : 版本の扉が語る1700年までのイギリス演劇』名古屋大学出版会, 2023
Jill Kraye(ed.), The Cambridge companion to Renaissance humanism, Cambridge University Press, 1996